夏の京都観光で訪れたい蓮(ハス)が美しいおすすめスポット15選
目次
京都が最も暑くなる7月から8月の夏場に見頃を迎えるのが蓮の花です。
暑い夏ではありますが、早朝はかなり過ごしやすい時間帯です。
そんな夏の早朝にこそ楽しみたいのが、蓮の花です。
京都にある蓮のおすすめスポットを15ヶ所、一挙紹介します。
6月下旬から8月中旬にかけての夏場、京都各所で蓮の花が見頃を迎えます。
蓮(ハス)とは
古代から愛された聖なる花
泥の中から咲く花
蓮(ハス)は、ハス科ハス属の水生植物です。
見た目の似た水生植物であるスイレン(睡蓮)とあわせてロータス(Lotus)と称されます。よく混同されるハスとスイレンは、かつては同じスイレン科に分類されていましたが、今は系統的にはかなり遠縁であることが判明しています。
蓮はインド原産ともされますが、人間の活動に伴い古くから世界中に広がっており、詳細は不明です。
日本でも白亜紀の地層からハスの仲間の化石が出土していることから、自生のハスが有史以前から日本に分布していた可能性も高いとされています。
古代から歌や文献などで蓮の花の記録が残されています。
南北アメリカ大陸には、ハスとは別種で黄色い花を咲かせるキバナハス(黄花蓮)が自生しています。
蓮の花は古くから聖なる花とされてきました。特に仏教においては仏像が蓮の花を模した蓮台に乗っていることからもわかるように、特別扱いされてきました。
また蓮を図案化した「蓮華文」という文様は、仏具だけではなく日用品にまで広く用いられています。
古代インドからはじまり、日本や中国など東アジアにも仏教とともに伝わりました。
蓮の名前の由来
蓮(ハス)の名前は、花の中心部にできる花托(かたく)が蜂の巣に似ていることから「はちす」となり、「はす(蓮)」と呼ばれるようになったという説が有力です。
確かによく見ると蓮の真ん中は蜂の巣のようですね。
多彩な品種がある蓮の花
1,000を超える蓮の品種
日本でも蓮の花は観賞用としても広く栽培され、江戸時代には50種ほどの蓮の品種があったことが記録されています。観賞用の蓮は「花蓮(はなはす)」と総称されます。
蓮は自家受粉しにくい性質があるため、種から育てると基本的には親とは異なる性質を持つようになります。まれに種から育てた子が親よりも優れた性質を持っていると、別の品種として広がっていくことになります。
そのため、蓮の園芸品種はレンコンから育てられます。
現在では1,000種ほどの蓮の品種が知られます。別の中国で作出された蓮の品種も1,000種ほどあり、日本にも移入されています。
蓮の品種は全部で3,000を越えるとも言われています。
中国では、今も日本よりも大規模に新しい蓮の品種が続々と作りだされています。
ハスとキバナバス
前述のとおり、ハス属にはハスとキバナバスの2種類があります。
どちらも多くの品種の元となり、ハスとキバナバスの交雑品種も多数あります。
交雑品種は、ピンクと黄色がかった白が入り混じった花を咲かせたりします。
舞妃蓮は、開花当初はピンク色をしていますが、次第に白くなり、散るころにはクリーム色へと変化します。
ハスは花と葉が同じくらいの高さですが、キバナバスは葉よりも高い位置で花が咲きます。
舞妃蓮などの交雑種はキバナバスの影響から、花が葉よりも高い位置で咲きます。
池などで群生する場合は、キバナバス系統の蓮の方が見栄えが良いという利点があります。
遺伝子レベルの調査も進む蓮の品種
同じ品種の蓮を別の名前で呼んでいることも多くあります。
ある品種の蓮が別の場所に持ち込まれると、別の名前で呼ばれるようになることも多くあります。もとの蓮の由来が忘れられると、別の名前の品種として認識されるようになります。
逆に、異なる品種の蓮をまとめてひとつの名前で呼んでいることもあります。
例えば大賀蓮は、その人気の高さからいろんなところで見かけますが、その多くは純粋な大賀蓮ではありません。
異なる品種であったり、他の品種との交雑種であることが多いです。
近年は、遺伝子調査によって蓮の品種を整理する研究が進められています。
結果として、蓮の品種は半分程度に整理される可能性が示されています。
歴史ある園芸植物ではよくあることです。
色も形も様々な蓮の品種
蓮の園芸品種の中には、お椀に入るくらい小さな蓮の「碗蓮(わんれん)」という極小型品種もあります。花のサイズは10cm程度しかありません。
小さな容器でも育つのは、特別な蓮の品種のみです。
色も形も大きさも様々な花があるのが、蓮の魅力のひとつです。
蓮の花の色は、紅色、赤色、ピンク色、白色、黄色、黄白などに加え、白と紅が混じった爪紅(つまべに)や斑(まだら)などに分類されます。
近年は部分的に薄い緑色をした蓮も作出されています。
花弁数も25枚未満の一重咲きから50枚以上の八重咲き、その中間の半八重咲きと様々です。
中には花弁数が3千枚を超えるという妙蓮という珍しい品種もあります。
そして、これらの観賞用の園芸品種である花蓮とは別に、レンコンをとるために品種改良を進められた食用の蓮の品種群もあります。
レンゲソウはマメ科の植物
蓮と混同されることもあるレンゲソウ
蓮の花を蓮華(れんげ)と呼ぶこともあります。
同じくレンゲ(蓮華)と呼ばれることもあってややこしいのがレンゲソウ(蓮華草)です。
「れんげ」と言った場合、蓮かレンゲソウか間違えないように注意が必要です。
例えば童謡「ひらいた ひらいた」に出てくる「れんげの花」はレンゲソウではなく蓮の花です。
また「蓮華紋」と言えば、蓮の花(またはスイレンの花)をかたどった文様です。
春の田畑で緑肥として咲くレンゲソウ
花の形が蓮に似ていることがレンゲソウの名前の由来です。
しかし、レンゲソウはマメ科の植物で蓮とはかなり遠縁です。
レンゲソウはかつては緑肥として利用され、春は田畑がレンゲソウでピンク色に染まる姿が風物詩でした。
今は化学肥料の普及により、レンゲソウを見かけることも少なくなっています。
洛西の蓮おすすめスポット4選
① 法金剛院(ほうこんごういん)〈右京区〉
特別名勝の庭園で知られる寺院
京都の西郊にある双ヶ岡(ならびがおか)の東麓にたたずむ、平安時代初めに創建の寺院です。
双岡大臣とも称された貴族の清原夏野の山荘だったところが、のちに寺院へと改められました。
庭園にある青女の滝(せいじょのたき)は、日本最古の人造の滝といわれます。
平安時代の貴重な庭園の遺構として、国の特別名勝に指定されています。
特別名勝は京都では世界遺産よりもレアです。
蓮の開花期に早朝拝観が行われる「花の寺」
法金剛院は「関西花の寺二十五ヵ所」の第13番霊場にも選ばれ、「花の寺」とも言われます。
付近の地名である花園も法金剛院に由来するとされています。
春は待賢門院桜、秋には紅葉が有名ですが、中でも有名なのが夏は蓮(ハス)です。
京都を代表する蓮の花の名所として知られ、7月半ばの蓮の花が開花する期間に行われる早朝拝観の観蓮会(かんれんえ)は京都の風物詩です。
わざわざ蓮の花のために夏の早朝から開門してくれる寺院は、京都でも法金剛院くらいです。
蓮の花が最も美しい夏の早朝に見ることができる、おすすめのスポットです。
2024年は7月6日(土)~28日(日)に観蓮会が開催されます。
拝観情報
開園時間 | 9:00~16:00(受付は15:30まで) |
拝観料 | 大人 500円 小人 300円 |
TEL | 075-461-9428 |
住所 | 京都市右京区扇野町49 |
アクセス | JR「花園」より徒歩3分 |
観蓮会
開催期間 | 2024年7月6日(土)~28日(日) |
開園時間 | 7:30~12:30(受付は12:00まで) |
公式ホームページ:法金剛院 | 関西花の寺 第一三番霊場
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② 大沢池(おおさわのいけ)〈右京区〉
大覚寺・大沢池とは
大覚寺の東側に広がる周囲約1kmの人工池です。
大沢池は平安時代初期の嵯峨天皇の離宮である嵯峨院の庭園遺構です。
中国で古くから知られる景勝地である洞庭湖(どうていこ)を模して造られたとされ、「庭湖(ていこ)」とも呼ばれます。
