フットハットがゆく!【360】「置き土産」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【360】「置き土産」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2023年12月1日号の掲載記事です。

その後の出来事

今後の人生、養蜂家と猟師で生きていこう!と思って意気揚々とやり始めたところで、いきなり壁にぶち当たっています。ものごとうまくいかないものです。しかし着実に進歩している部分もあるので、前向きな部分を書きます。

ミツバチは夏前に最大の数になり、それから冬ごもりに向けて数がしだいに減ります。ハチミツを採取した後の巣が不要となってきて、取り除いた巣は捨てます。巣はミツバチの蜜蝋でできているので、加工すればロウソクやワックスに作り変えられますが、手間がかかる上に、たいして高く売れないので、捨てた方が効率が良い、という現代社会の悪い考え方です。

しかし今年は、異常気象もあり夏場に多くの蜂が死んでしまい、全滅した巣も多数。置き土産となってしまった空の巣を、いつものように捨てるのもはばかられました。僕は、何とか蜜蝋を加工してワックスやロウソクにしようと研究しました。ネットや本で調べて、レシピ通りにしてうまくいく部分と、そうではない部分と、試行錯誤を繰り返し中です。そんな中で、蜜蝋ワックスは無事にうまく作ることができました。さっそく、自宅の木製品や革製品に塗り込み効果を確認。天然素材で作ったワックスなので、体に悪い成分もなく、水をよくはじき、光沢にも独特の雰囲気がありとても良い感じです。猟師として獲ったイノシシやシカの革製品を自分で作り、自分が育てたミツバチの蜜蝋ワックスで磨きをかけ、革自体を育てていく。それが今の僕のささやかな夢です。

さて、まだ成功していないのは、蜜蝋ロウソクです。蜜蝋はとてもよく燃えますが、融点が高いため、芯の炎のまわりばかり溶けて、ロウソクの中に穴を掘っていってしまい、全体のロウを溶かし切る前に芯が燃え尽きてしまう。という、商品にならない状態。石油から作られたパラフィンロウソクなら融点も低いので、ロウが溶け切るのですが…。ロウソクの芯の種類や太さを変えてみたり、蜜蝋に植物油を混ぜて融点を下げてみたり。早くちゃんとしたロウソクが作れるようになりたいですね。

個人的な消費の話になりますが、ミツバチの巣を湯に溶かして蜜蝋と水に分離させる際、水の中には巣に残っていたハチミツや花粉などが溶け込んでいますので、捨てるのももったいないと思い、ゴミを濾して飲んでみましたところ、とても芳醇で深みのある味で美味しい!と、いうことが分かりました。普通、ハチミツジュースというと、ハチミツを湯に溶かして、レモンを絞ったりして作ります。これはこれで非常に美味しいです。しかし蜜蝋を湯に溶かして蝋が分離した後の水は、巣の中のいろいろな成分が溶け込んでいて、より深く複雑な味になる、ということがわかりました。衛生面を考えると売り物にはしにくいですが、自家消費には問題なく、美味しくいただいております。ありがとう、恵みの天然素材様。

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