フットハットがゆく!【372】「糞(ふん)の話2」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【372】「糞(ふん)の話2」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2025年11月1日号の掲載記事です。

糞(ふん)の話2

前回に続いて、動物の糞の話です。僕は猟師をしているので、動物の糞を見分け、大きさや鮮度を確認することが重要になります。山に狩りに入る場合、糞を見つけてそれがシカなのかイノシシなのか、それとも他の動物かを判断します。例えばイノシシを狙っている場合、山に入って新鮮なイノシシの糞を見つけたら、近くにいる可能性がうんと高くなるので、興奮します。古い糞だと、ないよりはマシですがあまり期待ができません。50歳を超えてから猟師になった僕ですが、まさか動物の糞を見て興奮したりガッカリしたりする人生が待っていようとは、想像外でした。

シカやイノシシを解体して食用とする場合にも、この糞に気を付けなければなりません。糞は肛門から排泄される前は、大腸に入っています。ここは大腸菌などの雑菌でいっぱいですので、誤ってナイフで傷つけると、大腸菌が広がってしまいます。ジビエ食は衛生面が重要! 腸の処理は特に気を使います。それにしても、獲物を実際に解体すると、図鑑でしか見たことのない動物の内臓がよく分かります。胃から小腸、大腸と内容物が段階的に変化し、最終的に糞となって直腸から出ていく様が分かります。まさに生命の神秘を感じる、小宇宙と言えます。

さて、糞の話が続きます。うちのニワトリ小屋が襲われまして、小屋にいた6羽が全部殺されました。持って行かれたのは2羽。金網の古くなった部分に穴を開けて侵入されたのです。死骸が4羽分残されたので、犯人はイタチだと思いました。イタチはその殺戮本能から、食べる、食べないに関わらず、侵入した小屋のニワトリを全部殺す、と聞いていたのです。しかしなんと、小屋の中に中型犬くらいの糞があり、イタチにしては大きすぎますので、犯人はキツネ、ということになりました。キツネは糞によるマーキングの習性があり、目立つところに自分の糞をして、そこが自分の縄張りだと主張するのです。ニワトリをとりあえず全部殺して、後から順番に持って帰るつもりだったのでしょう。それにしても襲った小屋の、ど真ん中に糞をしていくなど、大胆というか憎らしいというか…。まぁそのおかげで犯人が特定できました。それ以来、キツネ用のワナを仕掛けたり、猟犬をニワトリ小屋の前に待機させたり、対策は練っています。ただ、キツネというのは、ネズミをよく捕らえて食べます。ニワトリ小屋に雑菌をばら撒き、時に鳥インフルも媒介する害獣のネズミを、捕って食べてくれるという点では、キツネは益獣。僕は農業はしていませんが、お米などの穀物を食い荒らすネズミは農家さんの厄介者…を、食べてくれるキツネは神様。だから、ニワトリをやられたからといって、キツネを捕らえて殺すのは、農家さんから見ると迷惑、ということになります。糞の話から脱線しましたが、野生動物とのお付き合いはいろいろ難しいものです。

 

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