アフガニスタンから25歳の女性が来日 RAWAと連帯する会が各地で講演会|MK新聞2019年掲載記事

よみもの
アフガニスタンから25歳の女性が来日  RAWAと連帯する会が各地で講演会|MK新聞2019年掲載記事

MKタクシーの車内広報誌であるMK新聞では、フリージャーナリストの加藤勝美氏及びペシャワール会より寄稿いただいた中村哲さんの記事を、2000年以来これまで30回以上にわたって掲載してきました。

「MK新聞2019年12月1日号」の記事を再構成したものです。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。(MK新聞編集部)

 

 

アフガニスタンから25歳の女性が来日 RAWAと連帯する会が招き、各地で講演会

長年の干ばつやタリバンの圧政に苦しむアフガニスタンから、この2019年10月、日本の「RAWAと連帯する会」の招きでサラさん(仮名)が来日し、10月4日から13日まで日本各地で講演会(スピーキング・ツアー)を開いた。
この記事は10月6日に大阪市のドーンセンターで開かれたものに基づいている。

来日まで

開会のあいさつで連帯する会事務局長の桐生佳子さんは、「サラさんの活動はアフガニスタンでは大変危険な行動なので本名などは明らかにできません。日本に来るまでの長い時間と困難な状況の中、関西空港で会えた時は胸が詰まる思いでした。」
英語の通訳は連帯する会の共同代表である室蘭工業大学の清末愛砂(きよすえ あいさ)さんで、わざわざパキスタンのペシャワール空港まで出向いて、アフガニスタンから来るサラさんを迎えた。
あらかじめ入国審査官あてに、連帯する会がすべて費用を負担するのでよろしくという手紙を国際宅急便で送っておいた。
サラさんがアフガニスタンのカブールを出て、パキスタンに何日も滞在してヴィザを取るまでは長い道のりだった。
パキスタンの入管が『金を持っているのか?』と聞くのに対してサラさんは『我々をテロリストとでもいうのか、テロリストをアフガニスタンに送り込んでいるのはパキスタンではないのか』と言い返したという(こうしたエピソードだけでもアフガンの若い女性が一人で出国することがどれだけ困難なことかがわかる)。

ヘワドハイスクールの生徒たち
ヘワドハイスクールの生徒たち

女性蔑視とアフガンの複雑な構造

サラさん。「RAWAを代表してまず感謝申し上げます。皆さんの熱心なサポートなくして来日はできませんでした。不幸な状況が続いていますが、危ない治安、原理主義(ファンダメンタリズム)、女性蔑視がより悪化しています。18年前、アメリカはアフガンに侵略をはじめましたが、今は多くの難民を生み、たくさんの人びとを殺すタリバンなどテロリストを、アフガン政府はもう一度取り込むことを考えています。公開処刑や石打ちで女性を殺し、バーミヤンの仏像を破壊したタリバンをです。また、ロシアも背後からタリバンを支援しています。」
「タリバンとの交渉でアメリカはある程度の平和は得ることができるかもしれませんが、タリバンだけが元凶ではありません。実は、アメリカはロシア、中国と対抗するためイスラム国にも様々な支援をしており、このイスラム国も我々にとって大きな脅威です。」
「このように非常に複雑な構造でアフガニスタンの状況の悪さが生まれています。その代償を支払わされているのが民衆です。この状況が根本的に変わらない限り、本当の平和を享受することはできません。そのために私たちにどのような闘いが必要なのか。性別を問わず、民主的な勢力がアメリカからの解放、原理主義的過激勢力からの解放を求める闘いが必要です。現在の政権も女性蔑視政権で、各地で被害が起きています。しかし、それを海外からの援助を得るための材料として、海外にアピールしています。レイプ、殺害、鼻や耳を切ったりは、普通に起きていて、ヴォイス・オブ・アメリカも、アフガンにはタリバンなどに夫を殺害された寡婦が6,000人以上と伝えています。」
「そして、働き手の父を失った家族の生活のため、子どもたちがゴミ捨て場で売れそうなものを漁っています。子どもたちの夢は教育を普通に受けること、半数が学校に行くことができないのです。」

ヘワドハイスクールでの様子
ヘワドハイスクールでの様子

RAWAの創設とその活動

これまで説明なしに使ってきたが、RAWA(Revolutionary Association of Women of Afghanistan)「アフガニスタン女性革命協会」は1977年、カブール(現地の発音ではカーブル)で、ミーナを中心に若い女性たちが設立した。
サラさんによると、当時ミーナ(1957年生まれ)は20歳、アフガニスタンを変えるためには女性の存在を示す必要があると考え、女性のための識字教育の学校、児童養護施設、病院などを設立するために奔走。さらにヨーロッパ各国を回ってアフガニスタンの現状を訴えた。
しかし、1987年にパキスタンの親ソ派原理主義者によって暗殺された。その後は残ったメンバーが活動を続けてきた。

RAWAはパキスタンのイスラマバードの隣、ラワルピンディにヘワドハイスクール(小1~高3)を開設、RAWAと連帯する会はこれを支援し、校舎賃貸料、教師の給与、文具など学校の諸経費をオーストラリアの支援団体SAWAとともに支援してきた。
2015年にすべての活動をアフガニスタンに戻し、アフガニスタンでは珍しい男女共学、その教育レベルの高さは国の教育省も認めているという。

また、アフガニスタンのナンガルハル州ジャララバード近郊のウォルス・ダラ(Walos Dara)に国内難民のキャンプがあり、RAWAに学校運営協力の要請があった。
入学希望者も多く、支援が急がれている。巨大仏像で知られるバーミヤンは貧困者が多く、多くの住民が洞窟で暮らしているが、そこでも識字活動を続けている。
またサフラン・プロジェクトというものがあり、ヘラート州で12人の女性が栽培し、連帯する会が販売をしている。

