エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【222】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2008年4月16日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
定評のある辞書として知られる岩波書店の広辞苑が十年振りに改訂された。
第六版として発売されたのだが、この広辞苑には「番外版」があるのをご存じだろうか。
試しにグーグルとヤフーで検索したが、一件もヒットしなかった。
番外版は一九九三年に初めて「発行」され、以後、毎年版を重ねた。
私が持っているのは初版から第四版までと、第五版にあたる一九九七年版だ。
もっとも、この広辞苑番外版、実は辞書でも、ましてや書籍でもなく、PR用の小冊子で、編者は岩波書店の「宣伝部編」としてクレジットされている。
ただし、宣伝用とは言っても、折り本仕様で、文庫本よりひとまわり小さいサイズながら(というか、それがかえってカワイイ)、広告も入れて全二十一ページ。
デザインも広辞苑のパロディになっていて、なかなか凝っている。
内容もユニークで、目次(目次もある!)からいくつかピックアップすると、「広辞苑歌集」「クロスワード広辞苑」「ブックガイド広辞苑」「広辞苑段位認定試験」「広辞苑教育委員会」など。
これらは一九九一年に刊行された広辞苑第四版の宣伝用に作成され、書店で無料配布された。
などと、オタクっぽい話題を取り上げたが、私は広辞苑フリークではない。辞典や事典の類は好きで、家の中は各部屋そこらじゅうに置いてあり、かき集めると百冊以上、特に国語辞典は各社新旧いろいろ使っているが(岩波国語辞典も)、広辞苑だけは一度も購入したことがない。
広辞苑は国語辞典としての用途だけでなく、いわゆる百科語を収録しているのが特徴で、人気の理由らしいが、個人的にはこの百科語が「帯に短し襷に長し」。触感的にも、あの大きさ、厚さ、重さがどうも好きになれない。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)