アフガニスタンで受け継がれる現地での活動 中村哲さん死後のペシャワール会⑤|MK新聞2022年掲載記事

よみもの
アフガニスタンで受け継がれる現地での活動 中村哲さん死後のペシャワール会⑤|MK新聞2022年掲載記事

MKタクシーの車内広報誌であるMK新聞では、フリージャーナリストの加藤勝美氏及びペシャワール会より寄稿いただいた中村哲さんの記事を、2000年以来これまで30回以上にわたって掲載してきました。

中村哲医師の関連記事はこちら

アフガニスタンで受け継がれる現地での活動 中村哲さん死後のペシャワール会⑤

ペシャワール会本部から2022年4月20日付の現地活動報告が届きました。
以下、それに基づいて、現地の活動内容を紹介します。

写真① グリーンピース畑。野菜はその他豆類、トマト、キャベツ、タマネギ、イチゴ、ジャガイモなどが栽培されている(2022年3月5日)

写真① グリーンピース畑。野菜はその他豆類、トマト、キャベツ、タマネギ、イチゴ、ジャガイモなどが栽培されている(2022年3月5日)

活動地だけに希望が感じられる

アフガニスタンでは4月2日から断食月に入り、PMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス=平和医療団・日本)は、勤務時間を8時~13時に短縮し、活動を続けている。
昨年8月にタリバンが政権を握ってから、はや8ヵ月が経過したが資産凍結が続いており、現地の銀行からの活動資金引き出し制限が続き、活動資金の工面が続いている。

写真② 初めての試みとして、小規模だが栽培を始めたイチゴ。虫よけのために、ネギと組み合わせて植えている(2022年4月6日)

写真② 初めての試みとして、小規模だが栽培を始めたイチゴ。虫よけのために、ネギと組み合わせて植えている(2022年4月6日)

今年1月にやっと各地で雨が降り、降雪もあったが、ケシュマンド山脈に2月に1回だけ積雪が見られた程度で、旱魃がさらに厳しくなることが予想される中、PMSの活動地、シェイワ、ベスード、カマの各郡では例年通り小麦が実っている。
さらに、麦の刈り取り後の田植えの準備も進んでいる。生前、中村さんが「PMSの活動地のみ希望が感じられ、活動地を一歩出るとひどい旱魃だ」と話していた通り。

写真③ グリーンピースの収穫(2022年4月10日)

写真③ グリーンピースの収穫(2022年4月10日)

 

食糧配給

今年1月から2月にかけて、ナンガラハル州の6つの郡で食料の配給を行った。
資金に余裕がないので、保健局と協議のうえ、栄養失調児と妊産婦のいる家族を対象に各郡300家族と決めて実行。
ジア先生を筆頭に12名の配給チームを組んで、各郡の保健局職員とともに配給をしたが、ジャララバード市内から走る道中に目にするのは、干上がり、荒れ果てた農地だった。
PMSの活動地のように麦、野菜、果樹で青々としているところはほとんどなかったという。
タリバン支配で治安が良くなり、十数年ぶりに郡境を越えて移動ができたのは画期的なことだったという。

写真④ サツマイモ。中村医師が2018年に栽培を試みたもので、PMSの職員が種芋を維持していた。荒地で育つため、PMSでは干ばつ下の主食となるように期待を込めて栽培を継続する。目下の課題は野ネズミ対策(2022年2月26日)

写真④ サツマイモ。中村医師が2018年に栽培を試みたもので、PMSの職員が種芋を維持していた。荒地で育つため、PMSでは干ばつ下の主食となるように期待を込めて栽培を継続する。目下の課題は野ネズミ対策(2022年2月26日)

農業

今年力を入れているのは、タマネギ、トマト、グリーンピース、豆などPMSの給食で使われる野菜の栽培。
さらに、旱魃地域への配給を考えて、主食になりうる作物として、サツマイモとジャガイモが植えられた。
試験農場でさつま芋の栽培をして、良い結果が出ていたのだが、種芋の越冬が難しく、栽培が途絶えていた。
2018年に中村さんがガンベリ農場で試験栽培をして以来、小規模に継続していたのだが、ネズミによる被害で収穫はほとんど見られず、種芋が土の中に確保されていた。農地ではネズミ対策として殺鼠剤が使われていたが、中村さんは猫を飼うことにしたという(写真①、②、③、④)。

写真⑤ ダラエヌール渓谷の菜種畑を訪れたアジュマルジャン。昨年ガンベリ農場でも養蜂のために菜種を植えており、今年は採蜜を試みる予定(2022年2月23日)

写真⑤ ダラエヌール渓谷の菜種畑を訪れたアジュマルジャン。昨年ガンベリ農場でも養蜂のために菜種を植えており、今年は採蜜を試みる予定(2022年2月23日)

 

養蜂

菜種や桃などの花があるダラエヌール渓谷から、ユーカリやミカンの花が咲き始めたガンベリ農場へ巣箱を移動した。
アフガニスタン政府も養蜂を奨励している(写真⑤)。

写真⑥ バルカシコート堰完成!! 2022年2月28日にバルカシコート堰が完成。2020年12月より着工したバルカシコート堰は経済制裁により、工事中断などの困難があったが、増水期前に無事終了した。中村先生逝去後、初の堰建設であったため、現地の職員たちにとっては喜びもひとしお。完成直後に地域住民と歓声を(2022年2月28日)