巨勢金岡(こせのかなおか)の作庭と伝えられ、大沢池に舟を浮かべて楽しむ池泉舟遊式庭園でした。
今も秋の「観月の夕べ」では龍頭鷁首舟が大沢池に浮かべられ、お月見が行われます。
古くから京都を代表する観月の地として知られ、奈良の猿沢池、滋賀の石山寺と大沢池は並び称されました。池に映る月の姿を楽しみました。
大沢池の北畔に残る「名古曽の滝(なこそのたき)」は、百人一首で歌われたことでも知られる国指定名勝です。
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ(千載集(せんざいしゅう)・藤原公任(きんとう))
大沢池とその周辺では、豊かな自然が残されています。アオサギや白いチュウサギがよく見られます。たまに美しいカワセミが姿を見せてくれることもあります。
戦前までは近くの子供たちが泳いだり、ウナギやザリガニ、カエルをとったりする遊び場でもありました。
嵯峨御所とも呼ばれ、「いけばな嵯峨御流(さがごりゅう)」の総司所でもあります。
大沢池の中にある天神島、菊ヶ島、庭湖石の配置であるニ島一石が嵯峨御流の基本形に通じています。
大沢池は庭園の苑池であると同時に農業用の溜池でもあります。
総貯水量は33,120㎥あり、今も周辺の田畑を潤しています。
ちなみに近くの広沢池の貯水量は151,000㎥で意外と差があります。
おすすめポイント
古くから景勝地として数々の歌にも詠まれて来た大沢池は、夏の京都でも最大の蓮スポットでもあります。
周囲1kmある大きな大沢池は、さすがに水面の全てが蓮の花で覆い尽くされているわけではありません。
それでも池の半ば近くを蓮の花が覆い、一斉に咲き誇る姿は、京都でも他に類を見ない壮観な景色です。
特に北側から北東側と南西側に多くの蓮の花が密生しており、満開の時期には芳しい香りが充満しています。
鉢植えの蓮の花も良いですが、本来の植生どおり夏の池に咲く姿は自然の美を感じます。
本来、大沢池は舟で楽しむ池泉舟遊式庭園です。一度舟から蓮の花を楽しんでみたいものです。
大沢池に咲く蓮の花の見頃は7月上旬~8月上旬ごろです。
蘇った大沢池の蓮
安永9年(1780年)に刊行された都名所図会では、大沢池には蓮の姿は確認できません。
今の大沢池とは異なり、池の周りには松並木が植えられていたことが確認できます。
大沢池では、1989年ごろに水草が繁茂することを目的として、ソウギョ(草魚)を放流しました。
かつては大沢池の全面に水草が繁茂していましたが、毎年9月の観月会で池に映る月を楽しむ必要があるため、ある程度の水草除去が必要とされていました。
水草除去は非常に人出と費用がかかる大変な作業でした。
ソウギョは狙い通り繁茂する水草をあっとういう間に一掃してくれましたが、不要な水草だけでなく蓮も食べつくしてしまいました。
池の生態系は一変し、単に蓮の花を楽しめないというだけでなく、水質の悪化や池のまわりの桜も枯れはじめるなど、1990年ごろには大変な状況が生じていました。
大覚寺では、人の都合で放流したソウギョをまた人の一方的な都合で殺生することが許されるのか、何か代案はないのか、など様々な検討した結果、ソウギョを駆除することを決断しました。
2001年からソウギョの駆除がはじまり、かつての美しい景観が戻りはじめ巻いた。
そして、2006年には17年ぶりに蓮の花が復活しました。
池の底で眠りについていたかつての蓮が自然に発芽したのです。
これにはプロジェクトに関わった関係者一同大感激だったそうです。
蓮の種の寿命が長いことは知られており、ある程度の自然発芽は想定していたものの、あちこちから元気に伸びる蓮の芽は想定外でした。
この爪紅色の蓮は「名古曾(なこそ)」と名付けられました。
大沢池の畔にある名古曾の滝に由来する名称です。
特定の蓮の品種を指す名称というよりも、大沢池に咲く蓮の総称と捉えるべきでしょう。
その後も順調に蓮は育ち、今では夏になると蓮の花が美しく広がる景観をとりもどしました。
参考書籍:草魚バスターズ: もじゃもじゃ先生、京都大覚寺大沢池を再生する
拝観情報
拝観時間 | 9:00~17:00(受付は16:30) |
拝観料 (諸堂エリア) | 大人 500円 小中高 300円 |
拝観料※ (大沢池エリア) | 大人 300円 小中高 100円 |
TEL | 075-871-0071 |
住所 | 京都市右京区嵯峨大沢町4 |
アクセス | JR「嵯峨嵐山」より徒歩20分 |
※2020年3月16日から蓮の花が咲く大沢池エリアも通年有料化されました。
公式ホームページ:旧嵯峨御所 大本山 大覚寺
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③ 天龍寺(てんりゅうじ)〈右京区〉
天龍寺とは
鎌倉時代に離宮「亀山殿」があった風光明媚な地に、夢窓疎石(むそうそせき)を開山として建武2年(1335年)に創建されました。
開基である足利尊氏は、心ならずも敵対したまま京都から離れた吉野で亡くなった後醍醐天皇の菩提を弔うため、巨大な伽藍の寺院を築きました。
造営には、莫大な費用が必要とされました。費用を賄うために元との交易を行い、貿易船は「天龍寺船」と言われました。
京都五山の寺格が整えられると、京都五山の第一位として、室町幕府の厚い庇護を受けました。
夢窓疎石が作庭した「曹源池(そうげんち)庭園」は名庭として知られ、特別名勝の第一号に指定されました。
1994年には世界文化遺産「古都京都の文化財」のひとつに指定されました。
おすすめポイント
曹源池庭園で知られる天龍寺ですが、蓮の花を楽しめるのは無料の前庭にある放生池(ほうじょうち)です。
放生池のある前庭は、渡月橋へと続く長辻通沿いにある総門と法堂(はっとう)の間に広がります。
蓮の花が咲く放生池の周囲は駐車場になっており、鉄柵で囲まれています。
南北二つの池に分かれており、真ん中を東西に石橋がかかります。
本来は、総門、勅使門から放生池の石橋を渡るのが参拝ルートです。
石橋が俗世から聖なる空間へと入る境界を意味しています。
安永9年(1780年)に刊行された都名所図会でも、やや形は異なるものの、放生池が同じ位置に確認できます。蓮の花の姿は確認できませんが。
なお、今の天龍寺と同じような伽藍となっていますが、仏殿(法堂)や方丈は幕末の金門の変で消失しており、明治以降の再建です。放生池のすぐ東側の勅使門は当時から現存しています。
夏になると、天龍寺の塔頭群やはるか愛宕山をバックに、放生池を埋め尽くすように蓮の花が咲き乱れます。
前庭には蓮の花の香りが漂います。
見頃は7月中旬~8月上旬ごろです。
放生池は、石橋で南北に分かれています。蓮の花は南側がやや開花が早く、北側はやや遅めです。
天龍寺では、毎年 7月の最終土曜日と日曜日に暁天講座(ぎょうてんこうざ)が開催されます。
6:00~7:00に座禅、7:00~8:00に提唱というお話が聞けます。
ちょうど暁天講座のころには、放生池の蓮が見頃を迎えています。
ぜひ、暁天講座にも参加してみてください。終了後の素麺接待は最高ですよ。
2023年も天龍寺暁天講座は開催予定です。
拝観情報
拝観時間 | 8:30~17:30 放生池のある前庭は境内自由エリア |
拝観料 | 高校生以上:500円 小・中学生:300円 未就学児 :無料 放生池のある前庭は境内自由エリア |
TEL | 075-881-1235 |
住所 | 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68 |
アクセス | 嵐電「嵐山」よりすぐ |
公式ホームページ:世界遺産|京都 嵯峨嵐山 臨済宗大本山 天龍寺 公式ホームページ
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④ 小倉池(おぐらいけ)〈右京区〉
小倉池とは
小倉池は、嵐山嵯峨野エリアの西側にそびえる小倉山の東麓にあるため池です。おそらく農業用水として利用するために作られた池です。
小倉山とは、かつては嵐山嵯峨野の西側に連なる山々の総称でしたが、今はその中の296メートルのピークを指します。
50年ほど前には、小倉池はつり堀として使われていたこともあります。
