夏に大輪の花を咲かせる、京都の「芙蓉(フヨウ)」おすすめスポット5選
目次
晩夏を彩る大輪の花である芙蓉(フヨウ)。15cmくらいの大きな目立つ赤・ピンク・白の花を咲かせ、京都の夏の青空に映えます。
中国原産とされていますが、富士山の雅称を「芙蓉峰(ふようほう)」というとおり、京都をはじめ日本でも古くから親しまれてきました。京都では寺社はもちろん公園や堤防でもよく見かけます。
場所や天気によって賑やかな風情に見えるときもあれば、ひっそりと儚げに見えるときもある不思議な花です。
京都にある美しい芙蓉を楽しめるおすすめスポットを5ヶ所紹介します。
芙蓉(フヨウ)とは
中国原産で日本にも広がった芙蓉
アオイ科フヨウ属の低木です。
芙蓉は日本から中国にかけて自生していますが、本来の原産地は中国です。日本には奈良時代頃に渡来し、芙蓉は京都でも広く植えられてきました。
日本では四国、中国、九州、沖縄の暖地に生育し、台湾にも分布しています。
日本ではフヨウ属の植物はフヨウ以外にハマボウ(関東以西)、テリハハマボウ(小笠原)などの自生種があり、過去には岡山県にもハマボウが自生していましたが、開発により消滅したようです。
芙蓉は朝開花して夕方には散ってしまう一日花ですが、開花のピーク時にはたくさんの花を咲かせます。
古くから品種改良され、花の色は白、ピンク、濃紅色などがあり、基本の一重咲きから八重咲きなど、ムクゲほどではありませんが芙蓉には多くの園芸品種があります。
特に1ヶ月ほど遅れて開花する酔芙蓉(スイフヨウ)や七面芙蓉(シチメンフヨウ)は人気が高い品種です。
芙蓉は萼(がく)の付け根に蜜腺があり、アリが列をなしているのをよく見かけます。
乾燥や排気ガスにも強いため、京都でも庭園や街路樹、公園樹としても芙蓉は広く利用されています。
半耐寒性で寒さにはやや弱いですが、京都では戸外でも越冬できます。
木槿(ムクゲ)と芙蓉は接ぎ木ができるくらい近縁です。
中国では蓮を芙蓉ということも
中国では、「芙蓉」と書いて蓮(ハス)を指すことも多くあります。
「芙蓉の顔」というと美女の顔を意味し、美女の形容にも使われてきました。
フヨウのこともやはり芙蓉と書くため、ハスとフヨウを区別するためにハスのことを「水芙蓉」、フヨウのことを「木芙蓉」と書き分けることもあります。単に芙蓉と書いた場合は、ハスのことを指す場合が多いです。
文政11年(1828年)に刊行された「本草図譜(ほんぞうずふ)」にも、多数の芙蓉の園芸品種が掲載されています。
ここでは、蓮と芙蓉を区別するため、「木芙蓉」として掲載されています。
富士山の別名は「芙蓉峰」
花の美しさから富士山を「芙蓉の高嶺」「芙蓉峰」、美しい女性を「芙蓉の顔」などと使われます。
中国の後主昶(こうしゅちょう)は1,600㎞の長さにフヨウを植え美女と見たとも言われています。
芙蓉の花言葉は「しとやかな恋人」「繊細美」「微妙な美しさ」です。
鑑賞用のほかに芙蓉は樹皮の繊維が強いことから、下駄の鼻緒や布地として利用されてきました。
芙蓉の栽培方法
芙蓉の栽培方法は、日当たりのよい所で、夏の乾燥に注意し、施肥は葉が有る間、置き肥を月に一度液体肥料を一週間に一度施します。
花着きをよくするため、咲き終わった花は種を作らさないようにガクの部分から摘み取りましょう。
芙蓉は冬になると地上部が枯れて休眠しますが、寒さにはあまり強くなく、積雪・凍結に注意しましょう。
繁殖は、6月頃に挿し木で行います。
京都の芙蓉おすすめスポット5選
① 法輪寺(ほうりんじ)〈中京区〉
おすすめポイント
京都を代表する芙蓉スポットといえば法輪寺。
同名の寺は京都だけでも複数ありますが、「だるま寺」の通称で知られる西ノ京の法輪寺です。
境内へと入ると参道の両側を芙蓉が彩ります。
中でも達磨堂前の達磨(だるま)像を取り囲むように咲く芙蓉が見どころです。
角度によっていかめしいとも、ユーモラスとも見えるお顔をしただるまさんをバック咲く芙蓉の花は絵になります。
この達磨像の足下には十二支の小さな像があり、自分の干支の像をお参りするとご利益があります。
見頃は9月上旬~10月中旬ごろです。
拝観情報
「だるま寺」の通称で知られ、戦後日本の復興を祈願して作られた達磨堂の堂内には、8千余りものだるまさんが祀られています。
京都でも最近人気が高まりつつあり、インバウンドが盛んなときには京都を訪れた外国人観光客の姿を見かけることもありました。
本堂東側の「十牛の庭」は、仏道入門から悟りに至るまでの道程を、十段階で示したものです。
拝観時間 | 9:00~17:00(16:30受付終了) |
