フットハットがゆく【115】「一等心意」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく【115】「一等心意」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
MK新聞2006年8月16日号の掲載記事です。

一等心意

7月の27日から30日まで、今年も日本バイクレース界夏の祭典、『鈴鹿8時間耐久ロードレース』が行われ、僕も某チームのピットレポート担当として4日間ビデオカメラを回した。
そこで今回はバイク豆知識を一つ二つ書いてみたいと思う。
ちなみに僕はバイクに乗らないし、バイクのことも詳しくない。
過去3年の撮影過程で得た情報をもとにあえて素人の目線で書いてみる。

●タイヤについて…

サーキットのコースを実際に歩いてみると、イタチの糞のような黒く細かい物体が無数に転がっている。
「サーキットを棲み家にしているイタチがいっぱいいるんやなぁ…?」と思っていた。
が、実はそれは糞ではなくタイヤの屑であった…。レース用のタイヤというのは非常にツルツルしている。
こんなにツルツルではカーブで滑ってしまうじゃないか?と思うのだが、実際にコースを走ると路面温度と摩擦熱でゴムが融けてベトベトの状態になる。
このベトベト粘着力でアスファルトをしっかりと捉え、グリップ力を上げるのだ。
こうするとエンジンのパワーがしっかり路面に伝わるし、カーブでも滑りにくくなる。
ただし、ベトベトゴムはレース中にどんどん削られて屑をまき散らし、約1時間で使い物にならなくなる。
そこでピットインしてタイヤ交換をするのだ。
ちなみに雨が降るとゴムは融けずにただのツルツルタイヤとなってしまうので、雨天用に交換する。
この雨天用が、接地面に多数の溝が入ったよく見るタイプのタイヤなのである。

●マシンについて…

8耐で使用されるバイクは基本的に市販車がベースになっており、規定内で改造されてレースが行われる。
元は同じバイクなのに、レース結果には何十週という大きな差が出るので不思議だ。
関係者に聞くと、やはりお金をかけて改造すると、なんぼでも速くなる…とのことだったが、今回は別の情報も得た。…
バイクというのは年々進化しているが、基本の構造は昔からあまり変わらないそうである(一部コンピュータ制御になった部分を除く)。
では一体どの部分がバイクの進化につながっているかというと、部品の耐久性向上、軽量化が大きいそうだ。
しかし全く同じ設計図で全く同じ部品を組み合わせて出来たマシンでも、完成した時点で優劣が出るらしい。
これは部品同士の数百分の一ミリ単位の相性の問題なのだそうだが、とにかく精密テストをしてみるまでそのバイクの出来の善し悪しは分からない。
テストされたバイクはA~Dランクまで分けられ、A、Bランクはレース用バイクとして使用。C以下が市販車となる。

ワークスチーム(バイクメーカーが直接チームを運営する)は、自社のAランクマシンを自チームにあてる。
プライベーターチーム(個人で出資しチームを運営する)はコネクションの強いところでBランク、そうでないところは市販車(C、Dランク)を購入する。
この時点で、名前は同じバイクでも、チームによって差が出ることになるのである。
いやはや、バイクの世界も奥が深い…。
メカニックたちの一等になるための心には計り知れないものがある…。

伊藤真一1966~ ライダー。8耐では6度のポールポジションを獲得。2006年総合優勝。

伊藤真一1966~ ライダー。8耐では6度のポールポジションを獲得。2006年総合優勝。

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