山の一家*葉根舎「葉根たより」【6】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2017年6月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
ケロケロケロ… 蛙始鳴。
田の水を入れ始めた五月上旬、七十二候の通りに蛙の声が聴こえてきました。
立夏が過ぎ、日に日に草木がぐんぐん伸びていくように、田畑もどんどん忙しくなり、身体をお日様の下で思いっきり動かしたくなるまぶしい季節。
蚯蚓出、竹笋生、蚕起食桑。
土をいじるとミミズが出てきて、猪が気づかなかった残りの筍を掘り、おいしそうな桑の葉が出てくる…
暦はよくできていますね。季節と暦と共にあると、とても気持ちがいいです。
食卓には筍とふき、のびる、せり、うるい、みつば、あざみの茎など季節の野草と保存しておいた切干し大根と干ししいたけに海藻類。
畑にはまだ小さい大根やかぶ、じゃがいもなど、食べられるのはもう少し先です。夏野菜の苗は大きくなってきたので、そろそろ植え付け。
稲の苗も芽を出しました。昨年は苗作りを大失敗したので、今年は出そろってひとまずほっとしました。
山の田は小さく不揃いなので、一枚ずつ畔切、畦塗、代掻きと目が回りそうな毎日。
今年からは区長などの雑務もあるので、毎年同じことをしているようで、変化も壁も多く成長させていただいています。
おかげで山の下の地区の方と新たにやっていけることができて、村の活性化につながるような予感!
生えてくる草も毎年同じようで、バランスなどが違い面白いです。
昨年はひめおどりこそう、今年はスミレがたくさん生えたり…
そんな気づきや感動が年々深まる幸せ。
新緑と次々に咲く花々の美しい対比、藤、桐、卯の花、きんぽうげ、ときわはぜ…
私たちも美しくのびやかに過ごしてまいりたいです。
<八十八夜>
立春から八十八日目の八十八夜。春から夏に移る節目の日。
この日までは遅霜が下りることがあるので、農家に注意を促すために設けられたそう。
お米作りもいよいよ忙しくなる時期。
「米」という字は、八十八を組み合わせてできたとか、米作りは八十八の手間がかかるためとか…
昔からの祈りを感じます。夏も近づく八十八夜、そろそろお茶摘みもしなくては!
<ゴールデンウィーク>
世間はゴールデンウィークだけれど、農作業は忙しい時期。
子供たちは裏山へぐんぐん登って遊んだり、お父さんと田んぼへ行ったり。今年は初めて子供たちと畔切をしてみました。
畔から水が漏れないよう新しく練った土で畦塗りをするために、今の畔を鍬で削っていく仕事。
畦がたくさんあるので結構重労働ですが、一三歳の長男から六歳の三男まで楽しそうにやってくれました。
それから、通学中に田んぼによく目がいくようになったらしく、朝キジが何羽いたか教えてくれるようになりました。
畦切中にキジの声が聞こえたので、気になったのでしょうね。
こうして、楽しく田んぼと仲良くなっていったらいいな、と思います。
先月はうちの畑に何日も親離れしたばかりの小さめのクマが住み着いて、ふきやつくしを一生懸命食べていました。
熊は移動する生き物なので、もうどこかへ行きましたが、ちょっとドキドキする数日でした。
どこかで元気に暮らしていたらいいな。
でもやっぱり、一つくらい子供たちと遊ぶ時間を作りたいと思い、近くの標高六九二mのおくらべ山という山へ登ってきました。
富士山と出雲大社を結んだライン上にある山。
山頂からは三六〇度見渡せて、様々な主要な山が見え、夏至や冬至の日の出の方角には古墳が並んでいたり、不思議な山でした。
見通しが良い日は、六甲山と日本海も見えるそうです。
<三男かや一年生!>
三男もついに小学生に。
下校時刻が三時になった上に「小学生になったから、もうバスまで迎えに来なくていいよ! でも、雨と雪の日は来てね!」と、かや。さすが三男はお兄ちゃんたちのおかげでたくましい。
時間の流れがだいぶ変わってきました。嬉しいような寂しいような…
子供の成長も草木の成長もまぶしい毎日。
私も太陽と山の気をたくさん受けて、心も身体も大きくのびやかに毎日を送り、暮らしと仕事を成長させていく季節にしていきたいと思います。
大阪の個展まであと少しです!
(2017年5月15日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
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