MKメディア

京都のタクシー会社が運営するライフスタイルメディア

秋から冬に咲く「桜」があるのを知っていますか?季節外れに開花する秘密とは

f:id:mk_taxi:20200417155929j:plain

桜と言えば春ですが、秋から冬にかけて季節外れに咲く桜の品種もたくさんあります。
十月桜、冬桜、四季桜、子福桜、不断桜、アーコレードなどが代表的です。
なぜ桜が季節外れの秋や冬に咲くのかについてなど、桜の進化の過程を踏まえて解説します。

 

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

 

桜の開花のメカニズム

桜とは

日本で一般に桜(サクラ)と呼ばれているのは、日本に分布するバラ科サクラ属サクラ亜属の野生種及びその園芸品種です。
サクラ亜属は、北半球の温帯に広く分布しますが、日本に自生している野生種は山桜(ヤマザクラ)、紅山桜(ベニヤマザクラ)、霞桜(カスミザクラ)、大島桜(オオシマザクラ)、熊野桜(クマノザクラ)、江戸彼岸(エドヒガン)、豆桜(マメザクラ)などです*1

これらの中でも、野生種をかけあわせた園芸品種の一部に、秋から冬に咲く桜が存在します。

夏に花芽が形成

秋や冬などの季節外れに咲く理由の前に、まず普通の桜がどのように開花するかのメカニズムについて説明します。

日本に分布するサクラ亜属及びその園芸品種を含む、いわゆる「桜」は、春に花が散ると、すぐに翌年の開花の準備を始めます。
夏ごろになると、葉の付け根に花芽(はなめ/かが)という将来花になる小さな芽を作ります。

桜の花芽

葉の付け根にできた花芽 撮影:MKタクシー

3つでワンセットになっていることが多く、真ん中が葉のもとになる葉芽(はめ/ようが)で、両側が花芽というのが基本です。

冬は休眠状態で越冬

そして夏が終わり日照時間が短くなりはじめると、花芽の成長を抑える植物ホルモンが供給され、花芽は休眠状態になります。
花芽は、寒い冬を休眠したままで越します。

桜の花芽

休眠中の花芽 撮影:MKタクシー

真冬の寒さに一定期間さらされると、成長を促す植物ホルモンが供給され、休眠状態が解除され。
この休眠が解除されることを「休眠打破」といいます。聞いたことがあるという人も多いでしょう。決して眠眠打破ではないのでご注意を。

「休眠打破」で開花

休眠打破にはある程度の冬の寒さが必要です。
必要な冬の寒さは桜の種類によって異なり、ソメイヨシノの場合は種子島が南限です。それより南では冬の寒さが足りずに開花できません。
そのため、冬も温暖な沖縄では一般に桜といえば、寒緋桜(カンヒザクラ)のことを指します。

桜前線とは言いますが、近年では東京が鹿児島や高知といった暖かい地域よりも早く咲くことが多いのも、休眠打破が関係しています。
近年の暖冬傾向により、鹿児島や高知では休眠打破に必要な冬の寒さが不足気味になっています。
一方で、東京はちょうど休眠打破に必要な冬の寒さとその後の気温の上昇という条件を兼ね備えているためです。

桜の花芽

休眠打破した花芽 撮影:MKタクシー

冬に休眠打破が行われたあと、花芽は開花へ向けて成長しますが、気温が高いほど早く成長し、開花します。
この気温に比例して成長するという仕組みがあるため、桜の開花予想がかなり正確にできるのです。

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

なぜ季節外れの秋から冬に咲く桜があるのか

桜の祖先はヒマラヤに

前述の仕組みにより、桜は春に咲くのですが、季節外れの秋から冬に咲き始める桜があるのはなぜでしょうか。
それには、桜の進化の過程が関係していると考えられています。

日本には園芸品種を除く10種類の桜が自生していますが、それらの祖先はヒマラヤであったという説が有力です。
ヒマラヤに分布するヒマラヤザクラがその祖先に近いであろうと考えられています。
そのヒマラヤザクラの開花期は、秋です*2
つまり、本来桜は秋に咲く植物であった可能性が高いのです。

