フットハットがゆく!【366】「シカの話」|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2024年11月1日号の掲載記事です。
シカの話
10月の上旬に、10数年ぶりに奈良公園に行ってきました。お目当てはクラフトビールのイベントで、公園に出店された10数件の露店を飲み歩きました!…奈良公園に行きたかった理由はもう一つ。最近SNSで観光客とシカとの交流がたくさん投稿されているので、僕もシカを間近に見て観察したいと思ったのです。
シカとの交流といえば、僕は京都府南丹市の田舎で猟友会に所属し、1年中、シカと触れ合っています。といっても、猟師なのでシカを殺すわけですが…。ジビエとして食べるために銃猟をする事もありますし、田畑を荒らす有害獣として市の依頼を受けて駆除する場合もあります。また、道路で車にはねられて死んだシカ、農作物を守るための防護柵に引っかかって暴れているシカ、なども市の要請で処理します。とにかく野生のシカが増え過ぎて、山の生態系が乱れるほどになってきていますので、猟友会の出番も必然と多くなります。僕自身は動物が大好きで、実被害を被る農家でもないので、シカ自体に恨みはありませんが、猟師として相対した場合は、確実に仕留めたいと腕を磨いています。
さて、ビールイベントの広場にもシカがたくさんいたので、いろいろと観察しました。まず驚いたのは、シカが泥浴びをしている場面に遭遇したことです。泥浴びは、イノシシが好んですることが有名ですが、シカもするということを僕は知りませんでした。思わずスマホ動画に収めました。
また、奈良公園のシカにダニはいるのか? ということが以前から気になっていました。地元で夏場にシカを駆除すると、死骸からアリのようにダニが湧き出ておぞましいほどです。人間にもうつるので注意が必要です。ということで、座っているシカを見つけ、通常は皮膚に吸い付いているので、毛をかき分けてダニを探してみました。ビール片手にシカの毛を熱心にいじくっている僕を、怪訝そうに見る外国人観光客の方もおりました。お構いなく3頭分探しましたが、ダニは見つかりませんでした。が、一応ネットで調べると、ダニをつけているシカもいるそうなので、やはりうかつに触らないほうが良さそうです。
さらに、オスジカが去勢されているのかどうかも非常に気になっていました。秋はシカの発情期であり、オスが荒々しくなり危険です。ということでオスジカの後ろに回り、タマタマが切除されているかどうか見て回りましたが、そもそもシカの睾丸は小さめで尻尾に隠れてよく見えませんでした。でも立て看板に発情期のオスに注意するように書いてあったので、去勢はされていない、と考えて良さそうです。
そして、シカは落ち葉をよく食べていました。真冬にほとんどの植物が枯れた後も、山で生きていける証拠です。以前、ヤギを飼っていた時に、同じく落ち葉を食べるシーンをよく見ました。ヤギとシカは同じ偶蹄類の反芻動物なので、食性はほぼ同じと考えています。でもヤギはタマタマが非常に大きく、尻尾からはみ出るくらいブラブラとぶら下がっています。タマタマに関してはシカよりヤギの勝ちだな…と、ほろ酔いながら思ったのでした。
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