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秋から冬に咲く「桜」があるのを知っていますか?季節外れに開花する秘密とは

秋咲きの桜


桜と言えば春ですが、秋から冬にかけて季節外れに咲く桜の品種もたくさんあります。
十月桜、冬桜、四季桜、子福桜、不断桜、アーコレードなどが代表的です。
なぜ桜が季節外れの秋や冬に咲くのかについてなど、桜の進化の過程を踏まえて解説します。

 

 

桜の開花のメカニズム

夏に花芽が形成

季節外れに開花する理由の前に、まず普通の桜がどのように開花するかのメカニズムについて説明します。

日本に分布するサクラ亜属及びその園芸品種を含む、いわゆる「桜」は、春に花が散ると、すぐに翌年の開花の準備を始めます。
夏ごろになると、葉の付け根に花芽(はなめ/かが)という将来花になる小さな芽を作ります。

花芽

葉の付け根にできた花芽 撮影:MKタクシー

3つでワンセットになっていることが多く、真ん中が葉のもとになる葉芽(はめ/ようが)で、両側が花芽というのが基本です。

冬は休眠状態で越冬

そして夏が終わり日照時間が短くなりはじめると、花芽の成長を抑える植物ホルモンが供給され、花芽は休眠状態になります。
花芽は、寒い冬を休眠したままで越します。

花芽

休眠中の花芽 撮影:MKタクシー

真冬の寒さに一定期間さらされると、成長を促す植物ホルモンが供給され、休眠状態がとけます。
この休眠がとけることを「休眠打破」といいます。聞いたことがある人も多いでしょう。

「休眠打破」で開花

休眠打破にはある程度の寒さが必要です。必要な寒さは桜によって異なり、ソメイヨシノの場合は種子島が南限です。それより南では寒さが足りずに開花できません。
桜全線とは言いますが、近年では東京が鹿児島や高知といった暖かい地域よりも早く開花することが多いのも、休眠打破が関係しています。
近年の暖冬傾向により、鹿児島や高知では休眠打破に必要な寒さが不足気味になる一方で、東京がちょうど休眠打破に必要な寒さとその後の気温の上昇という条件を兼ね備えているためです。

花芽

休眠打破した花芽 撮影:MKタクシー

休眠打破後、花芽は開花へ向けて成長しますが、気温が高いほど早く成長し、開花します。
この気温に比例して成長するという仕組みがあるため、桜の開花予想がかなり正確にできるのです。

なぜ季節外れの秋に開花する桜があるのか

サクラの祖先はヒマラヤに

前述の仕組みにより、桜は春に開花するのですが、季節外れの秋に咲き始める桜があるのはなぜでしょうか。
それには、桜の進化の過程が関係していると考えられています。

日本には園芸品種を除く10種類の桜が自生していますが、それらの祖先はヒマラヤであったという説が有力です。
ヒマラヤに分布するヒマラヤザクラがその祖先に近いであろうと考えられています。
そのヒマラヤザクラの開花期は、秋です。
つまり、本来桜は秋に開花する植物であった可能性が高いのです。

桜が、東へ東へと分布を広げ、種が分化していく過程で、春咲きに変化していったというのです。

冷涼乾燥な冬を越すための進化

一年中温暖多湿の地域で生まれた桜が冷涼乾燥な冬がある地域に進出するには、どう冬を越すかが重要になります。
桜は、冬季にいったん生育活動を止めてエネルギーの消費を最小限に抑え、冬を越すという戦略を取ったのでしょう。
日本を含めた冬がある地域に進出するために、冬季の休眠という性質を獲得したのです。
こうして本来は秋に咲いていた桜が、進化の過程で春に開花するようになったということです。

ただし、この休眠打破というシステムは温帯の落葉果樹に広く見られるものであり、桜の専売特許というわけではありません。
特にバラ科の植物によく見られます。

桜の祖先であるヒマラヤザクラとは

ヒマラヤザクラ

ヒマラヤザクラ(京都府立植物園) 撮影:MKタクシー

桜の先祖に近いであろうヒマラヤザクラは、ヒマラヤ周辺から中国南西部、ビルマ北部にかけての亜高山帯に分布するサクラ属の樹木です。
花色は白からピンク、濃紅色まで様々で、長い雌しべが特徴です。
散るときは花びらがバラバラに落ちるのではなく、花ごとポトリと落ちます。
二酸化炭素や二酸化窒素の吸収効率が高く、近年は環境浄化木としても注目を集めています。

