中村哲医師から受け継がれる現地アフガニスタンでの活動|MK新聞連載記事

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中村哲医師から受け継がれる現地アフガニスタンでの活動|MK新聞連載記事

MKタクシーの車内広報誌であるMK新聞では、フリージャーナリストの加藤勝美氏及びペシャワール会より寄稿いただいた中村哲さんの記事を、2000年以来これまで30回以上にわたって掲載してきました。

加藤勝美氏が寄稿した、MK新聞2020年7月1日掲載記事です。

 

 

中村哲さん死後のペシャワール会

2019年12月4日の、アフガニスタンでの中村哲さんの突然の銃撃死以来、中村哲さんの活動に関心を寄せて来た人たちだけでなく、ペシャワール会会員の間でも、現地での医療活動や用水路建設工事などが果たして継続されるのか、疑問に思った人たちが多くいたと思われる。
2019年12月11日、地元福岡のみならず、全国から約1,800人の人びとが参列して葬儀が執り行われ、2020年に入って1月25日にはお別れ会が福岡市の西南学院大学チャペルで開かれ、学院構内には参加者の長い長い行列ができた。
参加者数約5,000人、会場に入れない人たちのため大学の教室が数ヵ所開放されて各教室のテレビに会場の様子が流された。

ダラエヌール診療所。診察を待つ人々(2020年2月2日)
ダラエヌール診療所。診察を待つ人々(2020年2月2日)

そして、早くも翌月の2020年2月10日から14日までインドのニューデリーでPMS(平和医療団・日本)の医療・農業・用水路灌漑部門責任者8名と中村哲さんの後を継いでPMS総院長となった「村上優医師」を含むペシャワール会本部のPMS支援室の6名が会合を持った。
それ以前、2019年12月12日には医療事業の一部を再開し、18日から19日にかけて、村上総院長が大統領府へ事業継続を表明、州政府には活動再開と職員の保護を要請した。
12月23日と24日には農業事業と灌漑事業を再開し、2020年2月10日から行われたインドでの協議へと続いた。

さて、ペシャワール会本部のPMS支援室から2020年5月8日に届いた現地報告によると、アフガニスタンのコロナウイルスの感染者は3,000人強と地元メディアが伝え、治療を行っている首都カプールの病院ではマスク、防護ガウン、手袋などが不足し、医療従事者がエスケープしている。
ただ、PMS職員は皆元気だという。

2020年3月17日には、パキスタンとの国境の町トルハムが閉鎖される前に、工事用のセメントや鉄筋の購入を進めた。4月7日、マルワリードⅠ用水路のF地区が長雨のために陥没し、現地のディダール技師、ファヒーム技師、重機の運転手たちが緊急の修復工事を開始した。
4月13日から14日にかけては、迫る洪水期に備えて、工事を停止していたマルワリードⅠ取水門横を砂利と巨礫で護岸した。16日にはPMS副院長のジア・ウルラフマンさんから医療活動事業再開の要請があり、農業担当のアジルマルジャンさんから仕事の再開要請が届き、村上総院長がこれを承認した。

砂利と赤土で掘削部分を埋め、ローラーで締め固めする(2020年4月11日)
砂利と赤土で掘削部分を埋め、ローラーで締め固めする(2020年4月11日)

また、コロナウイルス対策として関係事務所に消毒薬とマスクを配布、ダラエヌール診療所には医療用マスク、ガウン、電子体温計が届けられた。

2020年4月18日には、日本側の技術協力者(JICAや建設コンサルタントのスタッフや山田堰の徳永哲也さんら6名)と村上総院長、PMS支援室がオンラインで顔合わせをした。そして5月3日にはマルワリードⅠ用水路E地区の拡張工事を開始、2019年10月から4年計画で、堰改修、取水門間口増設、用水路床面覆工などを予定している。

なお、中村哲さんとともに亡くなった運転手のザイヌッラーさんと、ガード4人の遺族にはペシャワール会として弔慰金を贈っており、運転手は現地PMSの職員なので、規定の補償金と遺児の教育を考えた特別手当が贈られた。
ガード4人はアフガニスタン政府から派遣された公務員なので、遺族には補償金が給付され、住宅の供与が約束された。

ローラーが入らない土手部分は小型のコンパクターで締め固めを行う(2020年4月11日)
ローラーが入らない土手部分は小型のコンパクターで締め固めを行う(2020年4月11日)

アフガニスタンのコロナウイルス問題については、5月20日のNHKのBS海外ニュースでパキスタンの首都イスラマバードの山香道隆支局長が伝えていた。

政府と反政府タリバンの内戦が続いているが、タリバンが活動を活発化させているバグランBAGHLAN(?)州の感染者が160人、11歳のラシード君が毎朝市場前でマスクを売っている。
母と弟妹の家族5人は戦闘が激化した別の州から避難してきたもので、軍人だった父は避難の際、タリバンに殺害された。
母親のサルマさん(ヴェールはかぶっているが、顔は出している)は、洋裁の腕を生かして婦人服の縫製をし、子どもを育ててきたが、コロナのため、取引先が営業を停止し、収入を絶たれてしまった。
そこで残っていた生地でマスクを作り、ラシード君がアイロンがけをし、弟妹も手伝う。一枚が日本円で約10円、多ければ一日100枚売れて、食費・家賃に当てられる。

学校は休みだが、再開しても生活が安定するまではラシード君はマスクを売り続ける。山香支局長は「アフガニスタンの感染者は7,000人を超えて歯止めがかかっていない。
タリバン支配地域と重なる場所もあり、実態の把握が困難。長年の内乱で医療インフラは脆弱、検査体制も整っていない。
首都カブールや都市部では外出制限があり、援助団体も入ることができない。政府は国際社会の支援を呼び掛けている」と語っている。

マルワリード用水路流域、一面の小麦畑(2020年4月12日)
マルワリード用水路流域、一面の小麦畑(2020年4月12日)

付記 ペシャワール会と現地の動きについては会報143号(2020年4月8日)と、PMS支援室の「現地事業のご報告」2020年5月8日に基づいており、文責は筆者にある。

(2020年5月31日記)

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フリージャーナリスト・加藤勝美氏について

ペシャワール会北摂大阪。
1937年、秋田市生まれ。大阪市立大学経済学部卒
月刊誌『オール関西』編集部、在阪出版社編集長を経て、1982年からフリー
著書に『MKの奇蹟』(ジャテック出版 1985年)、『MK青木定雄のタクシー革命』(東洋経済新報社 1994年)、『ある少年の夢―稲盛和夫創業の原点』(出版文化社 2004年)、『愛知大学を創った男たち』(2011年 愛知大学)など多数。

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1997年1月16日号~3月16日号 「ピョンヤン紀行」(5回連載)
1999年3月1日号~2012年12月1日 「風の行方」(81回連載)
2013年6月1日号~現在 「特定の表題なし」(連載中)

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