桜が、東へ東へと分布を広げ、種が分化していく過程で、春咲きに変化していったというのです。

京都府立植物園のヒマラヤザクラ

ヒマラヤザクラ(京都府立植物園) 撮影:MKタクシー

冷涼乾燥な冬を越すための進化

一年中温暖多湿の地域で生まれた桜が冷涼乾燥な冬がある地域に進出するには、いかにして冬を越すかがポイントになります。
桜は、冬季にいったん生育活動を止めてエネルギーの消費を最小限に抑え、冬を越すという戦略を取ったのでしょう。
日本を含めた冬がある地域に進出するために、冬季の休眠という性質を獲得したのです。
こうして本来は秋に咲いていた桜が、冬を越すための進化の過程で春に咲くようになったということです。

ただし、この休眠打破という冬を越すためのシステムは温帯の落葉果樹に広く見られるものであり、桜の専売特許というわけではありません。
特にバラ科の植物によく見られます。

桜の祖先であるヒマラヤザクラとは

ヒマラヤザクラ

ヒマラヤザクラ(京都府立植物園) 撮影:MKタクシー

桜の先祖に近いであろうヒマラヤザクラは、ヒマラヤ周辺から中国南西部、ビルマ北部にかけての亜高山帯に分布するサクラ属の樹木です。
花色は白からピンク、濃紅色まで様々で、長い雌しべが特徴です。
散るときは花びらがバラバラに落ちるのではなく、花ごとポトリと落ちます。
二酸化炭素や二酸化窒素の吸収効率が高く、近年は環境浄化木としても注目を集めています。

ヒマラヤザクラ

ヒマラヤザクラ 桂川堤防(鳥羽の大石付近) 撮影:MKタクシー

日本では晩秋の11月頃から開花し、初冬の12月に見頃を迎えます。
京都でも、京都府立植物園や桂川堤防(鳥羽の大石付近)、清水寺で季節外れの晩秋から初冬に咲いているのを見ることができます。
ただし、ヒマラヤザクラは野生種なので個体差が大きく、1月や2月でも咲いていることもあります。

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

秋咲きの性質を持つ桜の園芸品種が誕生

先祖がえりを利用した品種改良

日本では春に咲く桜ですが、時折突然変異で先祖がえりし、季節外れの秋や冬に咲く桜の変異枝が生まれることがあります。
花芽の成長をおさえる植物ホルモンに何らかの不全が発生しているのかもしれません。

桜花図譜

1921年発行 三好学 著「桜花図譜」(国立国会図書館デジタルコレクション)

そのような秋や冬に開花した桜の変異枝を採取して接ぎ木し、何世代も重ねながら遺伝的に固定化することで、季節外れの秋に咲く桜の品種が誕生したと考えられています。

様々な秋咲きの桜が誕生

いくつかある季節外れの秋咲きの桜のうち、十月桜や冬桜は、江戸時代後期には既に記録に登場します。
当時の記録に残る十月桜や冬桜が、今の十月桜や冬桜と同一品種であると断定することはできませんが、可能性は高いでしょう。

天然記念物調査報告

1920年発行 内務省編「史蹟名勝天然記念物調査報告」(国立国会デジタルコレクション)

三重県鈴鹿市の子安観音寺にある白子不断桜は、1923年には国の天然記念物に指定された秋咲きの桜です。
古くから霊樹として知られ、1,200年前の創建時に芽吹いたと伝わります。

