フットハットがゆく【334】「田舎ウォーズ3」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【334】「田舎ウォーズ3」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2021年10月1日号の掲載記事です。

 

 

田舎ウォーズ3

 

季節はそろそろ秋ですが、少しさかのぼって夏真っ盛りの時の話。
田舎の夏はあちこち雑草だらけなので、飼っているヤギの繋牧に事欠きません。
小川沿いのよく草が茂った場所に杭を打ち付け、そこにヤギを紐で繋いで放置します。
ヤギは大好きな草を食べ放題! なんとも牧歌的な風景です…。と、ここまではいいのですが、数時間放置した後、連れ戻しに行きますと、ヤギが紐に絡まってほどくのに時間がかかってしまいました。
暑かったから半ズボンにサンダルだったのですが、フッと見ますと、両足のスネから何ヵ所も血が出ており、そこに小さなハエが無数にたかっておぞましい光景となっていました。
慌ててハエを振り払い、その場から逃げました。その時は痛くも痒くもなく、何に咬まれて出血したのかまるでわかりませんでした。
その後、蚊に刺された時よりもひどい痒みが一週間以上続き、パンパンに腫れて痛みも出ました。腫れと痒みが引いた後も、傷痕がたくさん残りました。
僕のきちゃない足だからいいようなものの、これがもし女性モデルの素足だったら、訴訟問題になるくらいです。

 

ネットで調べましたら、犯人はブヨ(ブト)でした。小型のハエの一種で、生き物の皮膚をかじって血をすするという恐ろしい吸血虫。
唾液に麻酔成分を含むため、皮膚をかじられて出血してもその時は痛みを感じません。しかしその後の痒みや腫れはひどく、蚊がかわいいな、と思えるほどです。
ブヨのおかげで、僕のキンカン消費量は一気に増えました。

50数年も生きてきて初めてブヨに血を吸われ、日本にこんなやっかいな虫がいたのかと驚きました。
そもそも、田舎では山や茂みに入る時は、真夏だろうがクソ暑かろうが長そで長ズボンが基本なのです。
ブヨ、蚊、ハチ、アブ、ムカデ、マダニ、ヒル、ヘビ、などなど生身で触れると危険な生きものがいっぱい! そんなところに半ズボンとサンダルで長々といた僕が悪いのです。

 

ところで、ブヨは都会にはいないそうです。ブヨの幼虫は水生で、意外にもキレイな川にしか住めないのです。ホタルと同じですね。
恐ろしくて憎らしいあの吸血バエが、実はキレイな川にしか住めない…豊かな自然を象徴する虫なのだと知ると、ちょっとは親しみもわくというものです。

 

話が逸れますが、僕はスポーツ観戦の時に、自分の状況を重ね合わせて見てしまう悪い癖があります。
前回のリオ五輪の時、僕はヒザをケガして松葉杖をついておりましたので、体操のドンッ! という着地や、柔道の激しい足技などを見たら、「あいたたたッ! やめてッ! ヒザに体重かけるのやめてッ!」と、勝手に痛がりながら見ていました。
今年の東京五輪は、ブヨにかじられた痕にキンカンを塗りたくりながらの観戦。
女子ゴルフで日本選手がメダルを取りましたが、林の中を半そで半ズボンでプレーしているのを見て、「ブヨおらんかな? 大丈夫かな? ブヨに咬まれたら痕が残るよ!」と、ヒヤヒヤしながら観戦しておりました…

 

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