自給自足の山里から【148】「フクシマから幸福島へ」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【148】「フクシマから幸福島へ」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2011年6月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

フクシマから幸福島へ

フクシマから2ヵ月が過ぎた。次から次ぎにメルトダウンという最悪の事態が起きている。
何十年も天に地に海に、放射能がふりまかれて、原発から20~30km圏内は廃墟となり、生きとし生きるものをむしばんでいき、数年から数十年でガンが発生する。
将来を思うと暗い気持ちになる。できることなら身を投げ出して、原発におおいかぶさり放出を止めたいものである。

なんだかさみしげなフジの花

我が山村は、いま、新緑の盛りである。一面黄緑のなか、フジの紫が今年は多い。しかし、いつもの鮮やかさが見られず、さみしげ。たれ下がった花の姿は、流れる涙のようであり、畦の紫の野花は落ちた涙の粒に思えて仕方ない。
機械(石油)で耕さないで、年中水を貯えている田んぼでは、カエルのゲロゲロの声とともに無数のオタマジャクシが黒いかたまりになって動く。ヘビ、アオサギ、カラスらに、幼いつくし(7歳)、すぎな・みのり(4歳)、なお(2歳)らにぎやか。なんとかこの風景が続くことを願いたい。
げん(30歳)は、昨年の大雪でミツバチを失い、今年新たに入れたハチも元気なく、「女王蜂が死んだ」と心配げである。チエルノブイリの時、事故の日から4日間、巣箱からハチは出てこなかったという。自ら防御している。

“福島は日本人考える以上に危険”とリトアニアの青年

5月17・18日、チエルノブイリの時、最も被害を受けたベラルーシの隣の国・リトアニア(バルト三国)から2人の青年が、チャリ(自転車)で世界を巡るエコロジストの松本英揮さんとやってきた。今時、外国からの来訪はめずらしい。
50年間ソ連に支配されての原発事故。葉っぱが黄色になったとか。発生時、全て知らされなかった。親は7年後にガンを発生する。隣の全国民にヨード剤を配り、ガン発生を防いだポーランドからの情報で知る。
ロシア、ドイツなどの大国にはさまれての人口370万人の小国だが、サンスクリット語にみられるように、独自の文化を守ってきている。ちなみに、おみやげは海辺で採った4、5000年前の松ヤニの塊と、25種類の野草でつくった60度のお酒と、麻の手作りカバンである。
原発一基あり、80%依存していたが、今は廃炉になっているという。

松本さんは「福祉大国スウェーデンから入ると、その貧しさが際だったが、人々の心は豊かである」という。
大国アメリカの意のままの日本にとって、考えさせられる大切な国である。
かの青年たちは「リトアニア人は、放射能に対して危機感を持っております。福島は日本人が考える以上に危険です。可能であれば遠くに逃げてほしい。マスクなどの対応をきちんと急いでほしい」(リーナス・イングリダ)とメッセージを残す。

同情などいらない。光射す日は来るのか

友人の佐々木さんから便りが届く。「私は、3月27~30日にかけて、福島の実家・親類を回りました。同情などいらない、むしろ言ってはならないのだということを肌で感じ入りました。相馬・南相馬では『どこがどん底で、いつどん底がやってきて、明日の光が射す日が来るのか』、こうした絶望に近い思いが私には一層深まりました。また、政府の人間以下の扱いに怒りを隠せないです。
私は実家のコメを販売しておりました。さっそく「今年はいらない」という奴までいるのです。「福島の野菜食べるんだったら中国産の方がまだ安心よね」と、今まで中国産を毛嫌いしていた主婦がこういう。この人らが子供育てているのかと思うと希望を失う。
いつ終わるかも分からない、抜け出せそうにない生き地獄に突入したかのようです。
私は、韓国の人たちに原発の恐ろしさ、放射能の恐怖を訴え、外国の立場から日本政府を動かしてもらうために頑張る所存です」。

世界中の原発止まって、福島は幸福島に

福島の川俣町の佐藤幸子さんから「今回の原発事故は、やまなみ農場にも大きなダメージを与えてしまいました。田畑のセシウムは基準値5,000ベクレルを超え、今年は作付けを見合わせることになりました。子どもは山形にヒナンさせています。川俣の隣町で働き、週末山形へ行く生活です。
子どもたちのいのちを守りたい!
これから何年続くか分からない放射能とのたたかいは、まるで「風の谷のナウシカ」です。
福島は「福の島」で、福がたくさんある島だと思っていました。しかし、この「福」は、福島以外の人々に「福」を与えるものだった。

今、原発を止めるという「福」を、福島から発信し、山口の祝い島の原発建設を中止させ、「祝福」を受ける島へ。そして、世界中の原発が止まった時、「幸福」の島となることのできるような島、それが「福島」なのだと思うようになりました。これからもお互い頑張りましょう」の便り届く。

リアルに感じて、えい知が働くを願う

南相馬の高橋美加子さんは「私の住む南相馬市原町区は、原発事故で30km圏内。今まで精魂込めて培ってきた全てが根底から崩壊してしまった。
当たり前に思っていた日常生活が、本当に数時間で、国歌によって崩壊されてしまったのです。
遺体を探しに行くこともできない悲しみとともに、ささやかれています。「この頃、カラスの姿が少ないね。みんな浜に行ってるみたいだよ。今時鳥葬なんて」。
今できること、それは、外側にいる皆さんに、この出来事を自分の身におきかえて、私たちの声にならない不安、いらだち、怒り、悲しみをリアルに想像してほしいのです。人間としてそうリアルに思えたとき、初めて、人間のえい知が働き始める。そうであってほしいと願っています」と言う。

私はこの福島の人たちの叫び、声を、己れのものにしたい。こんな人類への犯罪を行った者たちへの怒りとともに。
ただちに全ての原発を止めて、子どもたちに明るい明日を! 縄文百姓の手で! 切に切に願って、2ヵ月経った5月11日から1週間だんじき行う。(5月20日)

あ~す農場

〒669-5238

兵庫県朝来市和田山町朝日767

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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