フットハットがゆく【277】「渋滞の思い出」|MK新聞連載記事

よみもの
フットハットがゆく【277】「渋滞の思い出」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2016年12月1日号の掲載記事です。

 

渋滞の思い出

僕は今京都でテレビ番組の制作の仕事をしておりますが、今と昔とで大きく違うのはやはり、パソコンとインターネットの存在ですね。
僕がこの業界に入った25年ほど前は、1時間のレンタル料が5万円くらいの特殊スタジオに10時間以上こもらなければできなかった編集でも、今はパソコンで簡単により高画質に処理できるようになりました。

インターネットの存在も大きいですね。
25年前のAD(アシスタントディレクター)時代。
放送局に出すドキュメンタリー企画書制作のために、「渋滞について調べてくれ」と、当時の上司ディレクターから命令されました。
「渋滞のドキュメンタリーなんて、何が面白いんだ…」と内心思いながらも、いろいろ取材にまわりました。
今じゃネットで、ちょちょいのちょいで調べられることも、当時はあっちの図書館へ行き、こっちの図書館へ行き、国土交通省に取材に行ったり、警察に取材に行ったり、数ページの企画書を作るために、何週間もかけて取材しなければなりませんでした。

当時の記憶を辿って、集めたネタを思い出してみます。

渋滞の定義は関東と関西で違って、車がある一定のスピードを出せなくなったら渋滞と呼ぶのですが、首都高速が20キロ以下、阪神高速が30キロ以下だそうです。
関東と関西で定義が10キロ違うということで、関西人の方が運転に関して気が短い、ということがいえます。

自然渋滞という言葉があります。
事故や工事でもないのに、なぜか高速道路などで大渋滞することです。トンネルの入り口などでよく起こります。
一番先頭の人が、トンネルに入る瞬間、ほんの少しブレーキを踏みます。100キロで走っていた車が99キロになります。その後ろの車は、前の車がブレーキを踏んだので、少し強めにブレーキを踏みます。
98キロになります。1台で1キロずつ減速すると、100台後ろは0キロになって止まってしまう、というのが自然渋滞なんですって。
もちろん、空いている時は起こりません。
車の量が道路に対して飽和状態になると起こるそうです。
ちなみに先頭の車がブレーキを踏むパターンは、トンネルの入り口、出口の他に、景色がキレイ、目に付く建物が見えた、派手な看板が見えた、など理由はさまざま。
都会の高速道路の脇にはセクシーな看板がある場合もありますが、そこを先頭に自然渋滞が起こることも…。

渋滞の先頭が事故現場、ということもあります。
高速道路で事故の起こる場所の近くには、墓地があることが多いそうです。墓地…幽霊…幽霊を見たドライバーが運転を誤って事故…。
背筋がぞっとしますが、実際には、土地買収の時に墓地は買い取りが難しく、高速道路側が墓地をよけるように造られ、結果、カーブが多くなり、事故が増える…そうです。

まぁそういったことを企画書にまとめて、放送局に持って行きましたところ、プロデューサーは2秒で『渋滞?…地味で面白くない』とボツ。
3週間の取材努力が2秒で消える。そういう時代もございました…。

 

田舎暮らし公開中! YouTube『塩見多一郎』で検索!

 

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

フットハット バックナンバー

この記事が気に入ったらSNSでシェアしよう!

関連記事

まだ知らない京都に出会う、
特別な旅行体験をラインナップ

MKタクシーでは様々な京都旅コンテンツを
ご用意しています。