フットハットがゆく!【363】「55歳」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【363】「55歳」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2024年5月1日号の掲載記事です。

55歳

この4月で55歳になりました。1969年、昭和44年生まれです。同世代としては、俳優の福山雅治さん、競馬の武豊さん、歌手の森高千里さん、プロ野球の立浪和義さん、などがいます。先日亡くなられた元横綱の曙太郎さんも同じ学年です。歳の近い人が亡くなると、非常にショックです。自分に残された時間があとどれくらいなのか、考え始めると夜も眠れません。とにかく日々感謝し精一杯生きるしか方法はないと思います。

幸い、田舎暮らしを始めたおかげで、55歳にして新しいことへの出会いが多く、刺激的な日々を送ることができております。例えばこの4月、ついに京都府南丹市の鳥獣被害対策実施隊に任命される辞令が下りました。実施隊員になるには、3年間、猟師としての実績を積まなければなりません。その3年間が、やっと終わりました。これまではいわばアマチュアだったわけですが、これからはプロです。

都市部に住む人は、「鳥獣被害」といってもピンとこないかもしれませんが、田舎ではかなり深刻です。例えばシカです。奈良公園なんかでは非常に可愛らしい動物として、また神社の神の使いとして親しまれ愛されていますが、田舎に行くと、農作物を食い荒らす悪魔のような存在です。昔よりもかなり頭数が増えてしまい、駆除しなければ被害は増すばかりです。ここまではよく聞く話ですが、最近、さまざまな立場の人から聞いた情報も足しておきます。

・ハイカーさんから聞いた話。半日かけて山をハイキングするのが趣味の女性。自然に触れるのが楽しみで、その山固有の花を見たりするのが大好きだが、鹿が増えて花も食べられ、山の生態系が変わろうとしている。

・漁連の関係者から聞いた話。川魚であるアユは、近年爆発的に増えた野鳥カワウによる被害が有名だが、実際にはシカの被害も大きい。シカが山裾の植物を食べ尽くして地肌が剥き出しになり、雨によって泥水が川に流れ込み、アユの餌である川ゴケが育たず、アユが減る。

・ベテラン猟師から聞いた話。シカの体はダニだらけで、シカのいるところにダニがいて、ダニのいるところにシカがいる。シカが人里に侵入すればするほど、その草むらに媒介されたダニが潜む形になり、いわゆるマダニ被害が生じる。(マダニ自体に毒性はありませんが、特殊なウイルスを媒介する場合があり、人間に感染すると死に至る場合もあります。)

シカなど大きな生き物を殺すと、動物愛護の観点から辛辣な批判を浴びることもあります。ましてや、害獣対策実施隊から報奨金を得たりすると、動物を殺して金を得るなど、お前はきっといい死に方をしないぞ!と言われることもあります。一方で身近に獣害を受けている人々からは、非常に感謝されます。僕自身はミートハンターとして、いただいたお命をしっかり再生する真の猟師を目指しつつ、駆除による報奨金を生活費の足しにするマネーハンターの一面もあります。いかにバランス良く、自然と付き合って生きていけるのか、55歳の僕が抱える課題です。

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