写真⑥ バルカシコート堰完成!! 2022年2月28日にバルカシコート堰が完成。2020年12月より着工したバルカシコート堰は経済制裁により、工事中断などの困難があったが、増水期前に無事終了した。中村先生逝去後、初の堰建設であったため、現地の職員たちにとっては喜びもひとしお。完成直後に地域住民と歓声を(2022年2月28日)

用水路

2月28日にバルカシコート堰が完成。
小さなお菓子を配って、バルカシコートの村人と堰の完成を祝った(写真⑥)
この日、ディダール技師は「日本の技術支援チームがいつも支えてくれました。日本からの支援に感謝します」と述べ、ファヒーム技師は「中村先生がアフガニスタンの基礎を作ってくださった。武器では国は作れない。水は畑に収穫物をもたらし、人が暮らせるようになり、国ができていく」と熱く語った。
増水期を迎え、水路建設、護岸工事、植樹が行われ、通年の安定灌漑が可能となり、村の人口が増えている。
PMSは初めての取り組みとして、堰周辺の谷に蛇籠と石積みによる堤を設置する工事を進めていて、そうした堤を一つの谷に9ヵ所おいて、時々発生する鉄砲水を緩やかにする目的で、植樹も併せて行う。

写真⑦ 時を同じくしてカマⅡ用水路では、流域住民がアシャール(奉仕活動)による自発的な浚渫作業を行った。ジア医師やPMS技師たちも開始前の集会に招かれた。写真中央、住民に向かい挨拶しているのはジア医師(2022年3月12日)

写真⑦ 時を同じくしてカマⅡ用水路では、流域住民がアシャール(奉仕活動)による自発的な浚渫作業を行った。ジア医師やPMS技師たちも開始前の集会に招かれた。写真中央、住民に向かい挨拶しているのはジア医師(2022年3月12日)

 

アシヤール(写真⑦)

また、アシヤール(奉仕作業)も行われるようになった。
カマⅡ堰流域の代表からジア先生に連絡があり、3月12日に流域住民が集まって、用水路の掃除が一斉に行われたことで、印象深かったのは、青年たちが大勢その作業に加わったことだった。
昨年から数ヵ所の用水路で、自主的な用水路清掃が行われるようになってきた。
用水路が地元住民に「自分たちの大切な財産」として大切に使われることが、中村さんの念願でもあった。

写真⑧ 浚渫に精を出すカマⅡ用水路流域住民たち(2022年3月12日)

写真⑧ 浚渫に精を出すカマⅡ用水路流域住民たち(2022年3月12日)

(2022年5月3日記。文責・加藤勝美)

ペシャワール会

〒810-0003 福岡市中央区春吉1-16-8 VEGA天神南601号
☎092-731-2372
FAX:092-731-2373
http://www.peshawar-pms.com/
peshawar@kkh.biglobe.ne.jp

(MK新聞2022年6月1日号)

 

参考:アフガン新政権の正と負

PMSダラエヌール診療所 医師 ハフィズラーカニ

治安は改善したものの…

皆さん、こんにちは。変わらぬご支援に感謝しております。
私はPMSの職員で医師のハフィズラーと申します。
私たちアフガン人は皆、新アフガン政権が国民に与える正の影響も負の影響もよく理解しているので、現状について少しお話をしたいと思います。
新政権になって良かった点は、治安が改善したことです。
以前起きていた殺害、爆撃、誘拐、汚職がほとんどゼロになりました。
教育については、少女たちが登校を止められている学校もありましたが、3月5日より大学も含めて全校が再開され、少女たちも通学を始めました。
一方、政変がもたらした負の部分は、新政権になってアフガニスタンの資産が全て凍結され、経済状況が悪化したために多くの人が失業していることです。
失職しなくても給料は未払いです。
また食料や日用品の価格が日々上昇しています。

医療システムは崩壊

医療においても負の影響が出ており、政府に経済力がないため多くの公営病院では薬や検査キットなどが底をつき、職員たちには給与が払えなくなっています。
そのため私たちPMSの診療所にやって来る患者が日々増えており、時には外来患者の診療終了が午後3時までずれ込むことがあります。

「ペシャワール会報151号」(2022年4月6日)からの抜粋

 

中村哲医師・ペシャワール会の関連記事

2000年代の掲載記事

2010~2017年の掲載記事

2018年の掲載記事

2019年の掲載記事

2020年の掲載記事

2021年の掲載記事

2022年の掲載記事

 

 

MK新聞について

MK新聞とは

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

フリージャーナリスト・加藤勝美氏について

ペシャワール会北摂大阪。
1937年、秋田市生まれ。大阪市立大学経済学部卒
月刊誌『オール関西』編集部、在阪出版社編集長を経て、1982年からフリー
著書に『MKの奇蹟』(ジャテック出版 1985年)、『MK青木定雄のタクシー革命』(東洋経済新報社 1994年)、『ある少年の夢―稲盛和夫創業の原点』(出版文化社 2004年)、『愛知大学を創った男たち』(2011年 愛知大学)など多数。

MK新聞への連載記事

1985年以来、35年間にわたってMK新聞に各種記事を連載中です。

1985年11月7日号~1995年9月10日号 「関西おんな智人抄」(204回連載)
1985年10月10日号~1999年1月1日号 「関西の個性」(39回連載)
1997年1月16日号~3月16日号 「ピョンヤン紀行」(5回連載)
1999年3月1日号~2012年12月1日 「風の行方」(81回連載)
2013年6月1日号~現在 「特定の表題なし」(連載中)

この記事が気に入ったらSNSでシェアしよう!

関連記事

まだ知らない京都に出会う、
特別な旅行体験をラインナップ

MKタクシーでは様々な京都旅コンテンツを
ご用意しています。