フットハットがゆく!【377】「スコープの話」|MK新聞連載記事

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フットハットがゆく!【377】「スコープの話」|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、塩見多一郎さんのエッセイ「フットハットがゆく」を2001年11月16日から連載しています。
今回はMK新聞2026年9月1日号の掲載記事です。

スコープの話

僕は狩猟をするハンターです。主にシカやイノシシを狙っています。自分の猟銃の上にはスコープを乗せています。細長い円筒型の照準器です。望遠鏡のような形で、覗くとクロスした線があり、その真ん中に弾が飛んで行くという、アレです。漫画の『ゴルゴ13』や、映画『ジャッカルの日』、『プライベート・ライアン』などに出てくるスナイパーを想像する人も多いでしょう。ということで、今回はスコープに関する話です。

スコープというと、クロスの中心に標的を持って来さえすれば、あとは引き金を引けば当たる、と思う人が多いでしょう。しかし実際は違います。弾道というのは実は真っ直ぐ飛んでおらず、放物線を描いています。ゴルフボールや野球のボールの軌道を想像してもらうと良いです。弾道も、引力に引っ張られ、下へ、下へと落ちていきます。自分の銃の性質、弾丸の威力などによって、この放物線の形は少しずつ変わります。

例えば、自分の狙いたい獲物が50m先にいると仮定して、どれだけ弾が落ちていくかを計算して、スコープのメモリを調整します。これを「ゼロイン」と言います。ゼロインは射撃場で行いますが、しっかり銃を固定して発砲し、的紙に当たった場所に照準を調整するという具合です。結果的に、狙ったところに弾が行くようになります。しかし、50mでゼロインした場合、それより遠い距離にいる獲物は、弾はスコープの照準より下に行ってしまい、逆に近い距離の場合は上に行く、ということになります。獲物は必ず50mの距離を走ってくるわけではありません。たった5mの距離を疾走して来たり、逆に200mも離れたところを駆けていく場合もあります。瞬時に、狙う位置を感覚で修正して撃たなければ、獲物には当たりません。実際には、銃身とスコープの高さの位置の誤差や、横移動のズレなどもありますので、さらに複雑です。

また、スコープというと望遠鏡のように覗くイメージがありますが、目をレンズに近づけすぎると、発砲の衝撃で銃が後ろに勢いよく下がるので、目にぶつかって怪我をします。なので、レンズから10cmほど目を離して覗く必要があります。この場合、真っ直ぐ平行に覗かないと、真っ暗で何も見えない、という事態が起こります。走る動物がいきなり飛び出してきた場合、とっさに正しい構えに入るには、なかなかの鍛錬が必要です。

このように、スコープを使い始めて2年経った先日、獲物に向けて連続発砲した際に、スコープが土台から吹っ飛んでしまいました。土台を固定していたネジが、衝撃の連続に耐えられず、破損してしまったのです。すぐに銃砲店へ行き、修理を依頼しましたが、「あなたの銃の威力とスコープの重さの釣り合いが取れていないので、修理してもまた同じことが起こる」と言われてしまいました。せっかく努力して練習して、スコープを使いこなせるようになってきたのに…さぁどうしましょう? つづく…

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