エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【270】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【270】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2010年10月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

いよいよ日本でも電子書籍の本格的な普及に弾みがつきそうだ。
そのきっかけとなったアップルのiPadに差をつけられてはなるまいと、日本のメーカーも同様のタブレット型PCあるいは電子書籍専用端末を年内にも市場に投入すると相次いで表明している。
また、アメリカのアマゾンやアップルのように、端末機器の製造、販売から電子書籍の制作、流通(配信)、販売まで一社が統合的に手がけることでユーザーを囲い込むビジネスモデルに対抗するため、印刷会社や新聞社、広告代理店、通信会社、メーカー(予定)ほかからなる“日本連合軍”は協議会を設立し、規格や制作、流通などで横の連携を強める構えだ。
最大の山場を序盤戦で迎える新たなビジネス分野の主導権争いは、メーカーや関連サービス提供会社にとって熾烈を極めそうだが、ユーザーにとっては電子書籍を読むためのハード(端末機器)や閲覧ソフト(アプリ)の性能および多様性、コンテンツ(書籍データ)の豊富さ、プラットフォーム(配信サービス)の利便性、それぞれの価格などにおいて、一般論で言えば各社が競争することはメリットにつながる。

しかし、そもそも電子書籍はフォーマット(規格)が統一されていないことや、フォーマットによって機能や利用環境が異なるといった基本的な問題をはじめ、ハードとソフトとコンテンツとプラットフォームの組み合わせが、必ずしも自由に選べるわけではない状況など、ユーザーにとって過渡期ゆえの注意を必要とする点も少なくない。
国内外を問わずフォーマットの種類はいくつもあり、端末機器、閲覧ソフト、書籍データ、プラットフォームの「対応」「非対応」の組み合わせは「シンプル」というわけにはいかない。
出版社は電子書籍を何種類かのフォーマットで発売しているが、すべてに対応しているわけではない。また、一部だが、閲覧ソフトと電子書籍が一体化したコンテンツなんかもある。日本政府も関係三省の懇談会を設置し、規格統一をめざして動き出したばかりだ。
電子書籍の話題をテレビや新聞で聞かない日がないくらいだが、「誰にでもすぐに何でも読める快適な電子書籍ライフ」が手に入るところまでは、どうやらまだ来ていないようだ。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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