フットハットがゆく!【354】「野生の教え」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【354】「野生の教え」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2023年6月1日号の掲載記事です。

山のお命 2

田舎暮らしを普通にしていると、いろいろと考えさせられることに出合います。
春はタケノコシーズン。
うちの裏山の竹林にも、ニョキニョキとタケノコが生えてきます。
さぁそろそろ食べごろかな?とクワを担いで竹林に行くと、あちこちの土がすでに掘り返され、タケノコが食い荒らされています。
犯人は野生のイノシシです。
また、土は掘られていませんが、先っぽだけをキレイにかじられているタケノコもあります。これの犯人は野生のシカです。
イノシシとシカが食べ残した細く痩せたタケノコを僕たち人間がいただきます。
ちゃんと管理されていない田舎の竹林では、日常茶飯事のこの出来事。
いまいましいとは思いますが、仮にこのイノシシやシカがいなかったらどうなるのでしょうか?

竹は日本人に馴染みがありますが、実は古い時代に中国から移入された外来種です。
その繁殖力は植物界随一です。
人間が管理できている竹林なら良いのですが、放置すれば日本の山が全て竹で覆い尽くされる可能性もあるほどの繁殖力といわれます。
それを食い止めているのがイノシシとシカであるとなると、逆に放置竹林に関してはありがたい管理人!…ということになります。

そして、タケノコが食い切られた痕から竹が再生することはありません。
なぜなら、その切り口に大量のハエが集り、卵を産み、その幼虫がタケノコの残りの部分を食べてしまうからです。
初めて見る人はびっくりしますが、驚くほど早く、驚くほど大量に、タケノコの切り口にハエが集まります。
普通に成長するタケノコは硬い皮に覆われていて、ハエも手が出せませんが、野生動物に食いちぎられた部分には一斉に集まり、竹の再生を防ぎます。

イノシシとシカは田畑を荒らす害獣といわれ、ハエはバイ菌を媒介する害虫といわれます。
しかし見方を変えると、外来種の竹の侵略を共同で食い止めている山の守り神、ともいえるのです。

話が脱線します。
最近聞いた話で、となり村の移住者が自家菜園にトウモロコシを植えたそうです。トウモロコシといえばニホンザルの大好物です。
畑に植えると野生のサルを引き寄せるという事で、田舎の人は植えるのを敬遠します。
でも移住した新米さんはそんなことを知らないので、畑に植えたところ、奇跡的にサルに食われることはありませんでした。
周りの人はなぜ移住者のトウモロコシが無事だったのか不思議がりました。
やがてその答えが出ました。
移住者がそのトウモロコシを食べたところ、まずくて食べられなかったのです。
人間用ではなく、牛の飼料用のトウモロコシの苗を間違って買ってしまい、それを育てていたのです。
初めて田舎暮らしをする移住者なので、そういう間違いも仕方がありません。
しかし、野生のサルは、そのトウモロコシをちゃんと見分けて食べなかったのです。
サルが食わんものは人間も食えん!?サルも贅沢というか、舌が肥えているというか、感心するというか、呆れるというか、本当に野生の生き物はいろいろなことを教えてくれます。

 

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