小倉池のすぐ西側には、御髪神社(みかみじんじゃ)という神社があります。日本で唯一の髪の神社として、理容・美容業界などから篤い信仰を集めています。
1961年に京都の理美容関係者によって創建された、意外と新しい神社です。
祭神は鎌倉時代終り頃の藤原采女亮政之(ふじわらうねめのすけまさゆ)という人物で、日本における理美容業の祖と言われています。
小倉池のすぐ南側には、トロッコ嵐山駅があり、北へ100メートルほど進むと常寂光寺へと出ます。
おすすめポイント
京都で「おぐら池」といえば、かつては蓮見舟で賑わったという名所だった巨椋池が有名です。
巨椋池は小倉池と表記されることもありました。宇治市には小倉という地名があります。
国営の干拓事業によって巨椋池が消滅してしまいましたが、最近巨椋池とはまた別の「おぐらいけ」が蓮の名所として脚光を浴び始めています。
嵐山にある小倉池です。
小倉池は、小倉山山麓に並ぶ亀山公園、大河内山荘、トロッコ嵐山駅、常寂光寺などを結ぶ道の途中にある蓮スポットです。
南北100メートル余り、東西50メートルほどの池を、蓮の花が覆い尽くします。
もとはそれほど蓮の花が咲く池ではありませんでしたが、2018年の改修工事により、蓮が水面を埋め尽くす姿へと生まれ変わりました。
それまでも夏の小倉池は見たことがありましたが、ある年からたくさんの蓮が咲いており、「あれ?ここにこんなに蓮なんて咲いてたっけ?」とびっくりしたことを覚えています。
天龍寺や大覚寺・大沢池の蓮が散ったあとでもまだ咲いており、京都でもかなり遅咲きの蓮です。
9月に入ってもまだ元気に花を咲かせている蓮を見ることができます。9月末頃でもまだそれなりの数の蓮の花が咲いているから驚きです。
小倉池の蓮の花の見頃は7月中旬~8月下旬ごろです。
小倉池にはカワセミがよく出没するようで、大きなカメラと三脚を構えたカメラマンたちをよく見かけます。
一度美しいカワセミを見てみたいものです。カワセミと蓮の共演なんて、さぞかし素敵な景色でしょう。
見学情報
見学時間 | 日中随時 |
見学料 | 自由 |
住所 | 京都市右京区嵯峨小倉山山本町 |
アクセス | 嵯峨野観光鉄道「トロッコ嵐山」よりすぐ |
⑤ 長岡天満宮(ながおかてんまんぐう)〈長岡京市〉
長岡天満宮とは
菅原道真が無実の罪で大宰府へと左遷される途中、「我が魂長くこの地にとどまるべし」と言い残したことがはじまりと伝えられています。
寛永15年(1638年)には桂離宮を作ったことで知られる八条宮智仁親王により、新たに溜め池の八条ヶ池が築造されました。
八条ヶ池は、堤高4.2m、堤頂長430m、外周約1km、総貯水量は35,000㎥にもなる乙訓エリア最大級の溜池です。今も農業用水の水源として活躍中です。
八条ヶ池の中央を貫く参道には、樹齢百数十年というキリシマツツジが植えられています。
4月末から5月初めにかけて参道を真っ赤に彩ります。
おすすめポイント
長岡天満宮は、今回の15選中唯一の神社からの入選です。
長岡天満宮の東側にある八条ヶ池は、蓮の花だけでなく水生植物の宝庫です。
八条ヶ池の北東部にある水上橋の周囲では、多くの水生植物を楽しむことができます。
池の中では初夏からカキツバタ(杜若)、キショウブ(黄菖蒲)、コウホネ(河骨)、ハナショウブ(花菖蒲)、スイレン(睡蓮)などが、池の畦ではアヤメ(菖蒲)やハンゲショウ(半夏生)などが順次咲きます。
そして夏本番を迎えると、蓮の花が見頃を迎えます。
八条ヶ池に咲く蓮の花は、長岡京市の友好都市である寧波(にんぽー)市から贈られた西湖紅蓮です。
1996年に約150株の西湖紅蓮が、寧波市から贈られてきました。今は300株まで増えました。
中国屈指の景勝地として知られ、世界文化遺産にも登録されている西湖に由来する蓮なのでしょう。西湖は寧波市の近くです。
西湖紅蓮は「さいここうれん」と読みます。
一般には、紅蓮と書いて「ぐれん」と読みますが、蓮の品種名として使われるときは、普通「こうれん」と読みます。「ぐれん」は紅蓮地獄のように仏教用語として使われます。
なお白蓮は蓮の品種名の場合も「はくれん」と「びゃくれん」の両方の場合があります。
蓮の花弁の縁が薄いピンク色、内側が白色の美しい蓮の花です。葉の香りが際立って良い品種としても知られます。
大永3年(1523年)の寧波の乱で知られる港湾都市です。を送ってくれた寧波は、上海の南側にある都市です。かつては遣唐使が目指した歴史ある港町です。
勘合貿易の利権を巡って大内氏と細川氏が争った大永3年(1523年)の寧波の乱で知られます。
1983年に長岡京市と友好都市盟約が締結されました。遅れて益田市(島根県)と上田市(長野県)も友好交流都市になっています。
八条ヶ池の西湖紅蓮の見頃は7月上旬~下旬ごろです。
八条ヶ池で蓮の花が主に見られるのは、西北部の中の島を挟んだ西池部分です。
安永9年(1780年)刊行の都名所図会では、中の島や西池はありません。
中央参道は部分的に松が植えられているだけで、キリシマツツジもありません。今のキリシマツツジは樹齢170年ほどなので、植えられたのは都名所図会が刊行されてから数十年後ということになります。
拝観情報
拝観時間 | 日中随時 |
拝観料 | 境内自由 八条ヶ池の水上橋開門は7:00~18:00 (10月~3月は8:00~17:00) |
TEL | 075-951-1025 |
住所 | 京都府長岡京市天神2丁目15-13 |
アクセス | 阪急「長岡天神」より徒歩10分 |
公式ホームページ:長岡天満宮 | 学問の神様
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洛中の蓮おすすめスポット4選
① 東本願寺(ひがしほんがんじ)〈下京区〉
東本願寺とは
正式には真宗本廟(ほんびょう)という、真宗大谷派の本山寺院です。
末寺は8,500ヶ寺といい、西本願寺と並んで日本でも有数の大教団の中心です。
境内には御影堂や阿弥陀堂など巨大な建造物がずらりと並んでいます。
1895年に再建された御影堂は、京都のみならず日本でも最大級の木造建築として知られます。
渡り廊下には、再建工事に使用した髪の毛を編み込んだ「毛綱」が展示されています。
東本願寺・南周濠の蓮(淀姫) 見頃 2016年7月17日 撮影:MKタクシー
おすすめポイント
京都駅前すぐにある広大な東本願寺ですが、蓮の花が見られるのは境内ではなくすぐ南側の壁沿いにある周濠の中です。
それほど大きくはない周濠ですが、蓮の花が密生しています。
京都駅からすぐという交通至便なところにありながら、蓮の穴場として知る人ぞ知る存在です。
蓮の花が咲く周濠は、まるで東本願寺を守る堀のようです。
本願寺と言えば石山本願寺や山科本願寺など戦国大名の城郭に匹敵する規模の寺院が有名です。
しかし、この周濠は明治に入って防火用水として設けられたものです。
1950年に京都駅舎が火災により焼失した際には、東本願寺の周濠から取水して放水しました。
かつての水源は琵琶湖疎水でした。
蹴上の水源地から、高低差を利用して東本願寺へとひかれた本願寺水道として知られます。
ほとんど地下を通りますが、鴨川を渡る部分では、五条大橋の橋げた下を水道管が通っているのを見ることができます。
本願寺水道は1897年に完成し、老朽化により2008年に停水されました。
東本願寺の蓮の花が見頃を迎えるのは、7月中旬~下旬ごろで、ちょうど祇園祭の宵山や山鉾巡行のころです。
宵山や山鉾巡行の前に東本願寺の蓮の花を見てから祇園祭へと向かうことも多いです。
京都駅からもたった7分ですので、京都駅で空き時間ができたときには、蓮の花見物に是非訪ねてみてください。
蓮の花が咲いている南周濠は東本願寺の外側にあります。
拝観時間外でもいつでも蓮の花を見ることができます。
淀城由来の蓮「淀姫」
淀城の堀に咲く桃一重大型有条の蓮の花は、固有種として「淀姫」と名づけられました。
淀の姫と言えば、豊臣秀吉の側室である淀殿(茶々)を思い浮かべるでしょう。
実際、茶々は淀城を与えられたことから淀殿、淀の方と呼ばれるようになりました。
しかし、蓮の淀姫は淀殿とは直接関係ありません。いずれも淀という地名を介した間接的な関係があるのみです。
