フットハットがゆく【339】「選挙」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【339】「選挙」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2022年3月1日号の掲載記事です。

 

選挙

先日、僕の住む京都府南丹市の市議会議員選挙がありました。20の議席を23人の候補者で争う、という感じです。
僕は、ある現職議員の選挙活動をフルに手伝うことになりました。
地元猟友会の顧問で、毎週のように同じ猟に参加しているメンバーです。
学年は2つ年下の50歳ですが、猟のことなどいろいろ教えてもらいお世話になっています。

僕の役割は、選挙カーのドライバーです。
朝の8時から、夜の8時まで、選挙カーを運転して南丹市の北から南まで、すみずみまで回りました。
普通の選挙では、選挙期間中に候補者の講演会や企業訪問などがあり、選挙カーにはウグイス嬢のみが乗り候補者が乗っているのは稀だったりするのですが、今回はコロナということで人の集まる企画はご法度…。
ということで、候補者もほとんどの時間を選挙カーで過ごす、ということになりました。

南丹市は田舎です。その分、風光明媚な景色が多く、美山のかやぶき屋根、日吉ダム、るり渓温泉、など、空気の澄み切った田舎道を走っていると、本当に心が洗われる気分でした。
必死に村人に応援を呼びかける候補者やウグイス嬢に対し、私、ドライバーは景色を見ながら、「キレイやな~。」と観光気分でした。
まだ南丹市に移住して2年少々ですから、初めて見る村々の美しさにいちいち感動しました。
もちろん、観光気分というのは冗談で、どんな雪道でも、どんな狭い道でも、絶対に事故を起こさないように、細心の注意を払って運転しました。

それにしても田舎というのは人が少なく、選挙カーで回ってもなかなか人に出会いません。
寒い冬場の選挙ですから、畑や田んぼにいる人もほとんどおらず…。
例えば、うちの集落は30軒ほどの小さな村ですが、そこを回った時に出会った動くものといったら、うちのヤギとうちの母親くらいでした。
僕が一週間選挙に取られて、ファミリー(ヤギ・ネコ・ニワトリ)が小屋に閉じ込めっぱなしになるので、実家から母親に来てもらい一週間散歩などの面倒を見てもらっていたのでした。
そう思うと、選挙で誰かを支えようとすると、その支えようとする人も誰かに支えてもらわねばならず、そういうことの繰り返しで人間社会はできているのだと感じました。
候補者はうちの母親にも元気よく手を振ってくれましたが、母親は大阪高槻市民なので、南丹市では票を持たず…。

全てはコロナのせいですが、『桃太郎』という候補者を先頭にノボリを持って応援者が行列を作って町中を更新するアピール方式も自主規制。
候補者一人で歩く、犬・猿・キジなしの一人桃太郎。有権者と出会っても握手は禁止。
数少ない街頭演説の場も、外出を控える傾向のため傍聴者はまばら。
モチベーションを維持するのに苦労した選挙でしたでしょうが、なんとか無事、応援していた候補者は上位で当選しました。
当落線上の20位と21位の得票差はわずか1票、という田舎らしい厳しい選挙でした。僕自身は、我が町をより細かく知ることができ、選挙事務所の内外を問わず新しい出会いもあり、大変有意義でありました。

 

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