グローバル・ビジネス・レポート【119】実務訓練報告:アクシアル リテイリング株式会社<上>|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、「グローバル・ビジネス・レポート」を2012年2月1日から連載しています。
MK新聞2023年4月1日号の掲載記事です。筆者プロフィールは新聞掲載時点のものです。
長岡技術科学大学経営戦略・技術経営・ものづくり経営研究室 助川 将啓さんの執筆です。
実務訓練報告:アクシアル リテイリング株式会社<上>
私が在籍している長岡技術科学大学では、実務訓練(長期インターンシップ)という科目がある。具体的には学部4年生で大学院修士課程進学予定の学生が10月から2月上旬までの期間、企業等の現場に派遣される。
しかし、一昨年度、昨年度に引き続き、今年度も新型コロナウイルスの影響により従来通りの実務訓練とはならなかった。海外での実務訓練はオンラインのみとなり、国内でも期間が1ヶ月短縮され11月から2月上旬までの期間となり、中止となった企業もあった。幸い、私は企業の方々の協力により無事、実務訓練を終了することができた。今回から3回に分けて、私の実務訓練についてお伝えしていこうと思う。
私が実務訓練に行ったのはアクシアル リテイリング株式会社(以下、アクシアルと略す)である。アクシアルは新潟県と群馬県を中心に、原信 、ナルス、 フレッセイのスーパーマーケット132店舗(2023年3月現在)を展開している持株会社である。そのアクシアルグループの中核会社として、人事、経理など原信、ナルスの管理業務を担当する原信ナルスオペレーションサービスがある。私は実店舗である原信川崎店に1か月間、原信ナルスオペレーションサービスのTQM推進室にて2か月間強の期間、実務訓練を行った。
私がなぜ実務訓練先にアクシアルを選んだかというと私が所属する研究室の活動の一環で、アクシアルが主催するTQM発表大会を見学したことがきっかけだった。TQMとはTotal Quality Management(総合的品質管理) の略称であり、日本の産業界では、トヨタ自動車をはじめとした製造業の多くがTQMを経営管理の手法として活用している。アクシアルのTQM発表大会は、同社の改善活動を発表する場として開催されており、この大会を見学したことで私はTQMの存在を知り、TQMについて深く勉強したいと思い、同社での実務訓練を希望した。
アクシアルのTQMを理解するために、まず、スーパーマーケットでの業務を経験する必要があるため、私は、原信川崎店にて1ヶ月間、働いた。原信での業務は、魚・肉の加工、惣菜やパンの製造、商品補充、レジなど多岐にわたる。私は惣菜部門、デイリー部門、加食・住居部門の計3部門で勤務した。
惣菜部門では私は主に弁当の盛り付けを行なった。弁当の製造マニュアルに沿ってご飯や具材の盛り付けを行い、昼食時のピークタイムに間に合うように商品を製造した。私は全くの初心者だったがマニュアルがあるおかげで基準通りの弁当を作ることができた。誰が作業しても同じ品質の商品を製造できる仕組みはお客様の高い満足につながっていると感じた。
デイリー部門は主に賞味期限が短い加工食品(豆乳、牛乳、パンなど)を扱い、加食・住居部門は賞味期限が長い加工食品(缶詰、調味料、菓子類など)と日用雑貨を扱っている。これらの2部門は扱う商品は異なるが基本的には同じ作業を行っている。商品を発注し、店舗に届く配送便から商品を受け取り、売り場に陳列していく。ここで重要なのは商品整理の方法である。商品整理のルールとして前進立体陳列がある。前進立体陳列とは商品を棚などに置く際、商品のフェイス(表面)を手前にきちんと揃え、立体的に見せる陳列技術である。原信では定期的に商品整理を行い、前進立体陳列での売り場を維持している。こうした陳列によりお客様が欲しいものをすぐに見つけられ、商品を手に取りやすい売り場づくりへとつながっている。私も普段から原信を利用しているが、買い物の際にすぐに商品を見つけられたのは、このような細かい配慮の積み重ねだったことが分かった。顧客への配慮を店員目線で体験できたのは貴重な経験となった。
私が1ヶ月の原信の店舗勤務で学んだことは、店舗の各所に顧客満足を優先した取り組みが行われているということだった。例えば、商品の会計時に店員がレジ対応を素早く行う、袋詰めをきれいに行う、などである。これまであまり気がつかなかったが、随所に多くの工夫や配慮が行われ、これらの多くはTQMの改善活動から生まれたものであった。
次回の記事では、TQM推進室での勤務やTQM発表大会について書く予定である。
■筆者プロフィール
茨城県出身。茨城高専卒。現在、長岡技術科学大学大学院情報・経営システム工学分野の修士1年に在籍。
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