エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【196】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【196】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2007年3月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

ブックオフの百円コーナーの文庫の棚に『エロ本』という書名の本があった。手にとって、とりあえず前書きに目を通してみると、いきなり「あ、この本、エロないです」とサラリ。ニヤリとしながら、さらに先を読み進めると「書名に惹かれて手に取られたのも何かの縁ですから」ときた。まあ、とにかく読んでみて下さいというわけだ。やられたというか、なかなかやるなというか。
この本は、タイの国民的コメディアンのエッセイ集の邦訳だそうで、原題を直訳すれば「ポルノ本」。つまり、訳者が本屋で読者を引っ掛けようと、まったく関係のない邦題を冗談で付けた、ということではないらしい。また、原題にしても、包み隠さず(裸になって)書かれた本という意味なのだとか。
もっとも、それは込められた意図の半面で、もう半面は、コメディアンである著者がやはりジョークで付けた書名なのだろう。もちろん立ち読みしただけなので、先の引用は正確ではない。あしからず。

別にエロが読みたくて、あるいは見たくて手に取ったわけではないぞ。いまどき、エロが欲しかったら、いくらでも、どこででも、刺激的なものが手に入る。私も、もう大人だし、少しはおカネもある。わざわざブックオフの百円コーナーでエロ本を探す必要なんかないんだ。ちょっとおかしな書名だなあと思って手に取っただけで……なんて、立ち読みをしながら、しなくてもいい言い訳、反論を前書きに対して心の中でしたりして。

このように、書名が気になって手に取ってみる本がある一方で、まったく手に取る気がしないという書名の本もある。例えば、昨年ベストセラーになった『国家の品格』や『美しい国へ』、近年流行のキワモノ的書名の『人は見た目が9割』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など。もちろん、読むつもりはない、読んでいないのだから、私にとってそれらの本は良いも悪いもない。「読んでみなければわからない」ということを確かめる暇もない。それは、縁がないとしか言いようがない。まさに、本が読者を選ぶのだろう。
読者が本を選ぶのも、本が読者を選ぶのも、それは読書の自由だ! ♪読書・イズ・フリーダム♪

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
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40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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