後七日御修法(ごしちにちみしほ) ~東寺で開催される国の安泰を祈る真言宗最高の儀式

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後七日御修法(ごしちにちみしほ) ~東寺で開催される国の安泰を祈る真言宗最高の儀式

毎年1月8日から14日に東寺で開催される、後七日御修法(ごしちにちみしほ)をご存知でしょうか?
かつては宮中で年始に鎮護国家などを祈願していた、格式高い行事です。弘法大師以来、中断を挟みながら1200年以上にわたって連綿として続いてきましたが、明治の神仏分離によって廃止され東寺で再興されました。今も儀式自体は非公開ですが、真言宗で最高の儀式として高僧方が行き来するのを見ることができます。
国の安寧を祈る行事だけに、2021年はよりいっそうの感染症対策をとった上で見学するようにしてください。

取材日は中日である2019年1月11日

後七日御修法とは

「後七日御修法修僧交名」天仁3(1110)年(出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB)
「後七日御修法修僧交名」天仁3(1110)年(出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB)

かつては宮中の正月行事として行われていた重要な行事です。
1月1日~7日を神事、1月8~14日を仏事で営んでおり、後者を後七日とよんだことが「後七日御修法」という名称の由来です。
「御修法」もいろいろな読み方がありますが、「みしほ」と読むのが通例です。御修法とは、重要な密教の加持祈祷を意味しますが、後七日御修法の略称としても使用されます。

「真言院後七日御修法請僧交名」元和9(1623)年(出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB)
「真言院後七日御修法請僧交名」元和9(1623)年(出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB)

開催される東寺だけでなく、真言宗の主要宗派が一堂に会して行われる真言宗でも最高の儀式です。
鎮護国家だけでなく、五穀豊穣や国道豊穣が祈られます。

唐の宮中で行われていた行事に起源があり、弘法大師空海が日本へと持ち帰りました。
835年に初めて営まれたのがはじまりです。
1461年から1622年まで162年間にわたる中断があったり、予定通りの日程で開催できず年末開催を余儀なくされたこともありましたが、連綿として続けられてきました。
1872年に神仏分離によって廃止され、1883年から東寺の灌頂院(かんじょういん)で復興されました。

出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB
出展:京都府立京都学・歴彩館 東寺百合文書WEB

もともと国営の鎮護国家を祈る寺院であった東寺ですが、今では大賑わいする毎月21日の弘法市からもわかるとおり、すっかり庶民の信仰が支えるお寺という印象が強くなっています。
今でも鎮護国家・国家安泰を祈る儀式である後七日御修法は、創建当初の東寺を今に伝える行事ともいえます。

2021年の後七日御修法も例年通り開催されますが、検査で陰性であった方のみが参加されます。

東寺の後七日御修法レポート

東寺・五重塔 撮影:MKタクシー
東寺・五重塔 撮影:MKタクシー

しばらくぐずついた天気でしたが、後七日御修法の中日である2019年1月11日(金)は、久々に晴れ渡りました。
五重塔と青空の気持ちの良い景色です。

後七日御修法の日程は、寒さがピークを迎える「寒の入り」と重なっているため、後七日御修法を迎えると京都の人々は本格的な寒さに備えるといいますが、今日はポカポカ陽気です。

東寺・南大門 撮影:MKタクシー
東寺・南大門 撮影:MKタクシー

東寺の正門にあたる南大門はまだ初詣仕様です。
重要文化財である南大門は、1868年に焼失したため、1895年に三十三間堂から移築されたものです。
国内でも最大の八脚門は、かつて七条通で威容を誇っていました。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

本坊前には人だかりができていますが、観光行事ではないので、一般の方の姿は少な目です。
僧衣を来た方々が大半で、早くもの厳かな雰囲気が漂います。

東寺・本坊 撮影:MKタクシー
東寺・本坊 撮影:MKタクシー

修法は7日間にわたって、1日3回行われます。1回目は10時からです
門松が飾られた本坊に赤いじゅうたんが敷かれています。
中から出てくる一行を待ちかまえています。

東寺・本坊 撮影:MKタクシー
東寺・本坊 撮影:MKタクシー

10時ちょうどになると、スピーカーから雅楽が流れだしました。
本坊から、真言宗の高僧たちが次々と出てこられます。

東寺・本坊 撮影:MKタクシー
東寺・本坊 撮影:MKタクシー

灌頂院(かんじょういん)へと、300mほどの道のりを歩いて行かれます。
木の靴でとても歩きにくそうですが、さすがにしっかりした足取りです。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

