フットハットがゆく【344】「循環」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【344】「循環」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2022年8月1日号の掲載記事です。

循環

昔見たツイッターか何かで好きな話がありまして…。
飼っていたハムスターが死んでしまい、庭に埋めたらそこからヒマワリが生えてきて花を咲かせた。という短い話です。
可愛がっていたペットのお墓に自然と花が咲いた、というメルヘンな感じもしますが、もっと奥の深い話にも思えます。
おそらく、エサとして与えられていたヒマワリのタネが、死んだハムスターの口の中(ほほ袋)に残っており、それが土の中で芽を出して育ったものだと思います。
ハムスターの栄養になるはずだったヒマワリのタネが、逆にハムスターを養分としてキレイな花を咲かせる…。
小さな命のやり取りの中にも、ロマンを感じます。

前回のエッセイでも書いたのですが、僕はニワトリを飼って繁殖させています。
有精卵を孵卵器に入れて育てますが、孵化せずに、ヒヨコとして生まれず、卵のまま死んでしまう場合もあります。
今後のために、死んだ卵も一応割って中を調べます。
そもそも細胞分裂が始まらずに黄身のまま死んだ卵から、細胞分裂は始まったけど途中で死んだ卵、ヒヨコの形までたどり着いて最後に殻を割れずに死んだものまで、様々です。
最初のうちはそれらをお墓に埋めたりしていましたが、最近ハムスターの話を思い出して、畑の一角に埋めました。
その上に、ローズマリーの苗を買ってきて植えました。生まれずに死んだヒヨコたちが、良い養分になってくれればいいですが。
ただ園芸店で肥料を買ってきて育てるより、ローズマリーが成長して花が咲いた時の色が、違って見える気がします。

ローズマリーを植えたのには理由があります。
僕はミツバチを飼っています。巣箱には女王バチを中心に、2万匹ほどの働きバチが住んでいて、せっせとハチミツを貯めています。
その一部を頂戴して食するのが僕たちです。ローズマリーの花は、ミツバチが好む蜜源です。
今後この巣箱のハチミツを口にした時に、またヒヨコたちを思い出すかもしれません。
僕はハンターなので、冬の猟期に獲ったシカやイノシシを冷凍して、年を通して食しています。
そういったジビエ料理によく使うのがローズマリーで、肉の香り付や匂い消しに役立ちます。
今まではスーパーのスパイスコーナーで、ローズマリーを買っていました。畑のローズマリーが育てば、それを使えます。
自分が獲った野生動物のジビエ肉料理を食べる時、ローズマリーの香りとともに、またヒヨコのことを思い出すかもしれません。

繁殖や孵卵に失敗して死なせてしまった卵やひな鳥には、非常に罪悪感を感じます。
僕が関わらなければ、生まれ損なって死ぬこともなかっただろうに。
お墓に埋めて、定期的に線香をあげて思い出す、というのも供養かもしれませんが、僕的には、命を循環させる、ということが供養だと思っています。
ちなみに、ニワトリたちの糞は畑の肥やしとして利用し、そこでできた野菜のクズはニワトリたちに食べてもらっています。

 

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