淀姫とは、淀城主の稲葉氏が淀姫川に蓮の花を植えたことに由来する名称です。
淀姫川が今の桂川の淀付近での別名です。淀姫とは、淀の産土神である與杼(よど)神社の別名である淀姫社、淀姫大明神のことです。肥前国一宮の與止日女神社を勧請したものと伝えられています。
今は淀城の本丸に位置する與杼神社ですが、明治期の河川改修までは桂川の右岸(北岸)の納所から舟渡しで桂川(淀姫川)を渡ったところに位置していました。
なお淀殿は淀城を居城として与えられたことが由来ですが、今の淀城より500mほど北の納所にありました。
稲葉氏が淀城が廃城になったあとの1885年に植えられた蓮が起源ではないかとされています。
石垣修復工事の影響や、アカミミガメの食害によってでいったん蓮の花は姿を消しましたが、淀観光協会によって蓮の花復活の取り組みが進められています。
2019年に堀の一部に宇治市植物公園から譲られた淀姫があらためて植栽されました。
7月下旬を中心に、比較的長期間開花が続くのが特徴の蓮の花です。
拝観情報
拝観時間 | 3月~10月 5:50~17:30 11月~2月 6:20~16:30 南周濠は日中随時エリア |
拝観料 | 境内自由 |
TEL | 075-371-9181 |
住所 | 京都市下京区烏丸七条上ル |
アクセス | 地下鉄「五条」より徒歩5分 JR「京都」より徒歩7分 |
公式ホームページ:東本願寺
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② 相国寺(しょうこくじ)〈上京区〉
相国寺とは
相国寺とは、開基である太政大臣(相国)の足利義満に由来します。
京都五山の第二位として高い格式を誇り、創建当初は高さ100mを超えるという巨大な七重大塔が聳えていました。
京都のシンボルとして知られる東寺五重塔の約2倍という、驚くべき高さです。
有名な金閣寺と銀閣寺も、相国寺の境外塔頭(けいがいたっちゅう)という位置づけにある、京都の仏教界でも重要な寺院です。
1984年に開館した境内にある承天閣(じょうてんかく)美術館は、伊藤若冲(じゃくちゅう)の作品などの所蔵で知られます。
おすすめポイント
相国寺で蓮の花が見られるのは、境内南側にある放生池(ほうじょうち)です。
別名功徳池とも、単に蓮池とも言われる池です。
池を渡る石橋は天界橋と言います。
天文20年(1551年)に京都の覇権を巡って三好長慶方が細川晴元方を破った相国寺の戦いが繰り広げられました。まさに石橋を挟んで激戦が繰り広げられたため、石橋の戦いとも言われています。
この戦いで相国寺の伽藍は炎上しました。
放生池では、池の中だけではなく周囲に鉢植えの蓮も並べられています。
普段はフェンスで放生池は囲まれていますが、蓮の花のシーズンはフェンスの一部を取り除いて蓮の花が見やすくしてくれています。
放生池の中だけでなく、周囲にも鉢植えの蓮がずらりと並べられています。
中国産の品種である楚天祥雲(そてんしょううん)や、古代蓮として有名な大賀蓮など、様々な品種の蓮の花が植えられています。
相国寺放生池の蓮の花の見頃は7月中旬~8月上旬ごろです。
都名所図会で描かれた相国寺では、功徳池と書かれた今の放生池の中に葉らしきものが描かれています。
おそらく蓮の葉を描いたものでしょう。
江戸時代から相国寺では蓮が咲いていたのです。
なお、放生池のすぐ右側(北側)には、立派な三門(山門)が描かれています。
この三門は、慶長14年(1609年)建てられたものですが、天明8年(1788年)に天明の大火で焼失してしまいました。
今は基壇と礎石が残るのみです。
さらに遡って寛文7年(1667年)刊行の「京童後追」では、放生池に立派な蓮の姿が描かれています。
拝観情報
拝観期間 | 春と秋の特別拝観のみ 放生池のある前庭は境内自由エリア |
TEL | 075-231-0301 |
住所 | 京都市上京区相国寺門前町701 |
アクセス | 地下鉄「今出川」より4分 |
公式ホームページ:相国寺 | 臨済宗相国寺派
③ 革堂 行願寺(こうどう ぎょうがんじ)〈中京区〉
革堂行願寺とは
西国三十三ヶ所観音霊場の第19番札所で、今も多くの巡礼者が訪れるお寺です。
寿老人を祀った都七福神のひとつでもあり、一月には多くの参拝客が集まります。
寛弘元年(1004年)に革聖/皮聖(かわのひじり)と言われた行円によって創建されたと伝えられています。
正式には行願寺と言いますが、革聖ゆかりのお寺ということで、一般には革堂と呼ばれます。
今も門前に「一条革堂」という碑があるとおり、かつては一条通沿いにありました。
豊臣秀吉の京都改造時に、寺町通へと移転し、宝永5年(1708年)に現在地へと移りました。今も旧地には革堂町という町名が残っています。
度々焼失の記録が残り、今の本堂は文化12年(1815年)の建立です。
おすすめポイント
京都の中心部にあり、境内は広くはありませんが、夏には鉢植えの蓮の花が並びます。
本堂前の参道はもちろん、庫裏前から寿老人神堂などの前まで蓮の花が並び、境内は蓮の花で埋め尽くされる感があります。
以前から境内には猫があちこちにいるお寺ですが、最近は猫のお寺としても売り出し中です。
鉢植えの蓮の間のあちこちで猫が顔を出しているかもしれません。
蓮の間を良く探してみて下さい。
9月に入り、蓮の花の季節が終ると鉢植えの蓮に代わって鉢植えの藤袴が並び始めます。
たくさんあった蓮の鉢植えはいったいどこに行ったんだろうか?といつも思います。
拝観情報
拝観時間 | 8:00~16:30 |
拝観料 | 境内自由 |
TEL | 075-211-2770 |
住所 | 京都市中京区寺町通竹屋町上ル行願寺門前町 |
アクセス | 京阪「神宮丸太町」より徒歩10分 |
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④ 立本寺(りゅうほんじ)〈上京区〉
立本寺とは
日蓮宗八本山のひとつです。
山号は西龍華具足山といい、妙顕寺、妙覚寺とあわせて「龍華の三具足(りゅうげのみつぐそく)」と称されれます。
境内には正行院、教法院、光源院、大輪院の四つの塔頭寺院があります。
元亨元年(1321年)の創建以来、移転を繰り返し、宝永5年(1708年)に現在地へと移転しました。
移転前の寺町今出川には、立本寺前町という町名が残っています。
本堂北側の築山枯山水庭園「龍華苑」は京都市の指定名勝で、2011年に修復が完了しました。
六道珍皇寺や蓮台野と同じような幽霊子育て飴伝説が残ります。
墓地には、石田三成の片腕として知られる島左近の墓があります。
おすすめポイント
いずれも京都市の有形文化財に指定されている本堂、祖師道、鬼子母神堂で囲まれた部分に、鉢植えの蓮がずらりと並びます。
約60個の鉢が並び見事ですが、蓮の花を見に訪れる人はあまり多くはありません。
庭園は拝観料が必要ですが、蓮の花が咲くのは境内無料エリアです。
朝夕には、本堂からは朗々とお経と木柾(もくしょう)の音が響いてきます。
日蓮にも「蓮」の文字が含まれますが、法華経の「如蓮華在水(蓮華の水に在るが如し)」から採ったものです。
やはりもとは蓮の花に由来するものです。蓮の花を楽しめる京都の日蓮宗寺院といえば、立本寺が代表です。
立本寺の蓮の花の見頃は7月ごろです。
拝観情報
拝観時間 | 9:00~16:30 |
拝観料 | 境内自由 本堂、庭園は800円(要予約・茶菓付き) |
TEL | 075‐461‐6516 |
住所 | 京都市上京区七本松通仁和寺街道上る一番町1073 |
アクセス | 嵐電「北野白梅町」より徒歩15分 |
公式ホームページ:西龍華具足山 立本寺|日蓮宗 寺院ページ
洛南の蓮おすすめスポット
① 東寺(とうじ)〈南区〉
東寺とは
正式には教王護国寺といい、平安京造営時から伽藍の位置が変わっていない寺院です。
弘仁14年(823年)に弘法大師空海へと与えられ、以後京都における真言宗の中心寺院として発展してきました。
京都のシンボルともいえる高さ55mの五重塔は、創建以来何度も焼失・倒壊しましたがその都度再建されました。
