フットハットがゆく!【365】「アナグマ」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【365】「アナグマ」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2024年9月1日号の掲載記事です。

アナグマ

先日、アナグマが手に入り、初めて食したところ非常に美味でした。アナグマはクマではなくイタチ科の動物で、大きさ、外見はタヌキにそっくりです。同じくそっくりなハクビシンと揃って、「ムジナ」と呼ばれることもあります。前足の爪が長く、名の通り穴掘り名人です。山のあちこちに穴を掘って棲家にしたり、土中の虫やミミズを捕らえて食べます。成獣は10~15キロ、ちょうど中型犬ほどの大きさで、性格は穏やかで動きも遅めです。

今回僕が手に入れたのは、5キロほどの小さく若いメスでした。アナグマは誰でも捕まえていいという訳ではありません。僕は猟師として狩猟免許と有害鳥獣駆除の資格も持っていますので、正規のルートで法に触れることなくアナグマ1頭丸々を手に入れることができました。前から雑誌などで「アナグマは美味しい」という情報を得ていたので、食することに決めました。首を落とし、皮を剥ぎ、胃腸は雑菌がわきやすいので今回は破棄しました。肝臓、心臓などの内臓系はその日のうちに焼いて食べました。通常、シカやイノシシを解体する場合、各部位をブロックごとに切り分けて保存するものですが、今回のアナグマ自体が小さめでしたので、食べる都度に体全体から肉をこそげ落としていくという方法を取りました。なので、冷蔵庫を開けると、手足があって首のない皮剥ぎ死骸がボトンと置いてあるので、知らない人が見たら卒倒したと思います。でもそれが、猟師の家の冷蔵庫というものです。

毎日アナグマを食べながら、10日ほどかけて完食しました。おすすめはスキヤキ! アヒージョも良いです。肉はかなり弾力がありますが、臭みもなく脂身に甘みがあり、牛ホルモンに近い食感と味です。僕はミツバチを飼っているので、自家製ハチミツを使って、さらに醤油、七味で甘ピリ辛に焼き上げると非常に美味しく、ご飯もお酒も進みました。お命いただき、アナグマ様に感謝です!

ここからはアナグマ雑談。僕は猟犬を飼っていますが、猟犬の事故死の理由の一つにアナグマがあります。アナグマに殺される訳ではなく、アナグマを追いかけて巣穴に入った結果、犬は狭い穴の中を前進はできますが、後進ができないので、穴の中で死んでしまうというものです。ドイツでアナグマ狩りのために品種改良された猟犬が、足が短く胴の長いダックスフントです。ドイツ語でダックスはアナグマ、フントは犬という意味です。日本で大人気の愛玩犬ダックスフントは、アナグマ犬という猟犬だったのです。
あと、田舎に住んでいると、意外とセミが少ないな? と感じます。山にある木の数とセミの量が比例しません。都会の公園や団地の木々の方が圧倒的にセミは多いです。田舎の山に入ってみると、あちこちの木の根元がアナグマによって掘り返されています。セミの幼虫は土中で木の根っこの汁を吸いながら育ちます。それがアナグマに掘り返されて食べられたと思われます。都会にアナグマはいませんので、セミの天国ですね。昆虫の幼虫というのは栄養価が高く美味しいので、それを食べて育ったアナグマのお肉が美味しくなるというのもうなずけます。

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