グローバル・ビジネス・レポート【135】実務訓練報告:アクシアル リテイリング株式会社(2024年度)(上)|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、「グローバル・ビジネス・レポート」を2012年2月1日から連載しています。
MK新聞2025年3月1日号の掲載記事です。筆者プロフィールは新聞掲載時点のものです。
長岡技術科学大学経営戦略・技術経営・ものづくり経営研究室 坂上 拓嶺さんの執筆です。
実務訓練報告:アクシアル リテイリング株式会社(2024年度)(上)

惣菜部門にて海鮮太巻きを作る筆者
長岡技術科学大学では、4年次の2学期に大学院修士課程に進学する学生に対し、実務訓練(長期インターンシップ)という科目があり、この科目は、約5ヵ月にわたり、企業などの現場で実務を経験する。実務訓練は、企業、公団、官庁の現場で活動する人々と交わり、現場指導者の監督のもとに自らもその活動に参加することによって、「技術に対する社会の要請を知り、学問の意義を認識するとともに、自己の創造性発揮の場を模索すること」と「実践的・技術感覚を養うこと」を目的としている。
私は、2024年10月8日~2025年2月14日にかけて、アクシアル リテイリング株式会社(以下、アクシアルと略す)にて実務訓練を行った。私の研究室では、2022年度に助川将啓さんがTQM(Total Quality Management)をテーマに、2023年度に千代季さんが店舗運営、店舗の売り場作りをテーマにして、それぞれ同社で実務訓練を行っており、MK新聞にも記事を執筆した(グローバル・ビジネス・レポート【119】~【121】【130】)。
アクシアルは、新潟県長岡市に本社があり、原信、ナルス、フレッセイという店舗名でスーパーマーケット事業を行っている企業である。実店舗だけでなく、ネットスーパー事業も行っており、新潟県では、3店の原信が新潟県のほぼ全域を対象にネットスーパー事業を行っている。今回、私が同社を実務訓練先として志望した主な理由は、このネットスーパー事業が大学での自分の研究と関連するためである。私は、これまで若年層(大学生)の消費者行動について研究を行い、ネットスーパーなどインターネットでの購買活動についても調査を行ってきた。
私の実務訓練は、最初の1ヵ月間は、原信の店舗で基礎研修を行い、その後はアクシアル本部の営業企画部にてネットスーパー事業に関連する業務を行った。今回の記事では、(上)として店舗での基礎研修について書き、次回の(下)では本部営業企画部での実務訓練について書く予定である。
実務訓練初日の10月8日はアクシアルの本部でのガイダンスと同社の物流センターの見学を行い、次の日から、長岡市の原信寺島店での基礎研修を開始した。寺島店は、新潟県でネットスーパー事業を行っている3店舗の1つである。私の研修は、デイリー部門、加工食品部門、惣菜部門の3部門で研修を行った。
初めて業務を体験し、1ヵ月を通して最も長い時間、業務を行った部門がデイリー部門だった。私は、毎日の基本的な業務である品出しや商品整理から仕事を始めた。利用客の視点から見ると商品を出しているだけのように思っていたが、商品ロスや機会ロスを防ぐために、様々な工夫をしながら品出しが行われていた。品出しの仕事に慣れてくると発注の仕方やチーフが行っている事務作業を学んだ。寺島店はネットスーパー事業も行っているため、発注は店舗での売上に加えてネットスーパーでどの程度、注文が入るかを考慮して行う必要がある。また、従業員の方がこの店舗では他店舗に比べてパンのロスが多いことに目を付けて、発注のやり方を見直し、翌週にロスが減ったという事例なども実際に見ることができた。
デイリー部門の次に長い時間、働いたのが加工食品部門である。この部門は取り扱っている商品が3部門の中で最も多い。私は毎日の業務として飲料の品出しを行い、余った時間でエンドと呼ばれる売場の作成や商品発注などの仕事に関わった。加工食品部門の商品発注は、デイリー部門と異なる方法で行われるなど実務訓練として他部門での仕事を経験しなければ分からなかったことが複数あった。
最後の惣菜部門は主に商品の仕上げとパッキングの仕事に従事した。惣菜部門は、3部門の中で最も大変な仕事だと思った部門である。理由は2つあり、1つは覚えることが多いことであった。例えば、業務の一環で海鮮太巻きを作っていたが、その作り方は思っていたものとは異なり、極めて複雑だった。普段は何気なく購入していたものが予想以上に複雑な手順で作られていることを知り、私の惣菜の商品に対する意識は変化した。もう1つの理由は、売場の様子を常に意識しなければならないことである。広告の品や人気商品は作ってもすぐに売れてしまうため、常に売場に気を配る必要がある。また、惣菜は色が偏りやすいため、見た目を意識したレイアウトにも気を配る必要があった。
デイリー部門、加工食品部門、惣菜部門の3部門では、数日の短期のインターンシップでは経験できない仕事をしっかりと経験、学習することができた。また、私がネットスーパーに興味があるということが従業員の方々に伝わっており、あらゆる場面でネットスーパーに関連した話を聞くこともできた。店舗での基礎研修の後は、本格的に本部営業企画部でネットスーパー事業に取り組むのだが、最初の基礎研修がなければ、本部での仕事は全く理解の欠けたものになってしまっていただろう。基礎研修でお世話になった方々に心から感謝している。
■筆者プロフィール
新潟県出身。長岡高専卒。現在、長岡技術科学大学情報・経営システム工学分野の第4学年に在籍。
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