自給自足の山里から【192】「(続)人権学習会での“お話”」|MK新聞連載記事

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自給自足の山里から【192】「(続)人権学習会での“お話”」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、縄文百姓の大森昌也さんらによる「自給自足の山里から」を、1998年12月16日~2016年6月1日まで連載しました。
MK新聞2015年2月1日号の掲載記事です。

大森昌也さんの執筆です。

(続)人権学習会での“お話”

つぶらなひとみのテン

山の北の方から、ビューとうなり、白い雪が降り舞い、あっという間に白銀の世界である。その輝きも、中国からの酸性雨まじりと思うとやるせない。
朝方、トリ小屋の方から「コケッコケッ」「キィーキィー」と悲鳴! 飛び起きて小屋に向かう。トリたち、隅の方にうずくまっている。
天井の方を見ると、キョトンとつぶらなひとみ(・・・)! 去年手で首ったまを捕まえたのより幼い子どものテンである。四肢の先は黒いが、ほかは黄色く美しくかがやく。
「あっ! お前! 昨日隣村で見かけたな! こんな雪の中、どうやって来た」と静かに声をかけ、そっと近くにあった棒を手にし、じーっと見つめ合う(笑)。一瞬逃げんとし、頭をコツン、気絶させる。
この雪と乱入テンで、全く卵を産まない。

薪ストーブに火をつけ、雪の中から食す

いつもの朝一番の仕事は、薪を細かく割って、薪ストーブに火をつけ、すき間だらけの築百十余年の我が家(友は、ボロボロで崩壊寸前と言う)を暖めることであるが、大変である。
それなりに暖かくなると、太陽の光とともに、屋根からドーンと落雪が大地を揺るがす。
20年前の神戸・淡路大地震のとき、私は、ドーンと地の底から突き上げる響きに、一瞬落雪かと思ったものである。
ストーブの上には、鉄ビンと鍋。雪の中から大根、白菜掘り出し、ジャガイモに、コンニャク(まるかく農園)などのおでん(・・・)。あさって農園工房・くまたろ農園のおもち。
孫たちがやってきて、私の苦労した大事な食べ物を、あっという間に平らげる(笑)。
私は、食事の前に、トリ・アイガモ・アヒルのエサやりし、家・小屋周りの雪かきに汗をかく。凍(い)てついた手足をストーブで温めながら、ビールを飲む幸せ。「もう朝からビール飲んで!」と娘たちに叱られながら(笑)。

ブラク(被差別部落)出身を明らかに

昨年11月の「朝来(あさご)人権学集会」での“お話”の続きです。(前回191回での報告の続き)

「我ら百姓家族⑤」(フジテレビ)の中で、「山村への移住の理由(わけ)は?」と聞かれて、私は「一番の理由は、部落問題やね。結婚とかのときサベツ(部落差別)があっても、百姓は、それを乗り越える力、そういう素晴らしいものを持っている」としゃべっています。また、私の書いた本(『六人の子どもと山村に生きる』麦秋社、『自給自足の山里から』北斗出版)や雑誌でも、部落出身を明らかにしています。

人前はばからず、涙・涙の日々―サベツにめげず幸せを―

私は、29歳のとき、妹がガス自殺図り(幸い助かる)、運ばれた阪大病院で、母から「あんたらブラク」と知らされました。
ただただ、「お兄さん、私が悪いのです」と、病院の廊下で土下座する男。怒りとともにバカらしさ、悔しさ・電車に乗っていても人前はばからず、涙・涙! の日々過ごす。
満州(まんしゅう)(中国東北部)から雪道を妹背負い、幼い私の手を引いて、命からがら日本に引き上げて育ててくれた母(昨4月93歳で死す)、その気丈な母も、「あんなにしょげこんだ娘見たことがない」と祖母は言ったものです。
母は、「知らせよう、言おう言おうと思ったが…」と悔やんだものです。
ブラクに暮らしていたら、親が言わなくても、世情知る物心ついた頃には、ブラク民だと知るものです。
私の場合、幼い頃母に連れられてブラクから出て、一般地区で育ち、知らず成人になり、いきなり、サベツが飛び込んできて“悲劇”!
今、ブラクの者の半数近くが、ブラクから出て、一般地区で暮らすと言われています。
そして、ブラクと知らない若者の中に、このインターネット社会、情報があふれ、付き合い・結婚というとき、不意にサベツに襲われ、ただ密かに親友にも理由明かさず自死する者が出ています。
私は、このようなことにならないよう、“破戒”なるブラク出身を明らかにすることにしました。
「我ら百姓家族」では、息子ケンタの失恋・苦悩は、町主催の俊と田舎の若者交流・出会いの会で知り合った娘さんとの付き合いが進む中で、娘の母親から、突然「あなたに娘は合わない」と告げられ破局したのです。
母親の言いなりになる娘、なんとも情けない、貧しき心であります。
息子は、昨年暮れに放映された「朝ズバッ」では、「百姓体験居候」の農学部出の女性と結婚し、一姫二太郎の子どもに恵まれ、“幸せ”に百姓やっています。

山国日本の源・山村の再生も夢ではない

さて、私は、43歳のとき、都市・西宮から、過疎化の進む但馬の山村のブラクに家族で移住。なんとか廃村を止めたい思いからです。
その後、朝日新聞で「もうすぐ廃村」の記事を読み、今の村に移ります。
幼い子連れて百姓やっている私を見て、「夢を見ているよう」「ああ! これで私が死んでもこの村は残る。あんなにうれしかったことはない」との古老の言葉が忘れられないです。
今、若い百姓が4軒、幼い子(1~10歳)が8人! です。山村の再生は夢ではないです。
“話”が終わって、部落の婦人方が寄ってきて、握手ぜめでした。うれしかったです。

 

あ~す農場

兵庫県朝来市和田山町朝日767

 

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MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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