フットハットがゆく!【371】「糞(ふん)の話」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2025年9月1日号の掲載記事です。
糞(ふん)の話
猟師をやっていると、見かける糞が気になります。何の獣の糞なのか? 個体の大きさは? 新しいのか古いのか? など判別して、自分の周りの動物の動向を探ります。
同じ村の住人から、「近所の畑で大きな糞を見つけた。クマかもと思うと非常に不安なので見てほしい」と連絡が来ました。僕は行って、その糞を確認しました。写真を撮って先輩猟師にも送り、意見を聞きました。「クマではなく、大型のイノシシではないか?」という意見が多かったです。僕自身、その糞を手で割って、匂いを嗅いでみました。イノシシを解体した時に臭う、独特の匂いでした。「これはクマの糞ではなくイノシシの糞です」と言うと、村の人もホッとしていました。
シカの糞は見分けやすいです。黒くて小さくて丸くてコロコロとしています。田舎に移住しようとしていた頃、空き家の担当者と古民家を見て回っていた時の話…。庭の小さな木の下に、丸くてコロコロしたものがたくさん落ちていて干しブドウのように見えたので、指で拾い上げて匂いを嗅ぎながら、「これは何の実(み)ですか?」と担当者に聞いたら、「それはシカの糞です」と言われました。僕は「あぁバッチぃぃぃ!」と糞を投げ捨て慌てふためいたらカッコ悪いので、糞をつまんだまま冷静に、「ふ~ん」と答えました。
飼い犬の糞も見分けやすいです。ドッグフードを食べた時の糞は、キレイで整った色と形をしています。うちの犬は猟犬なので、僕が獲ったシカの肉をあげることもよくあります。脚を毛皮ごとあげた時は、翌日、毛の混じった糞をします。毛というのは肉食動物の体内でも消化されないのです。シカの肝臓をあげた次の日は、真っ黒な糞をします。肝臓は血がたっぷり、血液の鉄分が酸化して、黒い糞として排出されます。シカの肋骨(あばらぼね)を上げた次の日は、白い糞をします。猟犬は肋骨をアラレのようにバリバリと噛み砕いて食べてしまいます。骨を消化できる生き物です。そのカルシウムが翌日の糞に反映されます。愛犬の糞が、どんな様子で出てくるのかを見るのは楽しいです。
ちなみに僕は猫も飼っていますが、フルーツか? と思うようないい匂いの糞をすることがあります。これには理由がありまして、うちの猫は僕の獲るジビエ肉を食べてくれませんので、ほぼキャットフードをあげています。最近のキャットフードは進化して、消臭効果のある緑茶成分が含まれていたりします。だから家の猫トイレで糞をしても、あまり嫌な匂いがしないのです。
ムジナ系動物の糞を見分けるのにもコツがあります。果物の種が入っていれば、雑食系のハクビシンやタヌキ、アライグマなど。ネズミなどの小動物の毛が混じっていれば、キツネやイタチの肉食系動物。また、いつも同じ場所に糞をする「溜め糞」性の動物と、縄張りを主張するための「マーキング糞」性の動物がいます。キツネのマーキング糞が、うちの鶏小屋の近くに発見された時は、最大の警戒と迎撃体制をとって迎えます。
糞の話、続く…。
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MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。