出仕者は15人と定められており、真言宗の各宗派の代表者らが次々と出てこられます。後七日御修法の出仕者に選ばれることは、大変名誉なことです。毎年この15人を誰にするかの選定は難航するそうです。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

朱傘の最後に出てこられたのが、2019年の導師である大阿を務める長谷寺(はせでら)の田代弘興化主。
長谷寺は、真言宗豊山派の総本山です。真言宗豊山派は、真言宗の中でも東寺や高野山、仁和寺、醍醐寺などを含む古義真言宗系ではなく新義真言宗系になります。智山派の智積院と同系です。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

朱傘を持った随行者は、1週間の期間中ずっと付き添ってお世話を担当します。

15組の次に、何か大切そうな箱が出てきますが、中身は何なのでしょう。法具か何かでしょうか。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

続いて、紫の法衣を来た定額僧(じょうがくそう)がたくさん出てこられます。
各宗派から選ばれた高僧方ですが、これだけの人数が揃うのは中日である今日1月11日だけです。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

15本の朱傘がゆっくりゆっくりと灌頂院へと向かっていきます。
なかなか壮観です。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

再び先頭へとまわりました。奥の門は小子房の勅使門です。
後七日御修法では、初日、中日、最終日に勅使が派遣され、勅使門が開門されます。
今日も勅使が灌頂院に参拝するために開かれるはずですが、この時間帯ではなかったようです。

現在では、勅使役は宮内庁京都事務所の所長が務めます。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

青空に朱傘が映えます。
これだけの高僧が一同に会する姿を見ることは稀でしょう。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

東寺保育園の園児たちが「南無大師遍照金剛」と唱えながら出迎えています。
ほほえましい光景です。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

見頃を迎えたサザンカの下、厳かに進みます。

奥に見えているのは、本坊の小子房です。
南北朝時代には一時天皇の御座所となったこともあります。
今の建物は1934年の再建です。
通常非公開ですが、たまに特別公開されます。
ちょうど2021年は1月16日~3月18日に公開予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、いったん延期となることが発表されています。

東寺・灌頂院東門 撮影:MKタクシー
東寺・灌頂院東門 撮影:MKタクシー

一行は、東門より灌頂院へと入っていきます。
灌頂院本体も東門も重要文化財に指定されています。

東寺・灌頂院東門 撮影:MKタクシー
東寺・灌頂院東門 撮影:MKタクシー

傘はそのままだと門をくぐれないため、いったん下に回してくぐります。
あらためて、とても大きくて立派な傘ですね。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

続々と高僧方が灌頂院へと入ります。
誰がどこのお寺の方かはわかりませんが、袈裟も少しずつ違う点も興味深いです。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

続いて定額僧が続々と通り過ぎています。
じゃっかん色味が異なりますが、ほぼ同じ袈裟を着用されています。
こんなにたくさん並ぶのは中日の今日だけです。

後七日御修法 撮影:MKタクシー
後七日御修法 撮影:MKタクシー

「後七日御修法」と書かれているお経をお持ちです。何か特別なお経なのでしょうか。
儀式で使用される法具は、弘法大師が唐から持ち帰ったものだとされます。
1200年以上前のものが今も使われていることになります。

東寺・灌頂院 撮影:MKタクシー
東寺・灌頂院 撮影:MKタクシー

堂内には胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅があり、毎年交互に修法され、今年は西院流胎蔵界立の修法とのことですが、詳細は謎に包まれています。

東寺・灌頂院 撮影:MKタクシー
東寺・灌頂院 撮影:MKタクシー

全員が門内へ入ると、早速門はがっちりと閉じられます。
灌頂院自体は、通常非公開ですが、まれに特別公開されることがあります。
この灌頂院の内部で、今まさに鎮護国家、五穀成就、国家豊饒が祈願されています。
どうか2019年が良い年でありますように。

東寺といえば、「ユネスコ 世界の記憶」にも登録された東寺百合文書(ひゃくごうもんじょ)で知られます。
中世を中心とした約千年間の25,000通にも及ぶ古文書群です。
興味がある方は、ぜひ京都府立京都学・歴彩館のサイトをご覧ください。

京都府立京都学・歴彩館:東寺百合文書WEB

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