山の一家*葉根舎「葉根たより」【4】|MK新聞連載記事

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山の一家*葉根舎「葉根たより」【4】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年4月1日号の掲載記事です。

大森梨沙子さんの執筆です。

葉根たより

雪解けの隙間からのぞくフキノトウ。
あんなに積もったのに、もうこの苦みに出会えるなんて!
春の苦みは、細胞の一つひとつが目覚めるかのよう…
冬眠から目覚めた熊は、まずフキノトウを食べて宿便を出すくらい整腸作用のあるこの苦み。
春の活動期に入っていけるようにとの自然のはからい。自然そのもの命は体に染み入ります。

この冬はどかっと積もる速度も速かったけれど、 溶ける速度も速い!
どの季節も降るときは一気に降って、止むと強い晴天や高い気温が続いたりと、極端な気候が多くなったように感じます。
山の麓の梅は早いこと咲き始めましたが、寒さに咲止まってしまい、私たちと一緒に戸惑っているようでした。
でも、春は確実に毎年やってきてくれます。今年もちゃんと来てくれるのだな…
年を重ねるごとにありがたさと、感動が深まっていくようです。

〈節目の行事〉

三寒四温の春への歩み。3月は桃の節句と春分がありますね。
うちは男の子3人兄弟なので、ひなまつりの日に三男のかやが幼稚でかわいいお雛さまを作ってきてくれて、ちょっと華やかになりうれしい気分。
こうした節目の行事に何日も前から手間暇をかけることで、節目の変化を身体に落とし込めていけるのだろう、と感じます。
身体が季節や暦に寄り添っていけるような…
ご先祖様たちはそういったことをとても大切にしてこられた、そのことの重要性をやっと少し感じられるようになってきました。
すぐに手をかけるようになることはなかなかですが、季節の花を活けるくらいはしていきたいと思います。忙しい中にも、そんな心のハリを持っていたいです。

〈雪への想い〉

雪の美しさと怖さ。今年は特に雪の受け止め方に、もやもやしていました。
すると、うちの山よりも豪雪地帯の山形の知人から、こんな言葉をいただきました。
「雪は全てをゼロ化してくれて、人のおごりを制御してくださる神様だよね」。
あ、こんな受け止め方をしたら気持ちよく暮らせるなあ、と思いました。雪道の運転が怖くて、ほぼ山を下りなかった私。
冬の間だけ図書館や買い物、友人とのおしゃべりなどの欲を抑えれば、下りなくてもあまり困りませんでした。
雪に感謝をしながら、春分を迎えたいです。

〈長男のお誕生日〉

3月は長男つくしのお誕生日。13歳になりました。
虫たちが土の中から出てくる「啓蟄」に産まれたつくし。
今年はお誕生日の1週間前に熱で中学校を早退してきました。
学校でインフルエンザが流行っていて、関節痛み、早退してきた晩の高熱でそうかな、と思い、しばらく寝込むことを覚悟。
つくしは自分から私が作った3年梅干しと番茶のみを欲し食し、翌朝熱が下がりましたが、また夜には上がるだろうと思っていました。
ところがそのま熱はどんどん下がり、夜には元気に!回復の早さに感動!
日頃の食が功をなしたのかな!?
細くて小さいけれど、秘めた力があることにうれしくなりました。
おかげでお誕生日には、リクエストのたこ焼きとイチゴのケーキでお祝いができました。

〈お義父さんの1周忌〉

3月はお義父さん(あ~す農場・大森昌也)のお誕生日でもあり、命日でもあります。
1周忌には、身近な方たちと小さな集まりを開きました。
はじまりは夫のげんの挨拶。
この会を開催できることへの感謝、お義父さんがあ~す農場の雪かきをしろ!と夢に出てきた話を面白おかしく話しました。
強烈だったお義父さんは、今もいるかのように家族のみんなが感じています。
見守られているような、見張られているような(笑)
きっと身近な人を亡くすとこんな風に感じられるもの、というか、見えなくても本当にいるものなのですね。
見えないものを感じとれる時、心があたたかく満たされるものがあるように感じます。

〈こつこつと…〉

雪かきも落ち着き、げんは大工仕事に励んでいます。
雪でつぶれてしまった薪小屋と私の念願の小さなギャラリーショップの小屋作り。
寒暖差の大きい中、がんばってくれています。
そろそろ薪作り、夏野菜の苗作りのための落ち葉と藁と糠の温床作りも始まります。
私は、4月19~29日に銀座のステップスギャラリーで開催される展覧会に出す作品作り。
ギャラリー企画でいろいろな作家さんの手に取りやすい小さな作品が集まります。
お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

そして春分に向けて、食で家族の身体を整えること。
掃除、花入れで家も新たな節目を迎える準備をすること。
季節を感じながら行うと、毎日の家事も新鮮なものに感じられます。
皆さまも美しい春分を…

(2017年3月12日記)

■葉根舎

haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への「あ~す農場」の連載記事

1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)

2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)

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