グローバル・ビジネス・レポート【143】Serendipity:金沢文庫に住む|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、「グローバル・ビジネス・レポート」を2012年2月1日から連載しています。
MK新聞2026年7月1日号の掲載記事です。筆者プロフィールは新聞掲載時点のものです。
Serendipity:金沢文庫に住む
前号で私は4月から防衛大学校に着任し、住居も新潟県長岡市から神奈川県横浜市に引っ越したと書いた。横浜市は金沢区というところに住んでおり、最寄り駅は京急金沢文庫駅である。防大は横須賀市の走水という三浦半島の東端にあり、金沢文庫駅から防大までは電車とバスで約1時間の距離にある。
時々、人に「どうして金沢文庫に住むことにしたのですか」、「横須賀に住んだ方が防大に近いのではないですか」と聞かれることがある。確かに当初、私も妻も横須賀に住むことを考えていた。それが本当にふとした偶然で金沢文庫に住むことになった。
防大に移ることを決めた後、私と妻は、横須賀で住む場所を決めるため、インターネットで住居の情報収集を行い、いくつか候補の物件を決め、物件を見るためにそれらの物件を取り扱う不動産屋を予約した。この不動産屋があるのが金沢文庫だった。私も妻も金沢文庫に行くのは初めてで、高校の日本史の時に金沢文庫の名前が出てきたなあと思いながら、駅を降りた。
金沢文庫はとても味わいのある街だった。私と妻は、旅行が趣味なので、これまでいろいろな街に行ったことがあるが、「その中でもこれは本当に味わいのある街だね」と妻と話しながら、商店街を歩き、不動産屋に向かった。不動産屋に着き、担当の方に挨拶をした後、不動産屋の車で横須賀に行き、候補の物件をいくつか見た。予定していた物件を見た後、横須賀から金沢文庫に戻る車の中で、担当の方に「今日、見たエリアを候補としていますが、それとは別にこの辺りで住むとしたら、お薦めの地域はどこですかね」と聞いたところ、その方は「私なら断然、金沢文庫を薦めますね。金沢文庫は本当に良い街ですよ」と答えた。
新潟に戻ってから調べたところ、金沢文庫駅前の商店街は、すずらん通り商店街といい、戦後、歌手の小野和正さんの親世代の方々が協力してつくり、地元の人に愛されている商店街であることを知った。小田さんの実家の小田薬局は今も商店街にあり、その縁で金沢文庫駅のメロディーには、小田さんの歌であるmy home townが採用されている。
私と妻は、引き続き横須賀で住むことを検討していたが、二人とも金沢文庫のことが頭から離れず、金沢文庫のことを調べれば調べるほど、金沢文庫に住みたいと思うようになった。その後、防大でも金沢文庫から通っている人が何人かいることや自動車で朝早く金沢文庫を出れば、電車とバスで行くよりも早く防大に着けることなどが分かった。幸い金沢文庫で良い物件も見つかり、最終的に金沢文庫に住むことを決めた。
金沢文庫に住み始めてからしばらく経つ。もちろん、人によって街の捉え方は異なり、私たちもまだ知らないことが多数あると思うが、私たち家族にとっては、不動産屋の方が言った通り、この街は本当に良い街で味わい深い街である。あの時、別の駅の不動産屋に行くことになっていたら、金沢文庫のことは知らず、住むことはなかっただろう。
英語のserendipityという言葉は、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけることを意味する。科学の重要な発見、発明が実はserendipityであることが多い。それと比べるのは、畏れ多いが、今回の私たちの住居探しはまさにserendipityだった。偶然や人の縁というものは本当に面白い。
■筆者プロフィール
静岡県出身。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。 博士(経済学)。東京大学、京都大学、長岡技術科学大学などを経て、現在、防衛大学校 人文社会科学群 公共政策学科 教授。
金沢文庫すずらん通り商店街HP(https://bunko-suzuran.com)
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MKタクシーのオウンドメディアであるMKメディアの編集部。京都検定マイスターや自動車整備士、車載広報誌のMK新聞編集者、公式SNS担当者、などが所属。京都大好き!旅行大好き!歴史大好き!タクシー大好きです。