正保元年(1644年)再建の今の五重塔は五代目にあたります。
弘法大師の命日である毎月21日には「弘法市」という縁日が開かれます。
境内には京都中から集まった多くの骨董屋などが立ち並び、大いににぎわいます。
おすすめポイント
東寺で蓮の花が見られるのは、境内北東部にある宝蔵の周囲です。
校倉造(あぜくらづくり)の宝蔵は、東寺でも最古の建造物です。
その名のとおり、同じ校倉造の正倉院と同じく大切な宝の倉庫として用いられてきました。
宝蔵内には、東寺創建以来の鎮護国家の修法に用いられてきた重宝類が収蔵されていました。
かの有名な両界曼荼羅図も宝蔵に収蔵されて伝来してきました。
東寺では何種類かの蓮の花が植えられていますが、もっとも多いのは漁山紅蓮(ぎょざんこうれん)です。
ピンク色の一重から半八重の蓮です。通常は一重ですが、肥沃なところで花弁が増えて半八重になります。東寺は半八重に近いので、蓮にとっては居心地よい環境なのでしょう。
開花すると比較的早く白くなっていくのが特徴です。漁山紅蓮は、古代蓮として知られる大賀蓮と混同されることがよくあります。
見頃は7月中旬~8月中旬ごろです。
一重や八重の数品種ある蓮の花が比較的長期間にわたって咲きます。
蓮の花が見頃の時期には、周囲の駐車場ではかぐわしい香りが漂います。
宝蔵の蓮がちらほらと咲きはじめた2023年の6月中旬。
蓮の葉の間にカルガモの親子がいました。
4羽のカルガモのひながとってもかわいらしいですね。
ひなたちはとっても楽しそうに遊んでいます。
2023年はしばらくカルガモの親子が見られるのでしょうか。
池のほとりには、「小野道風ゆかりの柳」という柳があります。
あるとき、この池のほとりを歩いていた小野道風は、柳に飛びつこうと何度も飛び跳ねている蛙を見つけました。
何度跳んでも柳に飛びつけませんでしたが、蛙はついに柳に飛びつくことに成功します。
これを見た小野道風は何事もあきらめることなく繰り返し努力をすることで目的を達成できるということに気づきました。
以来、小野道風は学問や書道に努め、後世にまで名を残すような立派な人物になりましたというエピソードです。
歌舞伎の「小野道風青柳硯」や花札の「柳に小野道風」などで知られます。
このエピソードの舞台となったのが、ここにあった柳だというのです。
事実かどうかは不明ですが、努力を続けることは大切ですね。
東寺の境内の西端の壬生通沿いには、「蓮花門」という名前の国宝指定された門があります。鎌倉時代に建てられた八脚門です。
蓮花門という名称の由来は、弘法大師が晩年に当時から高野山へと向かう際、この門に別れを惜しんだ不動明王が現れて見送りました。
不動明王が歩いたあとに蓮の花が咲いたため、蓮花門と呼ばれるようになったと伝わります。
今は蓮花門の外は壬生通の車道と歩道になっています。1872年の写真では、蓮花門の外側にも堀がありたくさんの蓮が群生している姿が写っています。
不動明王の足跡から生まれた蓮の花なのでしょうか。
拝観情報
拝観時間 | 開門/5:00~17:00 金堂・講堂/8:00~17:00(受付は16:30) |
拝観料 (金堂・講堂) | 大人 500円 高校生 400円 中学生以下300円 宝蔵の周囲は境内自由エリア |
TEL | 075-691-3325 |
住所 | 京都市南区九条町1番地 |
アクセス | 近鉄京都線「東寺」より徒歩5分 市バス「東寺南門前」・「東寺東門前」より徒歩すぐ |
公式ホームページ:東寺 – 世界遺産 真言宗総本山 教王護国寺
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洛北の蓮おすすめスポット
① 京都府立植物園〈左京区〉
入園情報
休園日 | 12月28日~1月4日 |
入園時間 | 9:00~17:00(受付終了は16:00) 2024年7月5日(金)~7日(日)、20日(土)、21日(日)、26日(金)~28日(日)、8月10日(土)、11日(日)は7:30開園 2024年8月1日(木)~5日(月)は7:00開園 |
入園料 | 一般 :200円 高校生 :150円 中学生以下:無料 |
TEL | 075-701-0141 |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町 |
アクセス | 地下鉄「北山」よりすぐ |
観蓮会~蓮を楽しむ3日間~
開催期間 | 2024年7月5日(金)~7日(日) |
開催時間 | 8:00~45(受付は7:45から) 開園時間は7:30 |
参加料 | 無料(別途要入園料) |
公式ホームページ:京都府立植物園 Kyoto Botanical Gardens/京都府ホームページ
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洛東の蓮おすすめスポット3選
① 大蓮寺(だいれんじ)〈左京区〉
大蓮寺とは
大蓮寺は江戸時代創建の寺院です。戦争中の1944年に京都で行われた強制疎開により、西洞院五条から現在地へと移転し、もともとこの地にあった常念寺と合併しました。
旧地は五条通の一部とフレスコ五条西洞院店兼本社になっています。
古くから安産祈願の寺として京都市民から篤い信仰を集めています。
近年は、貧しい人々に走って安産の御札を配ってまわった「走り坊主」こと簱玄教(はた げんきょう)にちなみ、足腰健常のご利益でも人気を集めています。
おすすめポイント
蓮と言えば池ですが、池がなくても鉢があればどこでも咲かせることができます。
比較的街中にある大蓮寺の境内は、池を作る敷地もありませんが、鉢植えの蓮がずらりと並びます。
寺名のとおり、大きな蓮の花がたくさん咲きます。
赤やピンク、白、黄色など多彩な色をし、一重や八重など様々な形をした、40品種を越える蓮の花が咲きます。
多彩な品種の蓮の花をすぐ目の前で楽しめるため、知る人ぞ知る京都の蓮スポットです。
こじんまりとした境内に、ところ狭しと咲き乱れる蓮の花が見事です。
大蓮寺という寺名にふさわしい蓮の花の名所です。
大蓮寺の蓮の花は開花が早めで、見頃は7月上旬~下旬ごろです。
周囲には50近くの寺院が建ち並んでいます。
大蓮寺のようにたくさん蓮が見られるお寺はありませんが、ちょこちょこ蓮の花は見られます。
周囲のお寺めぐりもおすすめです。
拝観情報
拝観時間 | 9:00~16:30 |
拝観料 | 境内自由 |
TEL | 075-771-0944 |
住所 | 京都市左京区東山二条西入1筋目下ル457 |
アクセス | 地下鉄「東山」より徒歩6分 |
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② 東福寺(とうふくじ)〈東山区〉
東福寺とは
「伽藍面(がらんづら)」と言われるとおり、巨大な建造物が立ち並ぶ寺院です。
東福寺といえば京都を代表する紅葉の名所として非常に有名です。宋から持ち帰った通天楓とも呼ばれる唐楓(トウカエデ)の鮮やかな紅葉が人気です。
京都五山の中では第四位とされますが、知名度ではおそらくナンバーワンです。
おすすめポイント
東福寺で蓮の花が見られるのは、境内の南側にある思遠池(しおんち)です。
思遠池は東福寺の名所である「東福寺十境」のひとつに選ばれています。
蓮のすぐ裏側にあるのが、禅宗寺院としては日本でも最古にして最大の三門です。
風格ある門を前に清らかな蓮の花が咲く姿は見事です。
普段は非公開ですが、定期的に京都非公開文化財公開で特別公開されます。
見頃は7月中旬から8月中旬ごろです。
放生池以外でも、庫裏前などで鉢植えの蓮の花を見られます。
都名所図会でも、右端に思遠池が描かれています。
池の中には蓮の葉らしきものが並んでいます。
江戸時代から東福寺は秋は紅葉、夏は蓮の名所だったのでしょう。
拝観情報
拝観時間 | 4~10月 9:00~16:30(受付は16:00) 11月~12月第一日曜日 8:30~16:30(受付は16:00) 12月第一日曜日~3月 9:00~16:00(受付は15:30) |
拝観料 | 大人 400円 小中学生 300円 |
TEL | 075-561-0087 |
