フットハットがゆく!【357】「真夏の出来事」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【357】「真夏の出来事」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2023年9月1日号の掲載記事です。

真夏の出来事

今回、動物の生き死にの話なので、不快な方はご注意ください。

僕はニワトリを15羽ほど飼っています。同じ小屋でヤギも飼育しています。ある日、ヤギの牧草を入れるカゴがひっくり返っており、拾い上げるとカゴの下からニワトリの死骸が出て来ました。ヤギがひっくり返したカゴに、偶然ニワトリがワナにかかったかのように閉じ込められてしまったのです。真夏の連日30℃を超えた日のことですから、丸一日水を飲めなかったその子は死んでしまい、僕が発見した時にはウジだらけになっていました。

悪気はないとはいえ、ニワトリを殺してしまったそんなヤギが、次の週には死んでしまいました。毎日、小屋から出して雑草のあるところに繋牧していますが、その日は柿の木の下に繋いでいました。朝は元気だったそのヤギが、夕方には死んでしまいました。原因は、木の下に落ちた青柿を大量に食べて中毒死したと考えています。ヤギは柿や栗の葉が大好きでよく食べますが、まだ熟さない青柿には毒素が含まれていて、草食動物が大量に食べると中毒を起こすことがあるのです。

これまで何年も柿の木の下に繋牧して来ましたが、青柿がそんなにたくさん落ちたのは初めてでした。台風が近づいていたのも原因の一つですが、今年の実の成りが異常に良いことも要因です。

昨年、僕はミツバチを2万匹ほど飼って、村に流れる川の上流に巣箱を置いていました。今年はそれが10箱になり、各箱に3万匹ほどいたので、ミツバチの数は30万匹に増えました。ミツバチが花の蜜を集める際、受粉を助けることで有名です。村の農家の人から、ミツバチが増えたおかげで、今年は果物や野菜の実の付きがとても良い!とお礼を言われるほどです。

そうやって例年以上にたわむほど実をつけた柿が、熟する前に青柿の状態でボトボトと落ちてしまい、それをヤギが大量に食べてしまった、というわけです。何が幸いし、災いになるのか、偶然が引き起こす出来事は予測が難しいですが、僕自身もっと注意していれば防げた死でもあります。そう思うと、罪の意識が頭を駆け巡ります。

柿の木の下で死んだヤギはメスで、その兄妹のオスヤギが、メスの死の3日後に死んでしまいました。メスヤギとは違う場所に繋いでいたので、同じ中毒死とは思えず死因が不明でした。水はよく飲みましたが、草を食べない食欲不振が続きました。ヤギに詳しい人に聞くと、自殺だそうです。ヤギは自分が愛情を持っている相手が死ぬと、気落ちしてエサを食べなくなったりして自殺するそうです。妻を失った夫、子を失った母、などが自殺しやすいそうです。死んだ二頭は兄妹であり夫婦でした。

死んだヤギを裏山に埋葬するため、木のそばに穴を掘りましたが、その際に土の中からセミの幼虫が何匹も出て来て、埋葬の犠牲になってしまいました。死んだ生き物を葬るために、また死ぬ生き物が増える。僕は自分の罪をどうやって償えば良いのでしょうか?…真夏のセミの声が山に響きわたります。

 

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