お客様第一主義と従業員満足 教育で解決していく|アクシアル×長岡技大×MKの鼎談から

ひと よみもの
お客様第一主義と従業員満足 教育で解決していく|アクシアル×長岡技大×MKの鼎談から

9月28日、アクシアルリテイリング株式会社(新潟県長岡市)の前副社長である五十嵐安夫特別顧問、長岡技術科学大学の鈴木信貴准教授、MKの青木信明社長の3人の鼎談がMK本社で設けられました。

アクシアルリテイリングと鈴木先生の研究室とは講義などで協力関係があり、鈴木先生の研究室とMKとはMK新聞を通して関係がありました。
今回鈴木先生を橋渡しに、3者の鼎談が実現。鈴木先生の研究室の学生の方も同席し、従業員満足度、顧客満足度など経営課題について話が盛り上がりましたので、本紙面でも紹介いたします。

鼎談

鈴木准教授

アクシアルの五十嵐顧問からMKの経営理念・方針をぜひ聞きたいとのことで今回の鼎談となりました。まずは、MKの経営理念をうかがってもよろしいでしょうか。

 

青木社長

お客様第一主義と従業員満足を目指すという根本は変えてはいませんが、時代とともにその具体的内容や手段は変化させていかないといけないと考えています。
特に、今の時代は変化が大きく、パラダイムシフトが起こっていますね。

タクシーはお客様の人命・財産を預かります。安全が第一です。
しかし、事故は起こり得ます。
これは100%ヒューマンエラーです。なので、従業員への教育を大切にしてきました。
創業当初、従業員への教育は、挨拶から始まりました。
挨拶は、本能でするものではなく、教育によってできるようになるものです。

今、当時以上の教育ができるかが課題です。
これまでの教育は、過去の経験を繰り返してきました。
今、コロナ禍で教育もオンラインになってきて、衰退していくのではと心配しています。
これまで、その場でこうするのだと教えてきました。教育は熱いうちに打てという感じです。
現場に行って従業員に会って教育をする形で、MKの「全員業務集会」がその役割を果たしていました。

オンラインになって、同じことができるのか、課題です。
また、教育には、従業員と会社との関係、具体的には価値観の共有が大切だと考えていますが、今の従業員の価値観に対し、会社の価値観が古くなっていないか、これも課題ですね。

 

鈴木准教授

五十嵐顧問は、なぜMKの経営理念に興味を持たれたのでしょうか。

 

五十嵐顧問

昭和50年代当初、京都のMKではないタクシーの運転手に、「MKは『(M)まもなく(K)消える」タクシーというのだ」と話しかけられ、印象に残りました。
私は、昭和51年から新潟に移り住みますが、その後も京都に来た時にMKタクシーを利用しました。
知人から「ホテルの人とMKタクシーの人を間違えた」という話も聞きました。
加藤勝美さんがMKタクシーについて書かれた本も読みました。

MKタクシーは消えるどころか、人への移動サービスを極めて、活躍されているのだと思いました。
タクシーは一対一のサービスで、ドライバー本人がその場で気づいてやらないとサービスはできないないと考えたら、すごいことをされているなと。
我々アクシアルは食べ物を扱う事業で業種は異なりますが、パートタイムは1万人ほどおります。
タクシーも人が多いなかで、一人ひとりのサービスを磨かれているので、参考にさせてもらいたいと考えました。

アクシアル・五十嵐顧問(写真手前左)と長岡技科大・鈴木准教授(写真手前右)

アクシアル・五十嵐顧問(写真手前左)と長岡技大・鈴木准教授(写真手前右)

