フットハットがゆく【345】「妄想旅行」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【345】「妄想旅行」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2022年9月1日号の掲載記事です。

妄想旅行

宇宙には大宇宙と小宇宙があって、大きい方も小さい方もその世界は無限です。
マクロの世界を探求するのも、ミクロの世界を追求するのも、ともにロマンなわけです。
昔、何かで読んだのですが、とあるインドの哲学者が世の真理を求めて世界中を旅しましたが見つからず、最後は自分の家の庭先に咲いた、花に垂れた水滴の中から真実を見つけた、という話がありました。
探し物は、大世界にあるのか小世界にあるのか、それは誰にも分からない、ということです。
さて、何が言いたいかといいますと、現在の僕の境遇を語っています。

僕は田舎の古民家に独り暮らしで、現在、猫2匹、ヤギ3匹、ニワトリ12羽、ウコッケイ7羽、メダカ数匹、ミツバチ数万匹を飼育しています。
これはどういうことかといいますと、独り身で家を空けられるのはせいぜい1日、ということです。
つまり、連泊の旅行とか、海外旅行とかは無理ということです。
若い頃は、ヒューマニズムを追求したい!…と、バックパッカーでネパールに1ヵ月滞在したり、スポーツ観賞を通して見聞を広げたい!…とヨーロッパにサッカーを見に行ったり、アメリカにメジャーリーグやボクシングを見に行ったり、仕事での海外遠征も多く、文化都市からレジャー地域まで、先進諸国から開発途上国まで様々な世界を見ました。
が、今は京都の田舎に引きこもって小宇宙の観察に熱中しております。

例えば、僕が飼っているミツバチは、50センチ四方ほどの小さな木箱に約3万匹が暮らしています。
僕は実際に数えました。巣面を一枚一枚高画質写真で撮って、ハチ一匹ずつに点を打って、丸3日ほどかけて数えました。
暇人だなと思われるかもですが、これが小世界への冒険です。
この3万という数は僕が住んでいる京都府南丹市の人口とほとんど同じです。
広域に3万人住んでいるからいいようなものの、このハチたちは狭い空間に密集して大変だな?…いや待てよ、人間だって3万人くらい密集することがあるよな? で、収容人数3万人で検索したら、横浜スタジアムや万博記念公園がヒットしました。
あのように3万人の人が密集した感じが、このミツバチの巣箱の中なのだな?…などと想像すると楽しいです。
これは妄想の旅行、英語にすると『ファンタジートリップ』といって、とても素敵な響きになります。
実際の旅行を妄想するのも楽しいですが、ありえない項目をつなげて想像を膨らます方の『トリップ』に、よりハマっています。

小宇宙でトリップできる感覚が身につくと、もうそれが楽しくて仕方がなくなります。
字数も足りないので最近ハマった項目を書いておきます。
『ミツバチにつくダニの一種が、ダニには珍しく子育てを行う。』『シカやヤギを解体した際に出る胃の内容物のバクテリアが自然界に好影響をもたらす。』『ニワトリが産んだ卵は、有精卵より無精卵の方が長持ちする。』などなど。全て自分の実体験とともにあることなので、妄想旅行も具体的でより楽しいのです。

 

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