拝観料 | 大人 300円 中人 200円 小人 100円 |
TEL | 075-841-7878 |
住所 | 京都市上京区下立売通西大路通東入ル |
アクセス | JR「円町」より徒歩5分 |
達磨像や達磨堂エリアは境内自由。
② 妙蓮寺(みょうれんじ)<上京区>
おすすめポイント
妙蓮寺は、芙蓉よりも変種である酔芙蓉(スイフヨウ)の名所として有名です。
しかし、株数でいうと多いのは芙蓉の方です。
境内に多彩な芙蓉が咲き、三種類の紅芙蓉、一重ピンクの芙蓉、一重白の芙蓉、一重酔芙蓉、八重酔芙蓉、くす玉酔芙蓉などがあります。
まず、6月ごろから一重で濃紅色をした紅芙蓉が咲きはじめます。
夏になると、まず芙蓉が咲き始め、初秋から酔芙蓉が咲き始めます。
ただし、2019年のように8月に一斉に開花して9月にはいったん終わり、10月に再度咲きはじめるというパターンもあります。
芙蓉や酔芙蓉を妙蓮寺境内に植え始めたのは30年ほど前と、それほど古い話しではありません。
今や京都随一の名所として知る人ぞ知る存在です。
芙蓉は境内各所で咲いているの見ることできますが、特に本堂前は一重と八重の白からピンクの芙蓉がたくさん咲きます。
門前の紅色を中心とした一重の芙蓉も見ごたえがあります。
芙蓉が散りはじめるのと合わせて酔芙蓉が見頃を迎えます。
芙蓉と酔芙蓉の両方を楽しめる、京都一の名所と言ってよく、長く楽しむことができます。
10月に入ると、秋に咲く桜として知られる「御会式桜(おえしきざくら)」も咲きだし、境内はますます賑やかになります。
芙蓉の見頃は8月中旬~10月上旬ごろです。
冬の間は、地上部はばっさりと刈り取ってしまいます。
拝観情報
塔頭8ヶ寺を擁する本門法華宗(ほんもんほっけしゅう)の大本山寺院です。
京都に日蓮の教えを広めた日像(にちぞう)によって鎌倉時代に創建されました。
京都各地を転々としたのち、天正15年(1587年)に秀吉の京都改造に伴い現在地に移転しました。
同じく法華宗(日蓮宗)系の大寺院が集まる寺之内の一角にあります。
「十六羅漢の庭」といわれる石庭や長谷川派による障壁画で知られます。
日蓮上人の命日である10月13日に行われる御会式(おえしき)の頃に開花する御会式桜が有名です。
拝観時間 | 10:00~16:00(芙蓉は日中随時エリア) |
定休日 | 水曜 |
拝観料 | 500円(芙蓉は境内自由エリア) |
住所 | 上京区寺ノ内通大宮東入ル |
アクセス | 地下鉄「今出川」より徒歩16分 |
公式ホームページ:本門法華宗 大本山 妙蓮寺
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③ 東福寺(とうふくじ)<東山区>
おすすめポイント
京都でも随一の群生する芙蓉が見られるのは、東福寺の端っこ。現在の寺域の南西端にある南大門です。
東福寺境内というより、京都と伏見を結ぶメインストリートだった本町通から東へ少し入ったところです。
門の両側に白からピンクの一重の芙蓉が咲き誇ります。
寿命が一日の一日花ながら次から次へと絶えることなく開花し、道路脇には散った芙蓉の花でぎっしりになります。
門を通る道路は自動車も通行するので、十分に気を付けてください。
見頃は8月中旬~10月中旬ごろとかなり長めです。
拝観情報
京都五山の第四位として栄えてきた臨済宗東福寺派の大本山寺院です。
東福寺という名は奈良の東大寺の「東」と興福寺の「福」にちなみます。
禅寺として大伽藍を持ち、京都五山文化の一翼を担ってきました。
秋の紅葉は京都で最も有名と言っても過言ではないほど人気です。
芙蓉が咲く南大門は、桃山時代の建立の四脚門(しきゃくもん)で京都府の指定文化財です。北大門、中大門と共通した形式です。
2021年5月10日と2023年2月16日には南大門を通り抜けようとしたトラックが軒先と接触し、一部損壊するという事故がありました。
東福寺の一部とはいえ、京阪・JR東福寺駅よりは、京阪鳥羽街道駅の方が近くになります。
拝観時間 | 4~10月 9:00~16:30(受付は16:00) 11月~12月第一日曜日 8:30~16:30(受付は16:00) 12月第一日曜日~3月 9:00~16:00(受付は15:30) 芙蓉の咲く南大門は日中随時エリア |
拝観料 | 大人 400円 小中学生 300円 芙蓉の咲く南大門は境内自由エリア |
TEL | 075-561-0087 |
住所 | 京都市東山区本町15丁目778 |
