フットハットがゆく!【367】「キツネの話」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【367】「キツネの話」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2025年1月1日号の掲載記事です。

キツネの話

先日、うちのニワトリ小屋が襲われ、20羽中、10羽がさらわれました。自分のうっかりミスで、小屋の扉を閉め忘れたまま、夜、外出してしまいました。卵から育てた大事なニワトリが連れ去られ、悔恨と懺悔、犯人を恨む気持ちが込み上げました。監視カメラがあったわけでもないし、直接目撃した訳でもないのに、なぜ犯人がキツネと分かったのでしょうか?…ニワトリ小屋を襲うとされる生き物の、特徴を検証してみましょう。

◯ヘビ…卵やヒヨコを狙う。日本の一般的な大きさのヘビの場合、ニワトリの成鳥の方が強い。

◯ノラネコ…自分が食べる分、一羽だけを連れ去る。襲われた場所は羽根が散乱するので被害がすぐに分かる。

◯イタチ…強烈な殺戮本能により、食べる、食べないに関わらず小屋のニワトリを全滅させる。無惨な死骸が多数残る。

◯キツネ…一羽ずつ襲っては安全な場所に運び、一旦埋めて、また舞い戻ってくる。襲われた場所は羽根が散乱するが、死骸は全く残らない。

今回現場に残された特徴から、犯人をキツネと断定しました。

それにしてもスゴイと思うのが、キツネの大胆さとズル賢さです。僕は猟師で、猟犬を2頭飼っています。彼らは、家に近づく野生動物やノラネコを敏感に察知して、けたたましく吠えます。ニワトリ小屋と犬小屋の距離はわずか10mほどですが、塀が死角になって猟犬からニワトリ小屋は直接見えません。それでもキツネに気付いて吠え立てたことでしょう。キツネも最初は警戒しますが、犬は鎖に繋がれていて自分を襲うことはできない、と判断したのでしょう。開いた扉からニワトリ小屋に侵入し、1羽殺しては裏山に行って埋め、それを10回繰り返したという訳です。キツネは単独行動をする動物で縄張り意識も強いので、恐らく1頭の犯行だと思われます。縄張りの山に、10羽のニワトリが埋まっていて、毎日見回って、部外者に盗られないようにしつつ、少しずつ食べていくことでしょう。

猟師と猟犬のいる家からニワトリを盗むとは、なんとも恨めしいキツネ。しかしそもそも、僕自身もニワトリの卵やお肉を食べるために飼っている訳です。ニワトリの立場にしてみれば、キツネに食べられるか、僕に食べられるか、死ぬタイミングと入る胃袋が変わっただけの話…。

キツネが家の近くにいることで、良いこともあります。キツネ本来の主食がネズミなので、圧倒的にネズミが減ります。ネズミはニワトリ小屋の餌を狙って侵入し、ついでに様々な病原菌、鳥インフルなどをばら撒くこともあります。養鶏の立場からしたら迷惑極まりない生き物であり、人間の生活にも悪影響を与えます。そのネズミを退治してくれるなら、キツネは神様です。そうやって祀られている神社もあります。ちなみに、ヘビ、ノラネコ、イタチもネズミが大好物なので、そういう意味では神様です。ただ僕が小屋の扉を閉め忘れたばっかりに、神様が悪魔になってしまったという訳です。防御さえしっかりしていれば、良好な関係が築けるのかもしれません。

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