グローバル・ビジネス・レポート【145】学問:大学の研究室(ゼミ)活動について|MK新聞連載記事
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MK新聞2026年11月1日号の掲載記事です。筆者プロフィールは新聞掲載時点のものです。
学問:大学の研究室(ゼミ)活動について
私はこの4月に長岡技術科学大学から防衛大学校に移った。前任校の長岡技大には、2014年4月から2026年3月まで12年間在籍し、毎年、学部3年生の学生を研究室に受け入れてきた。防大に移った後、長岡技大の研究室OBにその旨、連絡したところ、研究室のOBの何人かから久し振りに会いたいとの連絡を受けた。OBと書くのは、私の研究室の卒業生は、皆、男性でOGはいないためである。
研究室のOB会については、1期生の学生が修士課程を卒業し、しばらくした後に行うことも考えていたが、新型コロナ禍などもあり実施できずにいた。良い機会であるので、1期生の小林君、7期生の初汐君、私の3人で相談し、8月29日に研究室のOB会を東京駅付近のお店で行った。このOB会については、次号に初汐君が書く予定である。今回は、大学の研究室(ゼミ)活動について私の考えを書いてみたい。
高校と大学との大きな違いは、問い(問題)の在り方にあると私は考えている。高校までは、基本的に、問いは学校や先生から与えられるものであり、学生はその解き方や解くための必要な知識を学ぶ。これらは高校の後、大学などで学ぶための基礎知識ともなる。具体的には、高校の定期試験や大学入試の時の問題を思い浮かべてもらえば良いと思う。問題用紙に問題が書かれており、学生はその問題を解く。問題の答えは基本的に一つである。もし、答えが複数あったり、答えが無かったりする場合、それは問題作成側のミスである。記述問題でも、客観的に採点するために、採点のポイントが細かく決められている。
それに対して、大学では、問いを自分で考え、作り、それを自分で解くことに重点が変わっていく。答えも一つとは限らず、問いによっては答えが出ないこともある。もちろん、高校でも探究のように自分で問いを立て調べる授業もある。大学でも高校と同様に基本的な知識を学ぶ講義もある。ただし、その比重は、通常は、大学の後半になるほど、減少していくはずである。ここでは、研究室(ゼミ)活動や卒業論文(研究)を思い浮かべてもらえば良いと思う。
私は、長岡技大に准教授として赴任して初めて自分の研究室を持った。それまでは助教だったので他の先生のゼミなどを手伝っていた。私が自分のゼミ活動で重視したのは、優れた専門書や論文の精読を通して、その分野の専門書、論文を自分で理解できる力をつけること、その上で自分の研究の問いを自分で考え、作り、解くことの2点であった。
問いをきちんと立てるためには、その分野の専門書や論文をしっかり読み、その分野の理論、研究などを理解している必要がある。自分が考えていた問いがすでに先人によって研究として行われていたり、すでにある理論で説明できたりすることはよくあることである。
良い問いを作ることは難しい。実際、学生の研究の問いがなかなか決まらなかったこともよくあった。しかし、私は学生が自分で考えた問いを持ってくるのをじっと待った。この社会は複雑な現象で溢れ、その一方でAIなどの技術が社会に進展している。大学だけでなく社会に出てからも自分で問いを考える重要性はますます高まっており、その基本を大学時代に身に付けてほしいと考えるからである。
「何が良い問いで何が悪い問いか」「物事の本質に迫る問いを考える」。私が学生時代にゼミの恩師から言われた言葉である。「学問」という言葉は中国の『易経』に由来する言葉である。この言葉は本当によくできた言葉だと思う。「学」は学び習うこと、「問」は問い究めることを意味する。精読により自分で学び習えるようになること、自分の問いを自分で考えること、そして、その問いや問いの答えを議論すること、これら一連の活動に大学に行く意義があると考え、今後も大学の教員としてその意義を追求していきたいと思う。
■筆者プロフィール
静岡県出身。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。 博士(経済学)。東京大学、京都大学、長岡技術科学大学などを経て、現在、防衛大学校 人文社会科学群 公共政策学科 教授。
長岡技大研究室1期生と行った企業調査(左から小林、下岡、筆者、鈴木)
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