サラさんはその話を次のように締めくくった。
「RAWAの活動の一番の目的は何よりも女性たちが自分たちの権利について、教育を通して目覚め、自由を求めて闘う女になることを主要な目的にしている。アフガニスタンがこれからどうなるか、国民の半数にあたる女性たちの手にかかっている。クルドの女性たちもイスラム国と戦っており、私たちは大きな勇気を得ている。連帯する会の支援に心から感謝いたします。」

サラさんの生き方

この後、通訳の清末さんがサラさん自身についていくつか質問をした。
RAWAに加わったのは大学2年の時、今から3年前。ミーナとRAWAのことを知って、強いインスピレーションを得た。
「私の出身の村は女性たちが教育に接する機会が阻まれており、アフガン全土がそうだ。村に学校はなく、人間として扱われない状況があり、自由を求めて闘いたいと思いました。」
1979年のソ連侵略後、村は完全に破壊され、村人が虐殺され、姉2人も殺され、難民としてパキスタンへ逃れた。家族はアフガン北部のクンドゥズ出身。
「私はとても勉強をしたかった。兄から読み書きを習い、兄がカブール大学から帰るたびに、勉強をしたいと訴えました。兄はカブールの孤児院のことを知り、私はそこに入って、高校にも進みました。」
「12歳で学校教育を受けたとき、とても嬉しかった。誰よりも勉強しました。
ただ、家族は女の子が教育を受けることには賛成していなかった。RAWAの活動にも賛成しない。
両親は教育を受けておらず、女は家にいて、台所で洗い物や料理をするのがいいと思っています。
イスラム諸勢力、軍閥、政権の関係者はRAWAを厭な団体だとみなしている。
彼らがやってきたことを世界に発信したために、大変嫌っています。皆さんには、貧困に苦しむ人々のため、これまでに生じた犠牲者のため、その側に立って闘うことを望みます。」

付記

子どもが働き手とならねばならないケースについては、今年2019年1月18日のNHK国際報道「紛争つづくアフガニスタン 大規模干ばつが追い打ち」が詳しく伝えた。
放送の半年前、女性カマル・グルは2,000キロ離れた村から避難をしてきた。
避難の1ヵ月前、警察官だった夫はタリバンとの戦闘で死亡、移動するお金がないので11歳の娘をいずれ結婚させる約束で売り、日本円で16万円を得た。その自責の念がある。
「苦しい決断。子どもたちは餓死しそうでした。10歳の息子イサヌラがゴミを集めて換金し、家計を助ける。一日140円。それでお茶とパンを買う。勉強させたいが、働かないと家族が困る」。現地の支局長によると、タリバンとの戦闘が激化し、強制的に娘を嫁がせるケースが相次いでいる。
(2019年10月12日記)

清末 愛砂

室蘭工業大学大学院准教授。
憲法24条の平和主義、ジェンダーに基づく暴力と法制度、アフガン女性の人権問題などを研究。
共編著として、『ピンポイントでわかる 自衛隊明文改憲の論点―だまされるな! 怪しい明文改憲』(現代人文社、2017年)、『緊急事態条項で暮らし・社会はどうなるか―「お試し改憲」を許すな』(現代人文社、2017年)などがある。
『右派はなぜ家族に介入したがるのか―憲法24条と9条』(共編、大月書店)近日発行予定。

《RAWAと連帯する会とは》Friends of RAWA, Japan

世界で最も貧しく、戦乱と飢餓にあえいできたアフガニスタンで、女性の権利を求め、自由と平和を求めて毅然とした闘いを続けているRAWAと、連帯する活動を通し、困難に立ち向かう勇気と明日を信じる力を受け継ぎ、アフガニスタンと日本、場所も条件も違う中で、自身を取り巻く社会を少しでも良くしていきたいと2004年に設立。

「RAWAと連帯する会」問い合わせ先

E-mail:rawa-jp@hotmal.co.jp
TEL:090-3656-7409(桐生)
http//rawajp.org/

RAWAと連帯する会 年会費 2,000円
《振込先》
郵便振り込み
ロ座名「RAWAと連帯する会」
ロ座番号「00930-1-76874」

中村哲医師・ペシャワール会の関連記事

MK新聞について

MK新聞とは

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

www.mk-group.co.jp

フリージャーナリスト・加藤勝美氏について

ペシャワール会北摂大阪。
1937年、秋田市生まれ。大阪市立大学経済学部卒
月刊誌『オール関西』編集部、在阪出版社編集長を経て、1982年からフリー
著書に『MKの奇蹟』(ジャテック出版 1985年)、『MK青木定雄のタクシー革命』(東洋経済新報社 1994年)、『ある少年の夢―稲盛和夫創業の原点』(出版文化社 2004年)、『愛知大学を創った男たち』(2011年 愛知大学)など多数。

MK新聞への連載記事

1985年以来、35年間にわたってMK新聞に各種記事を連載中です。

1985年11月7日号~1995年9月10日号 「関西おんな智人抄(204回連載)
1985年10月10日号~1999年1月1日号 「関西の個性」(39回連載)
1997年1月16日号~3月16日号 「ピョンヤン紀行」(5回連載)
1999年3月1日号~2012年12月1日 「風の行方」(81回連載)
2013年6月1日号~現在 「特定の表題なし」(連載中)

この記事が気に入ったらSNSでシェアしよう!

関連記事