フットハットがゆく!【374】「ヒンナ、ヒンナの話」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【374】「ヒンナ、ヒンナの話」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
今回はMK新聞2026年3月1日号の掲載記事です。

ヒンナ、ヒンナの話

田舎に移住して6年、猟師になって5年が過ぎようとしています。現在56歳の僕ですが、次々と新しい経験が待ち受けており、新鮮な日々を送っています。今回は、マニアックなシカ食の話です(苦手な方はご遠慮ください)。

昨年末から腰のヘルニアを患いまして、猟はしばらく休んでおりました。するとうちの裏庭に、度々シカが出没するようになりました。夜行性なので夜に来ます。うちは猟犬を飼っておりますので、シカの気配を感じるとけたたましく吠えます。懐中電灯を持って裏庭に行きますと、そこには立派なツノを持った大きなオスジカがいました。木を叩いたりしてその場は追っ払いますが、翌日また来ます。今期は柿のなりが非常に良かったので、落ちた柿を食べに来ているのです。

それにしても、猟師と猟犬のいる家に、毎夜堂々と現れるとは、我々も舐められたものです。腰が少しマシになったある日、ついにシカを獲るためのくくりワナを仕掛けました。そして3日後に、見事、狙っていたオスジカが掛かりました。

久々に獲った獲物なので、その御命をありがたくいただき、食すことにしました。今まで、肉の部分や心臓、肝臓、といったところは食したことがあったのですが、今回、新たな部位に挑戦しました。

まずは胃袋です。シカの胃袋は牛と同じで4つあります。牛の内臓は焼肉屋で「ホルモン」として一般的に食されていますが、シカの胃袋が食べられることはあまりありません。なぜなら胃の内容物が詰まっていて、洗浄がとても大変だからです。切開するとエゲツない匂いがします。水道水で洗って洗って、これでもかというくらい洗って、湯通しも2回して、その時の匂いもエグくて、飼い猫が悲鳴をあげて逃げていくほどでした。ここで僕は、塩や米糠で洗う、ということを忘れていたので、結局最後まで匂いを取り切ることができず、胃の内容物の匂いをたっぷり残したまま、食することになりました。第一胃はミノ、第二胃はハチノス、第三胃はセンマイ、第四胃はギアラ。ミノ以外は、牛のものとそっくりでした。とても歯応えが良く、栄養価は高いと聞いています。次回は塩洗いを忘れずに、匂いをきっちり取りたいと思います。

ちなみに膀胱も食べました。生の状態では風船のような感じですが、火を通すと10分の1ほどに縮み、厚みも増します。切るとちょうどイカの輪切りのようになり、食感も似ていました。

さぁ、シカ食の初体験第2弾は、「脳みそ」です。最近知人に薦められて読んだ「ゴールデンカムイ」という漫画で、主人公のアイヌ民族の少女が、狩りをしたエゾシカの脳みそを食べるシーンがあり、それに影響を受けて、僕も挑戦しました。お味は、「ヒンナ、ヒンナ!」でした。アイヌ語で「食物に対する感謝と、美味しい、という意味が込められた言葉」だそうです。良い言葉! これからも使っていきたいです。

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