アクセス | 京阪「鳥羽街道」より徒歩7分 芙蓉の咲く南大門の場合 |
公式ホームページ:臨済宗大本山 東福寺 -日本最古の最大級の伽藍-
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④ 祇園白川(ぎおんしらかわ)<東山区>
おすすめポイント
四季を通じて様々な花が咲く京都を代表するスポットである祇園を流れる白川沿いは、晩夏から初秋にかけて芙蓉で彩られます。
京都を代表する趣きある町並のなか、溶け込むように一重の白やピンクの芙蓉が咲いています。白川の向こうには歴史ある料理旅館などが建ち並んでいます。
見頃は8月下旬~10月中旬ごろです。
見学情報
京都市街でも東の端にある八坂神社の門前町として生まれ、江戸時代からは大衆文化の街として発展しました。
特に新橋通には江戸末期から明治初期の町家が残り、京都市内でも4ヶ所しかない「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています
白川沿いの道(白川南通)は、戦時疎開によって誕生した実は歴史の浅い京都の道です。
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⑤ 京都府立植物園<左京区>
おすすめポイント
日本最大級の植物園である京都府立植物園では、四季彩の丘や北山門前など園内各所で芙蓉を見ることができます。
園内北西部にある四季彩(しきいろどり)の丘は、2012年に宿根草・有用植物園をリニューアルしてオープンしました。
エリア内には3つの丘陵が造成されており、主に西側の丘陵斜面に芙蓉が植えられています。
近縁種であるアメリカフヨウやモミジアオイ、両者の交配種であるタイタンビカスなど、植物園だけあって他ではあまり見ないような芙蓉の仲間の花もたくさんあります。特に北山門前で見られるタイタンビカスは、神話の巨人(タイタン)に由来することからもわかるとおり、20cmを超える大きな花を咲かせるので驚きです。
見頃は9月上旬~10月上旬です(タイタンビカスは8月頃)。
入園情報
1924年に開園した日本を代表する植物園です。京都府民の休日のお出かけ定番スポットです。
広い敷地をぶらぶら歩けば、植物が約12,000種。
桜や梅、つばき、花しょうぶ、あじさいなど昔から親しまれてきた植物のほか、バラ園など左右対称の造形美が楽しめる洋風庭園など変化に富んでいます。
熱帯の植物が見られる温室もあります(別途入館料が必要です)。
休園日 | 12月28日~1月4日 |
入園時間 | 9:00~17:00(受付終了は16:00) |
拝観料 | 一般 :200円 高校生 :150円 中学生以下:無料 |
TEL | 075-701-0141 |
住所 | 京都市左京区下鴨半木町 |
アクセス | 地下鉄「北山」よりすぐ |
公式ホームページ:京都府立植物園 Kyoto Botanical Gardens/京都府ホームページ
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おまけ:芙蓉(フヨウ)と木槿(ムクゲ)の見分け方
接ぎ木ができるくらい近縁な芙蓉と木槿は見た目も似ています。
芙蓉の方が開花が遅めですが、同時に咲いているのも良くみかけます。
識別方法として、決定的に異なるのは雌しべです。
他にも
- 大きく掌状の葉のフヨウに対し、小さ目で葉の先が少し尖ったムクゲ
- 枝分かれしこんもりと枝を広がるフヨウに対し、箒状に上へと枝をのばすムクゲ
といった違いがあり、芙蓉と木槿の識別は困難ではありません。
他にも同じフヨウ属として、ハイビスカス、モミジアオイ、アメリカフヨウ、ハマボウなどがあります。
アメリカフヨウは、北アメリカに分布しているモスケウトス類の園芸品種の総称です。
15cm以上の大きな花を咲かせるのが特徴です。
原種であればそれぞれ識別は可能ですが、種間雑種の園芸品種もあり、一筋縄にはいきません。
フヨウ属を含むアオイ科には、オクラ(トロロアオイ属)、タチアオイ(タチアオイ属)、ワタ(ワタ属)などがあり、いずれも似たような花を咲かせます。
おわりに
ようやく京都でも暑さのピークも過ぎ、季節が秋へと移ろうとする京都は、比較的花が少なくなる時期です。
そんな時期に長期間にわたって咲き続けるのが芙蓉です。
晩夏から初秋に京都観光で花を楽しみたいという方は、芙蓉もお勧めです。
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