住所 | 京都市東山区本町15丁目778 |
アクセス | 京阪「鳥羽街道」より徒歩7分 芙蓉の咲く南大門の場合 |
公式ホームページ:臨済宗大本山 東福寺 -日本最古の最大級の伽藍-
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③ 法住寺〈東山区〉
法住寺とは
今は小さなお寺の法住寺ですが、かつては広大な寺院でした。
法住寺を中心に、後白河院の宮廷である法住寺殿が営まれたました。
後白河院の崩御後は、後白河天皇陵を護持するお寺として続きました。
明治維新後は、後白河天皇陵は政府の管轄となり、分離されました。
1月15日の大根炊き、3月3日前後のの吊り雛展、11月15日の身代わり不動尊大祭、12月14日の義士大祭などが行事が行われます。
般若心経の写経を体験できる寺院としても人気です。納経料は1,500円です。
おすすめポイント
法住寺の本堂前で、鉢植えの蓮の花が並べられます。
蓮の花は6月下旬から咲きはじめ、7月に見頃を迎えます。
やや早咲きの蓮の花で、7月下旬には散り始めます。
写経の寺としても知られる法住寺では、梅雨シーズンに「蓮写経」が行われます。
2024年で8回目の開催となります。
蓮は、夜間に余分な水分を排出するときに、葉先の水孔から水を出します。これを溢泌液(いっぴつえき)と言います。
この水を集めて墨をすると、書が上達するという言い伝えがあります。
法住寺では、蓮の葉にたまった雨水を使ってすった墨で写経を行います。
受付でスポイトを渡され、自ら蓮の葉から雨水をとってきて墨をすります。
そのため、蓮の葉に雨がたまっている日限定になります。
期間も限定されており、2024年は6月15日(土)から始まりました。
例年は梅雨明けとともに終了ですが、2022年は梅雨が観測史上最短で終わってしまったため、しばらく延長されました。
受付は9:00、11:00、13:00、15:00に各10名限定で、通常の写経と異なり予約はできません。ご住職による御朱印付きで納経料は2,500円になります。
拝観情報
拝観時間 | 9:00~16:30 |
拝観料 | 境内自由 |
TEL | 075-561-4137 |
住所 | 京都市三十三間堂廻り町655 |
アクセス | 京阪「七条」より徒歩8分 |
蓮写経
開催期間 | 2024年6月15日(土)~梅雨明け |
開催時間 | 9:00、11:00、13:00、15:00 |
納経料 | 2,500円 |
公式ホームページ:後白河法皇御所聖跡 天台宗 法住寺
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宇治以南の蓮おすすめスポット2選
① 宇治市植物公園〈宇治市〉
宇治市植物公園とは
宇治南部の丘陵上に広がる約10ヘクタールの植物園です。
園内は春や秋など季節ごとのゾーンにわけられており、四季折々の景色を楽しむことができます。
春には桜のライトアップ、夏にはホタルの夜間開園や蓮の花の早朝開園が行われるなど、様々なイベントや展覧会が開かれます。
おすすめポイント
宇治市植物公園には、かつて日本を代表する蓮の花の名所だった巨椋池(おぐらいけ)に由来する品種が多数保存されています。
かつて宇治市の西部から久御山町東部、伏見区南部にまたがっていた周囲16kmの巨大な巨椋池は、蓮の花の名所として知られました。
1928年に奈良電(現:近鉄京都線)が開通してからは、夏には車窓から巨椋池に咲く蓮を眺めることができました。
宇治市史には、お盆の時期には臨時停車して池畔に降りた車掌が乗客の分の蓮の花を摘んできたという嘘みたいな本当の話しが記載されています。
しかし、食料増産のために干拓事業が行われ、1941年に巨椋池は消滅しました。
今も巨椋池に咲いていた蓮の花の品種の整理や保存が進められており、65品種が残されています。
弥生時代の遺跡から発掘された蓮の種から生まれた大賀蓮がよく知られるとおり、蓮の種は長期間休眠状態で生き続けます。
今も田んぼのなかからかつて巨椋池の底に埋もれていた蓮の種が発芽することがあります。
宇治市植物公園では、それらの巨椋池にあった蓮の花の多くを収集・維持しています。
夏には修景池の西側や観覧温室前で、鉢植えの蓮の花が展示されます。
巨椋池の蓮の品種の特徴は、多彩な系統の品種があることです。古くから蓮の名所として知られた巨椋池では、他から美しい花を咲かせる品種が次々と持ち込まれたことを示しています。
珍しい双頭蓮もあります。
1本の茎から2つの花を咲かせる蓮です。
非常に珍しいことから、見つけると幸せを呼ぶとも言われています。
宇治市植物公園でおすすめなのが、毎年7月半ばに行われる「観蓮会」です。
法金剛院は「かんれんえ」ですが、宇治市植物公園は「かんれんかい」と読みます。
「え」は呉音、「かい」は漢音です。呉音は仏教用語としてよく使われています。前者は宗教行事としての観蓮会で、後者は蓮を観る会としての観蓮会なのでしょう。
象鼻杯、蓮茶の呈茶、蓮ヨガ、蓮案内も開催予定です。
2024年の観蓮会は7月13日(土)・14日(日)・15日(月祝)の三連休に開催されます。
毎日朝7:30からは蓮案内が行われます。
開門の7時に到着するには、路線バスだと始発に乗る必要がありますが、それだけの価値はあります。
蓮が最も美しい時間帯をゆっくりと楽しむことができます。
あわせて「巨椋池の蓮展」が2024年6月29日(土)~7月28日(日)が開催されます。
巨椋池由来の蓮が約80品種、その他の蓮が約80品種、あわせて200鉢もの蓮が展示されます。
見頃は7月中旬~8月上旬ごろです。
ナショナルコレクションに認定された京都の蓮
2017年に、公益社団法人 日本植物園協会は「野生種、栽培種に関わらず、日本で栽培されている文化財、遺伝資源として貴重な植物を守り後世に伝えていく」ことを目的とした「ナショナルコレクション認定制度を始めました。
このナショナルコレクションに、京都の2つの蓮コレクションが認定されています。
まず、2018年12月10日に第3号としてナショナルコレクションに認定されたのが、宇治市植物公園の「巨椋池由来のハス」です。
かつて蓮の名所として知られた巨椋池(おぐらいけ)から収集された54品種の蓮が認定を受けました。
続いて。2022年3月14日に京都府立植物園の「野生のハスおよびキバナハスのコレクション」がナショナルコレクションの第11号として認定されました。
2006年より収集を始めたハスとキバナハスの19系統121個体が、ハスの原種の特性や分布拡大の謎を解明する上で重要であることが評価されたためです。
宇治市植物公園のナショナルコレクションが、地元京都の蓮であるのに対し、京都府立植物園のナショナルコレクションは、アムール川、オーストラリア、北アメリカで収集されてきた自生の蓮が対象となっています。
ちなみにナショナルコレクションの認定第1号は「武田薬品京都薬用植物園命名ツバキ品種群」です。
ここで新品種として命名された121品種がコレクションとして認定されました。
通常は一般公開されていないので、あまり知名度は高くありませんが、曼殊院のすぐ南側にあるので近くを通ったことがある人は多いでしょう。
京都関係のナショナルコレクションは、武田薬品京都薬用植物園のツバキと、宇治市植物公園の蓮、京都府立植物園の蓮と「アマミアセビとリュウキュウアセビの遺伝資源コレクション」の4件です。
全部で14件あるナショナルコレクションのうち4件が京都府で、うち2件が蓮で占められています。
ナショナルコレクションに認定されている蓮は、京都の2件だけです。
ナショナルコレクションには、認定期間があります。
一度認定されたら終わりではなく、認定は5年限りです。
今後も宇治市植物公園と京都府立植物園の蓮コレクションが、繰り返しナショナルコレクションに認定されて欲しいですね。
宇治市植物公園の観蓮会
朝7時からの観蓮会
京都で早朝から蓮の楽しめる「観蓮会」。
宇治市植物公園で開かれる2022年7月18日(月祝)の観蓮会(かんれんかい)に参加してきました。
宇治市植物公園の観蓮会は、朝7時からです。
京都府立植物園や法金剛院の7:30よりさらに30分早い開始です。