京都でも京都府立植物園の半木の森前で見ることができます。

京都府立植物園の不断桜

不断桜(フダンザクラ) 京都府立植物園 撮影:MKタクシー

気候によって秋にも咲いたり咲かなかったり

宇治市植物公園のアーコレード

アーコレード 宇治市植物公園 撮影:MKタクシー

秋から冬に咲く桜として近年人気を集めている桜に、アーコレードがあります。
アーコレードは、大山桜(オオヤマザクラ)と小彼岸(コヒガン)を交配してイギリスで作出された珍しい桜のひとつです。
原産地のイギリスでは春のみ開花する普通の桜ですが、気候の違いの影響か、日本で植えると秋から冬にも開花します。
はっきりした原因はわかっていませんが、おそらくイギリスよりかなり暑い日本の夏により、何らかの不全が発生して秋にも開花しているのではないでしょうか。
アーコレードは大輪の美しい花を咲かせる桜ですが、人気の理由の多くは秋から冬に開花するという性質が原因なので、ちょっとした怪我の功名です。

なお十月桜など他の秋咲きの桜をイギリスで植えても、ちゃんと秋から冬にも開花するので、 気候によって秋に咲いたり咲かなかったりするのはアーコレードの特性です。

秋咲きの桜の園芸品種

季節外れの秋から冬に咲く桜の園芸品種には、十月桜(ジュウガツザクラ)、冬桜(フユザクラ)、四季桜(シキザクラ)、不断桜(フダンザクラ)、子福桜(コブクザクラ)、アーコレードなどがあります。
これらの園芸品種の特徴や見分け方については、こちらを参照願います。 

media.mk-group.co.jp

 

桜の「狂い咲き」との違い

アクシデントで起こる狂い咲き

狂い咲き

兼六園菊桜の狂い咲き 撮影:MKタクシー

秋に咲く性質の桜の園芸品種とは別に、春に咲くはずの桜の品種が季節外れの秋や冬に咲くことがあります。
一般には「狂い咲き」と言われ、秋にはソメイヨシノの狂い咲きが季節外れの開花としてよくニュースになります。

夏に台風や虫害などで葉のほとんどを失ってしまうと、休眠をうながす植物ホルモンが供給されなくなることがあります。
休眠できないまま、たまたま秋に暖かい気温が続くと季節外れに開花してしまうのです。
「春と勘違いして咲いた」と言われることがあります。

桜が進化の過程で手にした休眠という手段を、台風や虫害といったアクシデントのために取れなくなってしまうことで、予定していなかった季節外れの時期に咲いてしまうのが狂い咲きです。

ソメイヨシノに限らず、様々な桜の品種が狂い咲きを起こすことがあります。

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

秋咲きの桜の咲き方

秋や冬に咲き始める桜は、秋にいったんある程度開花しますが、厳冬期には多くの花を落し細々と咲くだけで、春を迎えると盛大に開花します。
秋咲きとはいえ、春に咲く性質を失っているわけではありません。

品種や個体によってかなり差はありますが、ざっくり言うと、秋に3分の1くらいが開花し、春に残りの3分の2くらいが開花します。

京都にある妙蓮寺の御会式桜(おえしきざくら)を例に取ると、以下のとおりです。御会式桜は固有名詞で、品種としては十月桜(ジュウガツザクラ)です。

秋は控えめな咲き方

御会式桜

12月27日 撮影:MKタクシー

木の全体で桜が開花しています。
この時期に桜が咲いているのは珍しく、目立つのは間違いありませんが、秋から冬の開花期は、ピークでもこの程度です。
また、秋から冬の開花期は、開花の時期や咲き具合も年によって差がかなり異なります。
秋から冬にはわずかしか花を咲かせないこともあります。
秋の開花は一種の機能不全による開花なので、その年の気候や桜の調子の良しあしなどによって大きく左右されるのでしょう。

自家受粉ができない桜*3にとって、秋や冬に開花したところで受粉できる可能性は低いです。
運よく受粉できたところで、サクランボがうまく育つわけでもなく、子孫を残すためには役に立たない開花です。