青木社長

創業当初、移動手段といえば、市バス・市電しかなかった時代ですね。タクシーは、神風タクシーといわれ、業界のサービスは悪かったのです。

MKでは、まずは、従業員満足度ESを高めてから、具体的には賃金を上げてから、次に顧客満足度CSを高める施策を打ちました。
従業員の賃金を大幅に上げた時、周りからは「MKはすぐにつぶれるぞ」と言われたものです。
その後、サービス向上として、あいさつ運動、ありがとうと言おうとか、乗車拒否をしないとか、身障者を優先させることなどを行いました。
一般常識的なことですが、当時の業界では非常識なことでした。
MK創業者、私の父が、タクシー業界にとらわれずにできたのは、もともとガソリンスタンド事業から始めたためでしょう。
ガソリンスタンドの経営・営業から、あいさつと清掃というCSサービスが大切だと分かっていたのでしょう。

MKのサービスの質は、今の方がもちろん高いのですが、お客様の評価となると昔の方が高いかもしれません。
今、MKのの挨拶ができているかと調査しても、100%達成とはいきません、残り数%がどうしてもできていないということがあります。

 

五十嵐顧問

青木社長にとってのメンター、ビジネスの指導者は、お父様なんですね。

 

青木社長

そうですね。
父は仕事に厳しかったですね。
家族としては人としては優しいのですが。

正しいことをしているのですが、根回しが下手でしたので、勘違いされることが多かったと思います。
タクシーの禁煙も、業界や関係者、お客様や従業員に相談することなく、突然やってしまいました。
一部に反発があって、当時は大変だったのです。
運賃値下げも、業界と相談せず、突然やってしまう。

でも、現場のドライバーには人気があった、慕われていました。
人として優しい面が現場には伝わっていたのでしょう。
経営者であっても、ゴルフではなく会社に行く、常に現場を大切にする人でしたので。

MK・青木社長(写真奥)

MK・青木社長(写真奥)

鈴木准教授

いま、各業界で供給不足・人手不足が問題になっていますが、タクシー業界、御社ではいかがですか?

 

青木社長

タクシーも供給不足・人手不足になっていますね。
必要な時に、そこにあるのがタクシーのよさですが。
従業員満足ESだけを考えると需要を多めがよいですが、お客様満足CSを考えると供給を増やさないといけません。
ノウハウの蓄積や技術革新があり、大口需要がある日時情報、タクシーの現在地情報などはわかるようになっていますので、うまくマッチさせるようにしていきたいです。

 

学生の方

先が見えない社会と言われています。
そんな社会で企業としては何が必要になるでしょうか。

 

青木社長

「人間力」が必要だと思います。

法規制や物理的障壁は緩和・撤廃されるでしょう。
タクシーでいえば、コロナ禍で軽症者搬送や貨客混載で規制緩和がありました。
タクシー業界は人手不足です。
今でも需要に対して80%程度の供給力です。
これからさらに減ります。
そうすると、欧米のように日本でもライドシェアが解禁され、ライドシェアが人の移動の中心になるでしょう。
タクシーはもちろん主要交通はライドシェアにとっって代わるでしょう。
さらに、2050年、2060年には、人がいらない車が主流になり、運行に人の管理が不要になります。

それでも従業員教育・人間教育が不要になることはないと考えます。
人の介在が必須のマーケットはあるからです。

ガソリンスタンドでもセルフ業態に変化しています。
しかし、人がいるからこそ、脱ガソリンとしてタイヤや整備や保険を案内することができます。
タクシーでも運送外収益を増やすことが今後の課題です。
今、MKでは営業所ごとに観光課があり、歴史・観光を学んでいます。
観光ドライバーのランク試験があり、ランクアップするとお客様から個人指名が得られます。
京都での一般タクシー利用は午前の病院送り迎えが多いですが、春秋の観光シーズンには、観光・旅行需要が増えます。
これからはインバウンドも回復します。

A地点からB地点への移動に付加価値をつけることが必要です。
観光案内だったり、外国語での案内だったり。付加価値をつけるには、従業員への教育が必要です。
教育して、血が通ったものになるか、そのあたりが重要になってきます。
タクシーは少なくなりますが、高付加価値サービスの必要性は高まります。
人間力があれば、教育して高いサービスを提供することができると考えます。

鼎談後にはMK本社を見学

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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