観蓮会の会場は、修景池付近です。
入口付近の緑の館と観覧温室の間にも多数の鉢植えの蓮が並んでいますが、そこではないのでご注意を。
修景池付近にテントがあり、観蓮会の受付です。
宇治市植物公園の観蓮会の目玉は、蓮の案内と象鼻杯です。
職員が修景池の周りをまわりながら蓮の説明をしてくれるます。
そして、先着30名と人数が限られているのが象鼻杯です。
2022年は京都府立植物園で例年行われていた象鼻杯も中止となったので、貴重です。
蓮の案内が始まる7:30ごろにはまだ空きがありましたが、象鼻杯が始まる8時には既にいっぱいになっていました。
7:27時点でNo.16と書かれた整理券をゲットしました。
どうしても象鼻杯を体験してみたいという方は、お早めに。
蓮案内
まずは7:30からの蓮の案内。特に人数制限はありませんが、この日は20名ほどの参加でした。
鉢植えの蓮をめぐりながら、蓮についてあれこれと説明いただきます。
蓮には多くの品種があり、それぞれに特徴があります。
品種を見分けるのにまず重要なのは、花の色、形、サイズです。
同じように大事なのは、葉や茎の特徴です。
蓮の葉の手触りはざらざらしていたりつるつるしていたり、品種によってさまざまです。
蓮の茎には小さなとげとげがあります。とげとげの密度や大きさ、色なども品種を識別するのに重要です。
宇治市植物公園では、かつて宇治市、久御山町、京都市にまたがっていた巨椋池由来の蓮の品種を収集しています。
2019年にはこの蓮の品種コレクションが評価され、ナショナルコレクションに認定されました。
ナショナルコレクションに認定された蓮の品種は、案内板の下部に白いシールが貼られています。
鉢植えの蓮は、すべて毎年植え替えを行います。
植え替え時には種となるレンコンをより分け、余ったレンコンは修景池に植えています。
毎年修景池にはたくさんのレンコンが植えられていますが、ガマやアシの方が強いようで、年々蓮の花は減ってきています。
蓮の葉に注いだお酒を飲む「象花杯」
蓮案内が終わると、いよいよ8時から象鼻杯です。
象鼻杯とは、蓮の葉に注いだお酒を茎の端からストローのように飲むという優雅な飲み方です。
蓮の葉で飲むのは全て象鼻杯と言われることもありますが、厳密には高さによっては「碧筒杯」と言います。
象鼻杯体験は、日本酒と炭酸水を選ぶことができます。
日本酒は100円、炭酸水は50円の体験料が必要です。
もちろん、車を運転する人は炭酸水限定です。
象鼻杯に使われる日本酒は、地元城陽酒造の純米酒です。
京都府産の酒造米「五百万石」を100%使用した贅沢な純米酒です。
一升瓶で2,530円なので高価なお酒とまでは言いませんが、なかなかのチョイスです。
象鼻杯に使われる蓮の葉です。
今朝宇治市植物公園でとれたばかりのみずみずしい葉です。
葉の真ん中部分には、水が通りやすいようにあらかじめ楊枝で穴があけられています。
この中央の部分は荷鼻(かび)と言います。
楊枝で穴をあける前も小さな穴が開いており、ここを通じて呼吸をしています。
その空気の通り道を通ったお酒を飲むのが象鼻杯です。
この穴は地下茎までつながっています。
まさにレンコンの穴が荷鼻につながっているのです。
象鼻杯に挑戦。
蓮の葉に注いでもらったお酒をこぼさないようにするのが大変です。
茎が結構固いので、バランスをとるためにはどうしても象鼻杯ではなく碧筒杯になってしまいます。
ロータス効果でお酒が葉の上をコロコロと転がり、上手に飲むのはとても難しいです。
肝心の味の方はと言うと、普通のお酒の味です。
茎を通ることによって、ほろ苦い清涼感のある味がするとのことですが、よくわかりませんでした。
味よりも、茎を通る間にお酒と空気が混じって泡状になってしまい飲みにくいです。
穴の半分だけ水中につけてストローを吸っているのと同じです。
おいしいかというとやや疑問ですが、噂の象鼻杯(碧筒杯?)を体験できて大満足。
蓮の葉からできた「蓮茶」
観蓮会では、蓮茶の試飲もあります。
蓮茶は蓮の葉や花、種などを原料にしたいろいろな種類がありますが、観蓮会では蓮の葉を使った蓮茶です。
少し年度があり、少しだけ甘いお茶です。
甘茶と麦茶を混ぜたような味のお茶でした。
宇治市植物公園に朝7時過ぎに行くのはなかなか大変かもしれませんが、是非一度宇治市植物公園の観蓮会を訪れてみましょう。
多くの文人墨客に愛された巨椋池の蓮
1941年に干拓されるまで、京都の南部に広がっていた周囲16キロメートルの大きな湖沼である巨椋池は、蓮の花の名所として知られました。
明治以降の淀川改良工事により、巨椋池と宇治川は段階的に切り離され、遊水地としての機能を失った独立した池となりました。
巨椋池は水位の変動が少ない流れの少ない池となり、水深もしだいに浅くなりました。
改良工事の進展とともに、巨椋池の植物は変化が生じ始めました。
以前より蓮は巨椋池の名物として知られてはいましたが、蓮が分布するのは広大な巨椋池のなかでも北側の限られたエリアでした。
それが改修工事後は平均水深は1メートルほどで蓮が生育するのに最適な環境となり、巨椋池の全域へと蓮が広がっていきました。
1907年には40艘の蓮見舟があり、1人10銭で巨椋池の蓮見をすることができました。
また観蓮席も設けられ、弁当や酒・ビールなどだけでなく、川魚料理を食べながら蓮を楽しむことができました。
和辻哲郎「巨椋池の蓮」
かつての巨椋池での蓮見の様子は、和辻哲郎の随想「巨椋池の蓮」を読めばよくわかります。
巨椋池のまん中で、咲きそろっている蓮の花をながめたときには、私は心の底から驚いた。蓮の花というものがこれほどまでに不思議な美しさを持っていようとは、実際予期していなかったのである。
蓮の花以外の形象をことごとく取り除いて、純粋にただ蓮の花のみの世界として見せられたのである。これは、それまでの経験からだけではとうてい想像のできない光景であった。私は全く驚嘆の情に捕えられてしまった。
この随想が綴られたのは、1950年のことです。和辻哲郎が蓮見を行ったのは、昭和はじめのことです。
1941年に干拓が完了した巨椋池は、すでにかつてのような蓮は見られなくなっていました。
随想は結語は以下のとおりです。
ところで、巨椋池のあの蓮の光景が、今でも同じように見られるかどうかは、私は知らないのである。巨椋池はその後干拓工事によって水位を何尺か下げた。前に蓮の花の咲いていた場所のうちで水田に化したところも少なくないであろう。それに伴なって蓮の栽培がどういう影響を受けたかも私は知らない。もし蓮見を希望せられる方があったら、現状を問い合わせてからにしていただきたい。
あの蓮の花の光景がもう見られなくなっているとしたら、実に残念至極のことだと思うが、しかし巨椋池はかなり広いのであるからそんなことはあるまい。
池としての巨椋池は跡形もなく消滅しましたが、今もかつての巨椋池では各所で蓮を見ることができます。
思わぬところで蓮と出会えることもあります。
かつての蓮見舟まで出た巨椋池の光景とは大きく異なるのでしょうが、少しでもかつての様子を偲ぶことができるでしょう。
堂本印象「首夏の京洛より」
堂本印象の「首夏の京洛より」にも次のように描かれています。
淀あたりから小舟を仕立て、巨椋池の蓮を見に出かける。
水棹に小波の音をしづかにたてながら、朝霧にぬれて、雨のやうな蓮の葉の滴をよけつつ、白らみそめた朝もやの大気の静けさを破って、ひと声、裂帛の羽ばたきと混じて慌てて逃れる水禽を愕かしつつ舟をすすめると白、紅、香気高く、恰度合掌をひらいたやうな浄く、美しい花の点々たるつらなり、白っぽいみどりの荷葉の上に、にげまどふかとおもはれる露の白玉、まったく浄化された夏朝の無垢の世界である。
干拓前の巨椋池は、舟から蓮を楽しむ「蓮見舟」が一日に何十隻も出るほどの盛況でした。
蓮見舟では、お酒やビールに蓮飯などの弁当から川魚料理なども注文可能でした。
蓮見は早朝が最も人気のため、前日から観月橋付近の宿には多くの蓮見客が泊まり込みました。
巨椋池は土砂によって埋め立てられたのではなく、池の水を排水する干拓が行われました。
池の土壌はそのまま残されたため、池が消滅したあとも、各地で蓮が発芽しました。