冬は細々と開花

御会式桜

1月24日 撮影:MKタクシー

そして、厳冬期にはわずかしか開花していません。
個々の花の寿命は、桜の場合概ね1週間程度といわれているので、細々とではありますが、次々に新しい花が開花をしています。
品種や個体によって差はあるものの、全く咲いていないわけではない場合もあります。

春に盛大に開花

御会式桜

3月30日 撮影:MKタクシー

そして、春を迎えると盛大に咲き誇ります。秋と比べると花付きも違えば花の大きさも違います。
秋に咲いてしまった花芽の分、本来よりも咲いている花の数は少ないはずですが、他の桜に負けないほど春にも見事に咲く秋咲きの桜もあります。
秋と異なり、休眠打破を契機として開花するので、春の開花のタイミングは毎年大きくは変わりません。

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

秋から冬に咲く桜のあれこれ

文献に残る最古の桜は秋に咲く桜

日本で単に「花」といえば桜のことを指すことは有名です。それほど日本人に親しまれて来た桜ですが、さらにさかのぼり万葉集の頃は、花といえば梅のことであったことも知られています。
では、桜に関する記述のある最古の文献が何かといえば、720年に成立した日本書記です。

磐余池の桜

磐余池推定地 撮影:MKタクシー

日本書紀の巻第十二「履中記」で、402年に履中天皇が磐余市磯池(いわれのいちしのいけ)で11月に船遊びをしていたとき、季節外れの桜を見つけたことにちなんで、宮を磐余稚桜宮(いわれのわかざくらのみや)と名付けた、というエピソードが記載されています。

今は磐余池(磐余市磯池)は残っていませんが、跡地とされるところが橿原市東池尻町に残っています。
宮である磐余稚桜宮の跡地と伝わるところは、現在桜井市谷の若桜神社(わかさじんじゃ)です。若桜神社の境内にある「桜の井」が桜井の地名の由来でもあります。

磐余稚桜宮

磐余稚桜宮伝承地 撮影:MKタクシー

日本書記の記述が、今に残る文献上では最古のものです*4
ここで登場した桜が今につながる秋咲きの品種という可能性はほぼなく、狂い咲きをした桜であろうといわれています。

若桜神社

若桜神社 撮影:MKタクシー

このエピソードがはたして真実なのか創作なのかは検証しようがありません。しかし、少なくとも日本書記編纂のころには、桜に対する美意識が育っていたということは間違いありません。
それにしても、桜に関する最古の記録が秋に咲いた桜であるというのは興味深いことです。

おわりに

300種とも600種ともいわれる多彩な品種のある桜は、実に奥深い花です。
京都には多彩な品種の桜があり、秋から冬に咲く桜もあちこちで見られます。

紅葉シーズンに紅葉をバックに咲く桜や、花の少ない冬に咲く桜などがあちこちで見られます。
MKタクシーの観光ドライバーであれば、桜シーズン以外であっても桜を楽しめるスポットに関する情報が引き出しにたくさん入っています。

MKの観光貸切タクシーなら、京都の秋や冬を心行くまで楽しむことができます。
観光・おもてなしのプロといっしょに一味ちがう京都旅行を体験してみませんか?

MKの観光貸切タクシーの詳細はこちらをご覧ください

media.mk-group.co.jp

*1:他に、寒緋桜(カンヒザクラ)、唐実桜(カラミザクラ)も広く植えられており、一部は野生化しているが、人為的に持ち込まれたもので、自然分布ではないと考えられている。

*2:ヒマラヤでも標高3,000~4,000m付近の高所では、春咲きの桜もあるという。

*3:桜は自家不和合性という性質があり、同じ遺伝子を持った雄しべと雌しべでは受粉ができない。そのため、他の種との交雑が起こりやすい。

*4:厳密には、712年編纂の古事記に履中天皇の宮として磐余稚桜宮という名称と、そこに仕えた一族に若桜部という姓を与えたというエピソードがあるが、植物としての桜についての記載はない。