フットハットがゆく!【369】「猟犬の話2」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【369】「猟犬の話2」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2025年5月1日号の掲載記事です。

猟犬の話2

前回は、我が愛犬にして猟犬のレッド(メス・2歳半)のイノシシ狩りにおける大活躍の話を書きました。あれ以来、猟の仲間から「あの犬を連れてきてくれ!」と頼まれる人気ぶり。飼い主として鼻高々です。

一方で、もう連れてくるな! と言われるのがレッドの双子の弟、我が愛犬ブルー(オス・2歳半)です。ブルーはめちゃめちゃ筋肉質で、健康的かつパワーの有り余った赤毛の洋犬です。

ブルーは山の中でシカを見つけるのがたいへん得意です。そこは猟犬としてレッドよりも優れています。しかし、一度見つけたシカをとことん追いかけてしまうという悪い癖があります。巻狩りの場合、勢子として山に入った猟師と猟犬は、遠巻きに待ち伏せしている猟師たちの方へ、獲物を追い立てなければなりません。しかし、猟師が撃ち損じたり、あるいは猟師のいない所を獲物が突破してしまうこともあります。待ち伏せのラインを獲物が越えてしまったら、そこで猟は終了です。猟犬を呼び戻して回収し、次の猟場へと向かいます。ところがブルーは呼んでも戻らず、夢中でどんどん獲物を追いかけて、はるか遠くまで行ってしまうのです。狩猟用GPSを首輪につけているので、犬がどういう行動を取ったか確認できます。ブルーは遠くに行った先でまた別の獲物を見つけ、一人で追い回します。猟師のいないところでそれをされても何の意味もありませんし、回収に何時間も費やす羽目になります。

ある時は、分水嶺を越えて、太平洋側に川が注ぐ山から、日本海側に川が注ぐ山にまで行ってしまいました。ゴルフで例えるなら、球を打ったら隣のホールに飛んで行ってしまい、それを打ったら今度はゴルフ場の外に飛んで行ってしまい、それを打ったら今度は他府県にまで飛んで行ってしまった! というような感覚でしょうか?
そういうことを何度も繰り返したため、ブルーはもう猟に呼んでもらえなくなりました。ということで、猟犬失格記念、ブルーのハプニング集を紹介します。

◯初めて車に乗せた時はオシッコをもらし、次に乗せた時はウンコをもらし、その次にはゲロを吐きました。ちなみにレッドは車が平気です。

◯ネズミを捕るために仕掛けた強力粘着シートに、子犬時代のブルーがかかりました。粘着物を取るのが大変でした。

◯山に仕掛けたシカ用のくくり罠に、ブルーがかかりました。怪我しなくてよかったです。

◯キツネ対策としてニワトリ小屋の番をさせたら、ブルー自身がニワトリを食べてしまいました。

◯猟の訓練で山に放したらそのまま帰ってこず、隣町で保護されて、警察、保健所、動物保護団体にお世話になった末、2週間後にやっと連れ戻しました。その後、個体認識チップを体に埋め込み、犬用GPSも購入しました。

◯急に元気がなくなったので病院に連れて行ったら、風邪だと言われました。犬も風邪を引く、ということを初めて知りました。

猟犬として一緒に猟に出ることが無くなったとしても、色々な経験をさせてくれるブルーは、やはり愛さずにはいられない犬なのです。

田舎暮らし公開中!YouTube『塩見多一郎』で検索!

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