山の一家*葉根舎「葉根たより」【56】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、山の一家*葉根舎(はねや)の「葉根たより」とその前身記事を1998年12月16日から連載しています。
MK新聞2021年8月1日号の掲載記事です。
大森梨沙子さんの執筆です。
葉根たより
ピピピピピピチピチピチ…この声は何の鳥かしら、と思っていたのは鶯の谷渡り。
山の斜面に立つわが家、向かいの谷からこちらの谷へ渡っているのでしょうか。
珍しい鳴き声だそうですが、毎日聴こえてきます。
時鳥(ほととぎす)ヒヨ鳥もにぎやか。
ヒヨ鳥はグミの実を採りにきて、今度はブルーベリーを狙っている様子。
さすがに網をかけましたが、近くに巣があるようで親子の鳴き声が途切れずに響いています。
早い梅雨入りと思えば雨が止み、空梅雨かと思えば梅雨期後半に大雨…今年も被害が出てしまい、胸が痛くなります。
変化しないものなどないので起きることを止めることはできませんが、よい変化が増えることを祈り、そうあれるように暮らしてゆくのみと感じます。
「蓮始開(はすはじめてひらく)」「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」
蓮の花が咲き、土がじっとりとして蒸し暑くなる頃。
七月後半には大暑、立秋前の夏土用を迎え、梅干しを干す時期。
汗を流すこと、露草、夏野菜、乾物などで身体の中の余分な水分を取り除きながら梅雨を乗り越え、暑い季節を受け入れるために整えています。
<梅雨の田畑>
六月中旬に田植えを終え、今は田打器をかけ、草をおさえ循環をよくし、稲に活力を与えています。
畑は今年も葱、茄、生姜などをかじる兎対策。
放置されて大草になっているところを刈り、兎が隠れるところを減らしています。
大豆も直播きすると兎や雉、烏たちに食べられてしまうので苗を作り、子供たちと移植しました。
鹿、猪対策の柵を畑の周りにしていますが、小さな兎、雉対策に大豆畑の周りには低い電柵もしなければなりません。
昨年は苗もほとんど食べられてしまったので、今年はもう少し収穫できることを祈って…。
麦刈りは梅雨と重なるので天日干しのタイミングが難しい。
晴れが続きそうな頃合いを見測り、刈り、今年はしっかり干すことができました。
半年から一年熟成させてから製麺してもらいます。
そして生はちみつ。
今年は雨と重なり栃の蜜は採れませんでしたが、山柿と山栗の蜜がたくさん採れました。
大きな養蜂家さんは花が咲く先々に蜂を移動するそうですが、うちは二、三箱の蜜蜂で様々な花のある山で暮らしているので無理な移動なく、暮らす地域で育てられるのでありがたいです。
お日様や雨、土のおかげで育ってくれる植物や蜂たち。
私たちは順調に育つよう、手助けするイメージでお世話をさせていただいています。
そうして素直に育ったものたちが持つ力、美味しさに感動する毎日です。
<植物のような子供たち>
子供たちも、植物を育てることと近いものも感じます。
その子自身が持っている力を信じ、その力を輝かせられるように手助けするだけ。
とはいえ心配になったり、怒ってしまったり、反省ばかりですが、自分の子供の頃と比べると素直な優しい子だと感心してしまいます。
お風呂炊きや洗濯物たたみは毎日のこと。
毎週末は薪割りや田畑仕事など、何かしら少しは夫げんと共に作業をします。
それを通して、築いてゆける信頼関係があることを感じます。
<からだのーと>
今の七夕は梅雨時ですが、旧暦の七夕は今の八月になるので晴れることが多く、天の川を見ることができます。
旧暦のお盆は七月十五日前後の満月。
豊作祈願と男女の出会いの場であった盆踊り。
陰の気極まる満月の日は、人と人をつなげるコミュニケーション能力が高まるそうです。何事も旧暦の方が理にかなっていますね。
満月の翌日から新月まではデトックス期。
夏野菜はカリウムの力で排毒を促しますが、身体を冷やすので食べ過ぎに注意しましょう。
<展示案内>
8月21日は京都、丹波口駅近くの積水ハウスレグヌムコートにて作品展示をします。
住宅展示場なので、お部屋の中に展示した時の雰囲気を楽しめます。
予約制ですので、ご興味のある方はメールでお知らせ下さい。
9月13日から19日は大阪ギャラリー螺で一五夜展、17日から28日は宝塚アートセンターにて未生空間展です。
伸び盛りの草刈りをしながら制作に励む毎日です。
草が伸びすぎて網に鹿がかかってしまったお話もありますが、それはまたの機会に。
(2021年7月7日記)
■葉根舎
haneya8011@gmail.com
HP:https://www.yamano-haneya.com
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1998年12月16日号~2016年6月1日号
大森昌也さん他「自給自足の山里より」(208回連載)
2017年1月1日号~2022年12月1日号
大森梨沙子さん「葉根たより」(72回連載)