エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【228】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【228】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2008年7月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

長いサブタイトルを持つ本を買った。
「体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話」がそれで、書名は『煩悩の文法』。ちくま新書の最新刊だ。

好みを言えば最後の「話」はないほうがいいが、個人的には、興味をそそられるなかなかいいサブタイトルだと思った。
というより、書名だけでも十分におもしろそうな、いいタイトルではないか。

長いサブタイトルと言えば、すぐに思い浮かぶのがテレビの土曜ワイド劇場。
ちなみに先週の新聞番組欄を見ると「温泉若おかみの殺人推理・富山大牧温泉~旅グルメ番組殺人事件美人女優の死体が峡谷を流れる!?水音が作る時間差トリック」とある。
サブタイトルは「・」以下か、「~」以下か、それとも「美人女優」以下か。
どこからがサブタイトルなのかすらわからない。さすがである。

それはともかく、長いサブタイトルの本と言えば、「モノ、コト、時間、仕事、人生……ちらかっているのは何ですか?」(『かたづけ学』)や「フランス人もロシア人も中国人もこの方法で話せるようになった!」(『国際人の英会話学習法』)といった、いかにもという系統が多い。
試しに、自宅の書棚をいくつか眺めてみた。
さすがにそれほど長いサブタイトルの本はほとんどなかったが、探しているうちに、サブタイトルの定義って何だろう、と思いはじめた。
というのは、奥付に書名と共にサブタイトルが併記されている本もあれば、そうでない本もあるからだ。
また、表紙と背の両方にサブタイトルが記されているものもあれば、表紙にはサブタイトルがあるが背にはないものもある。
中には、サブタイトルなのか、短い紹介文なのか、宣伝用のキャッチコピーなのか、曖昧でよくわからないデザインのものもあった。

手近にある事典をめくってみたが、一番詳しかった『出版事典』でも、「題名が一般的でその内容を十分に表現していないようなとき、説明を強め、あるいは補うために副題を設ける必要が生ずる。
(中略)副題は効果的に使用し濫用すべきでない」とあり、わずかにレイアウト上の注意についても言及しているが、必要十分な条件、定義はなされていなかった。

 

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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