縄文時代の種から発芽したという大賀蓮が有名なように、蓮の種の寿命は驚くほど長いです。
巨椋池に由来する蓮の品種
巨椋池で採取された花蓮は、現在65品種あります。
宇治市植物公園では、巨椋池に由来する多くの品種を保全するため、蓮の花の栽培展示を行っています。
巨椋池の蓮は、今も残る品種も様々な色、形があります。
文献資料などの記録からも、多彩な花の蓮が見られたことがわかります。
近年の遺伝子レベルの調査によっても、巨椋池の蓮が様々なタイプが含まれていたことがわかっています。
特定の巨椋池系の蓮の花があるわけではなく、各地かあらいろいろな蓮の花が持ち込まれて自生化していたのです。
巨椋池の蓮を系統的に今に伝えるのに大きく貢献したのが、内田又夫さんです。
「世界でハスの花を一番愛した男」と称される人物です。
蓮で知られた巨椋池ですが、干拓前に掘りあげられた品種は「巨椋斑(おぐらまだら)」だけでした。
内田氏は、巨椋池の蓮を伝えるべく、干拓地をくまなくめぐって蓮の実や芽の収集を行いました。集めた約100系統の蓮の品種は、久御山町東一口(ひがしいもあらい)に内田蓮園といわれる蓮園を作りました。
1982年に「巨椋池の蓮保存会」を結成し、巨椋池の蓮の普及活動を行いました。
全国各地へと巨椋池由来の蓮を無償で配布し、栽培指導を行ってきました。
保存会は1993年に「京都花蓮研究会」へと発展し、2005年に内田氏が亡くなられたあとも、後継者たちによって巨椋池の蓮の保存・普及活動が活発に行われています。
巨椋池由来の蓮の品種名は「巨椋」や巨椋池の旧称である「大池」が冠されていたり、巨椋池近隣の地名が付けられています。
中には「ヘリ基地」という変わった名称の蓮もあります。
これは、久御山ジャンクション付近にある京都府警のヘリ基地付近で採集されたことが名称の由来です。
入園情報
休園日 | 月曜日(祝日の場合は翌日) |
入園時間 | 9:00~17:00(受付終了は16:00) |
入園料 | 大人:600円 小人:300円 幼児:無料 |
TEL | 0774-39-9387 |
住所 | 京都府宇治市広野町八軒屋谷25-1 |
アクセス | JR「宇治」よりバス 近鉄「大久保」よりバス |
観蓮会
開催期間 | 2024年7月13日(土)~15日(月祝) |
開園時間 | 7:00開園 |
公式ホームページ:宇治市植物公園(公式ホームページ)
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② 三室戸寺(みむろとじ)〈宇治市〉
三室戸寺とは
三室戸山の山腹に広がる本山修験宗の別格本山寺院です。
西国三十三箇所の第10番札所で、四季を通じて多くの巡礼者が訪れます。
30年程前から「花の寺」として整備が進められており、毎年どんどん花が増えています。
おすすめポイント
「花の寺」とも言われる三室戸寺の真夏の主役は蓮の花です。
山腹の高台にある本堂前から三重塔前に約250鉢の鉢植えの蓮の花がずらりと並びます。
約100品種の蓮の花が一面に咲き誇る景色はまるで「浄土」のようです。
見頃は7月上旬~下旬ごろです。
7月上旬なら蓮の花だけでなくあじさいも同時に楽しめてお得です。
2024年7月13日(土)には、「ハス酒を楽しむ会」という行事が三室戸寺の本堂前で行われます。
蓮の葉に注いだ日本酒を茎から飲みます。ほろ苦い味わいで健康や長寿のご利益があると伝えられています。
朝9時から始まり、先着300名限定です。拝観料とは別に500円が必要です。
拝観情報
拝観時間 | 8:30~16:30(4月~10月) 8:30~16:00(11月~3月) 受付は30分前まで |
拝観料 | 大人 500円 小人 300円2023年7月9日(日)のあじさい園開園期間は以下 大人 1,000円 小人 500円 |
TEL | 0774-21-2067 |
住所 | 宇治市莵道滋賀谷21 |
アクセス | 京阪「三室戸」から徒歩15分 |
公式ホームページ:京都・宇治 西国第十番札所 三室戸寺
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丹波の蓮スポット
綾部の蓮
楞厳寺(りょうごんじ)
「関西花の寺二十五カ所」の札所
楞厳寺は、「関西花の寺二十五カ所」の第2番札所です。
春のミツバツツジと夏の蓮が知られるお寺です。
7月中旬から8月上旬にかけて白やピンクなど約20品種の蓮が次々と見頃を迎えます。
一時は原因不明で蓮が全滅しましたが、2013年に新たに移植した蓮が花を咲かせ、かつての美しい景色を取り戻しました。
楞厳寺の蓮を観るなら、MKトラベルの「『森の京都』綾部へ 蓮ツアー!2000年の眠りから覚めた大賀ハスの『極楽寺』・関西花の寺2番『楞厳寺』 ~綾部名店『そばの花』の手打ちそばランチ付き~」ツアーをぜひご利用ください。
拝観情報
拝観時間 | 日中随時 |
拝観料 | 境内自由 カラス襖絵の見学は志納金が必要 |
TEL | 0773-47-0043 |
住所 | 綾部市舘町楞厳寺6 |
アクセス | 舞鶴道「綾部IC」から車で10分 |
極楽寺(ごくらくじ)
たくさんの大賀蓮が咲く名所
極楽寺は、楞厳寺と並んで中丹を代表する蓮の名所として知られます。
極楽寺の蓮は、2千年の眠りから覚めた古代蓮「大賀蓮」です。
大賀一郎博士によって約2千年前の遺跡から発掘された蓮の種を植えたところ、翌1952年に出芽し、世界を驚かせました。
2千年ぶりに蘇った蓮は「大賀蓮」と名付けられました。
極楽寺では、この大賀蓮の種を早いうちに譲り受け、大賀蓮の名所として知られていました。
今や大賀蓮はどこでも見られる蓮ですが、多くの場合は純粋な大賀蓮ではありません。
多くは他の品種と取り違えられてしまったり、大賀蓮と他の品種の交雑種です。
ただでさえ希少な大賀蓮。極楽寺のように多くの大賀蓮が咲く景色は希少な存在です。
極楽寺の蓮を観るなら、MKトラベルの「『森の京都』綾部へ 蓮ツアー!2000年の眠りから覚めた大賀ハスの『極楽寺』・関西花の寺2番『楞厳寺』 ~綾部名店『そばの花』の手打ちそばランチ付き~」ツアーをぜひご利用ください。
拝観情報
拝観時間 | 日中随時 |
拝観料 | 境内自由 |
TEL | 0773-49-0720 |
住所 | 綾部市白道路町鎌倉田34 |
アクセス | 舞鶴道「綾部IC」から車で10分 |
亀岡の蓮
平の沢池
水面を覆う巨大な蓮スポット
亀岡の農業用水用のため池である平の沢池では、一面に咲き乱れる蓮を見ることができます。
江戸時代前期に作られた平の沢池は、上池、中池、下池、蓮池の4つの池の総称です。
蓮が咲くのはこのうち最も小さい蓮池です。
3ヘクタールほどの蓮池の水面が蓮で覆いつくされ、京都でも最大規模の蓮です。
府道25号線と水鳥の道の車道にも面しており、車窓からも蓮の姿を楽しむことができます。
平の沢池のもうひとつの注目点は、京都府内で唯一のオニバス(鬼蓮)の自生地であるということです。
オニバスが自生するのは、平の沢池で最も大きい下池です。
実はオニバスは蓮の仲間ではなくスイレンの仲間です。開花時期も蓮より遅いため、同時期には咲いていません。
花は咲いていませんが、平の沢池の蓮を訪れた際は、オニバスもしっかりチェックしましょう。
春の桜並木や冬に越冬で訪れる水鳥たちもおすすめです。
見学情報
見学時間 | 随時 |
見学料 | 無料 |
住所 | 亀岡市馬路町平野沢下池 |
おわりに
蓮の花が見頃を迎えるのは、夏の真っ盛りです。
暑さで知られる京都だけあって、日中に電車やバスで回るのは大変です。
蓮の花が最も美しい早朝の時間帯だと、暑さはしのげても電車やバスでは間に合いません。
そんな京都の蓮の花を見に行くときに是非ご利用いただきたいのがタクシーです。
夏の京都は、春や秋とは違い、人の少ない時期です。だからこそ凛とした古都・京都の空気を感じていただけるでしょう。
MKの観光貸切タクシーなら、暑い時期でも比較的快適に京都を巡っていただけます。
アクセスしづらい場所でもタクシーにおまかせ!
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