京都でも、京都府立植物園や清水寺で季節外れに咲いているのを見ることができます。

秋咲きの性質を持つ桜の園芸品種が誕生

先祖がえりを利用した品種改良

日本では春に開花する桜ですが、時折突然変異で先祖がえりし、季節外れの秋に開花する桜の変異枝が生まれることがあります。
花芽の成長をおさえる植物ホルモンに何らかの不全が発生しているのかもしれません。

桜花図譜

1921年発行 三好学 著「桜花図譜」(国立国会図書館デジタルコレクション)

そのような秋に開花した桜の変異枝を採取して接ぎ木し、世代を重ねながら遺伝的に固定化することで、季節外れの秋に咲く桜の品種が誕生したと考えられています。

様々な秋咲きの桜が誕生

いくつかある季節外れの秋咲きの桜のうち、十月桜や冬桜は、少なくとも江戸時代後期には誕生していたとされています。

天然記念物調査報告

1920年発行 内務省編「史蹟名勝天然記念物調査報告」(国立国会デジタルコレクション)

三重県鈴鹿市の子安観音寺にある白子不断桜は、1923年には国の天然記念物に指定された秋咲きの桜です。
古くから霊樹として知られ、1,200年前の創建時に芽吹いたと伝わります。

季節外れの秋から開花する桜の園芸品種にどのようなものがあるかは、こちらを参照 

media.mk-group.co.jp

 

桜の「狂い咲き」との違い

アクシデントで起こる狂い咲き

狂い咲き

兼六園菊桜の狂い咲き 撮影:MKタクシー

秋に咲く性質の桜の園芸品種とは別に、春に咲くはずの桜の品種が季節外れの秋に開花することがあります。
一般には「狂い咲き」と言われ、秋にはソメイヨシノの狂い咲きが季節外れの開花としてよくニュースになります。

夏に台風や虫害などで葉のほとんどを失ってしまうと、休眠をうながす植物ホルモンが供給されなくなることがあります。
休眠できないまま、たまたま秋に暖かい気温が続くと季節外れに開花してしまうのです。
「春と勘違いして咲いた」と言われることがあります。

桜が進化の過程で手にした休眠という手段を、台風や虫害といったアクシデントのために取れなくなってしまうことで、予定していなかった季節外れの時期に咲いてしまうのが狂い咲きです。

秋咲きの桜の咲き方

秋に咲き始める桜は、秋にいったんある程度開花しますが、厳冬期には多くの花を落し細々と開花するだけで、春を迎えると盛大に開花します。
秋咲きとはいえ、春に咲く性質を失っているわけではありません。

品種や個体によって差はありますが、ざっくり言うと、秋に3分の1くらいが開花し、春に残りの3分の2くらいが開花します。

京都にある妙蓮寺の御会式桜(おえしきざくら)を例に取ると、以下のとおりです。御会式桜は固有名詞で、品種としては十月桜(ジュウガツザクラ)です。

秋は控えめな咲き方

御会式桜

12月27日 撮影:MKタクシー

木の全体で桜が開花しています。
この時期に桜が咲いているのは珍しく、目立つのは間違いありませんが、秋の開花期はピークでもこの程度です。
また、秋の開花期は、開花の時期や咲き具合も年によって差がかなり異なります。
秋にはわずかしか花を咲かせないこともあります。
秋の開花は一種の機能不全による開花なので、その年の気候や桜の調子の良しあしなどによって大きく左右されるのでしょう。

自家受粉ができない桜にとって、秋に開花したところで受粉できる可能性は低いです。運よく受粉できたところで、サクランボがうまく育つわけでもなく、子孫を残すためには役に立たない開花です。

冬は細々と開花

御会式桜

1月24日 撮影:MKタクシー

そして、厳冬期にはわずかしか開花していません。
品種や個体によって差はあるものの、全く咲いていないわけではない場合が多いです。

春に盛大に開花

御会式桜

3月30日 撮影:MKタクシー

そして、春を迎えると盛大に咲き誇ります。秋と比べると花付きも違えば花の大きさも違います。
秋に咲いてしまった花芽の分、本来よりも咲いている花の数は少ないはずですが、他の桜に負けないほど春にも見事に咲く秋咲きの桜もあります。
秋と異なり、休眠打破を契機として開花するので、春の開花のタイミングは毎年大きくは変わりません。

おわりに

300種ともいわれる多彩な品種のある桜は、実に奥深い花です。
京都には多彩な品種の桜があり、秋から冬に咲く桜もあちこちで見られます。

紅葉シーズンに紅葉をバックに咲く桜や、花の少ない冬に咲く桜などがあちこちで見られます。
MKタクシーの観光ドライバーであれば、桜シーズン以外であっても桜を楽しめるスポットに関する情報が引き出しにたくさん入っています。

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