グローバル・ビジネス・レポート【134】オープンハウス(下)|MK新聞連載記事

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グローバル・ビジネス・レポート【134】オープンハウス(下)|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、「グローバル・ビジネス・レポート」を2012年2月1日から連載しています。
MK新聞2025年1月1日号の掲載記事です。筆者プロフィールは新聞掲載時点のものです。

長岡技術科学大学経営戦略・技術経営・ものづくり経営研究室 五十嵐 和亜さんの執筆です。

オープンハウス(下)

 

ローリーの食品工場にて

長岡技大では毎年、全国の高専生を対象としたオープンハウス事業を行っている。この事業は、夏休みに本学の希望する研究室にて5日間の体験学習(インターンシップ)を行うというものである。前号では、オープンハウスの概要、私が所属する研究室のテーマ「経営学の理論・現場・実践」とその5日間の概要について書いた。今号では、2日目と3日目について行ったアクシアル リテイリング株式会社(以下、アクシアルと略す)での体験学習について書く。改めてであるが、アクシアルは、原信、ナルス、フレッセイといったスーパーマーケットを展開し、QCサークル活動を熱心に取り組んでいる企業である。

2日目は朝からアクシアルの本部に行き、午前中はアクシアルのQCサークル基礎研修に参加した。この研修では、2グループに分かれ、課題として、魚の切り身に見立てた紙粘土をナイフで切り規定の重さと見た目にするにはどうすれば良いか、といった課題を与えられた。QC手法に沿って数値化を行い、重要要因を決定し、対策立案を行うことで、具体的で実現性も考慮した対策を立案することができた。2グループに分かれたことで、異なる案が上げられ、別グループの案を聞くことにより、さらに勉強になった。

午後は、アクシアルのSUM(Service UpのためのManagement活動)報告会に参加した。報告会には、各店舗の店長や幹部が参加し、新商品開発やサービス向上に向けた活動が発表された。報告会では、例えば、ピザの新商品開発が発表され、生地と具材であるチーズの種類やその特徴を考えた上での組み合わせの選定から包装材のコストまで報告があった。発表毎にアドバイスや指摘が行われ、次回に向けた改善策が提示される様子は、まさに経営学で学んだPDCAサイクルの実践例であった。最後には代表取締役である原和彦社長から総括があり、会社全体での目標達成への意欲が共有されていた。

2日目の最後に、同社の長岡技大OBとの座談会があった。2名のOBから、大学での経験をどのように仕事に活かしているのかなどの質問に答えていただき、大学での学びと企業で働くこととの関係を理解する貴重な機会となった。

3日目は、アクシアルの関連施設を見学した。まず、アクシアルの関連会社であるローリーの食品工場を訪問した。最近の改善事例として、お寿司の細巻に関して、新しい機械の導入が図られ、加工のスピードが向上しただけでなく、従業員の負担もより軽減することができたとの説明があり、実際の現場も見学することができた。次に訪れた物流センターでは、商品が効率良く管理され、スムーズに配送される仕組みが構築されていた。商品の誤発注や入れ違いなどのミスが起きないように、可能な限り人の手の介入が少なくなるシステムが構築されていた。最後にスーパーマーケット原信の川崎店を訪問した。店のバックヤードを見学でき、総菜を作る作業をできるだけ効率化するために、作業する人がほぼ移動せず作業できるように、道具の配置や作業場の設計が工夫されていた。顧客が買い物を行う表側では、商品の見せ方に工夫が施されており、客動線や商品棚の高さを調整して、顧客が自然と商品に目が向くような配置が行われていた。川崎店の方から、このような工夫は、ISM(インストア・マーチャンダイジング)という店舗内での販売促進の手法に基づくとの説明があった。

2日間の企業訪問、研修を通じて、アクシアルのスーパーマーケット事業では、顧客が店舗で商品を手に取るまでに多くの人々が関わっていること、そして、各部署でQCサークル活動が積み重ねられており、私たちが見るアクシアルの店舗、商品には日々の改善活動の成果が詰まっていることを実感した。このように実際に経営の現場に行くことで、前号で鈴木信貴准教授が話されていた「経営学は理論だけ学ぶのではなく、現場、実践が重要であること」を改めて理解した。

最後に本当に貴重な機会を作っていただいたアクシアルの皆様、本学関係者の皆様に心から感謝を申し上げる。

■筆者プロフィール
新潟県出身。北越高校卒。現在、長岡技術科学大学情報・経営システム工学分野の4学年に在籍。

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