エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【317】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【317】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2014年9月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

卒業した大学近くに自宅があるので、休日はときどき散歩がてらに大学図書館に行ったりする。
昼は弁当を買って、キャンパスで食べたり。
私が通っていたころとは違って、校内は開放的で明るく、おしゃれで、きれいなベンチがたくさんあり、芝生や、野外ステージなどがある。
申請すると、卒業生のために、図書館のゲートを自由に出入りできるカードを無料で作ってくれる。
もちろん、本の貸し出しもできる。

実は高三の夏休みに、この大学の図書館に内緒で潜り込んで(当時はゲートなど、なかった)、受験勉強をしていたのだから、ずいぶんと長い付き合いになる。
自宅から少し遠い自治体の図書館より広く、すいていて、快適だ。
ただ、キャンパスは、よいほうに様変わりしたが、図書館内では、私が学生のころにはなかった非常に気になることが、今ではあたりまえのようになってきている。

それは何か――。
図書館内の静寂の中で、突然にシャッター音が鳴るのだ。
何回か続けて鳴り、その後、静けさを取り戻すのだが、しばらくすると、また別のところでシャッター音が鳴る。慣れない私は、その度ごとにドキリとする。
そう、学生がスマホやタブレットで本のページを撮影しているのだ。
昔は、コピー機で複写していたが、これが今どきのやり方なのだろう。
コピー機による複写はよくて、スマホでの撮影はよくない、と言っているのではない(その是非は別に論じるとして)。
静かな図書館内で鳴る耳障りなシャッター音はどうにかならないものか。
図書館に限らず、あなたは、シャッター音が近くで鳴ったらビクッとしませんか?思わず振り向きませんか?どこでシャッター音が鳴ったか気になりませんか?

ケータイやスマホのカメラ機能に、特に必要ではないシャッター音が付けられているのは、それが目的という話を聞いたことがある。
無音だと盗撮に気づかないから。
それはともかく、私たちはそのうち図書館内のシャッター音に慣れてしまうのだろうか。
慣れなければならない時代なのだろうか。撮影禁止を徹底、あるいはマナーの啓発がなされるようになるのだろうか。
それとも、喫煙室のように隔離した「撮影ルーム」なるものができるのだろうか。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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