エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【298】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2013年1月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
週刊文春が1月24四日号の新聞広告で「AKB大島優子、封印された『児童ポルノ』の過去、衝撃写真発掘!」というトップ級の大見出しを踊らせたのは1月17日朝刊だった。
私はその名前ぐらいは聞いたことがあるが、メンバーの顔の区別はつかない。
でも、ネット検索すれば、これが以前から流通していた情報だということがわかる。
なのに、封印された過去だとか、衝撃写真だとか、随分仰々しい扱いだ。
去年の夏ごろには写真の掲載も含め、同様の視点でこの件について指摘している投稿サイトが複数見つかった。
というより、熱心なファンなら、彼女が子役やジュニア・アイドルをやっていた経歴など、それ以前から普通に知っていたことなのかもしれない。
オークション・サイトでは、週刊文春が「入手した」と大層に言う、彼女が12歳、14歳に撮影されたDVDや写真集(共に絶版)の中古品が普通に売買されていた。
それらは、15歳以下のジュニア・アイドルと呼ばれる分野の商品だが、彼女のものがそうかどうかは別にして、中には「ポルノまがい」のものもあるので(すべてポルノだと言わなければ政治的に正しくない?)、見出しには、「児童ポルノ」という言葉が使われたのだろう。
雑誌を売らんがために。
実際、これで販売部数が増えるのだろう。
仮にネットで話題になり始めたのが半年前として、週刊誌ではそれがトップ記事になるのだ。
直前に問題となった他の卒業メンバーの「手ブラ事件」に絡めて。
そして、ネットで簡単に見られる画像なのに「発掘!」と自画自賛する。
それにしても、半年前のネット情報を活字にするだけで販売部数が増えるなら、雑誌の作り手はネットばかり眺めていればいいということになる。
この記事を「AKB48に限らず、『ポルノまがい』のアイドル写真集が増えていること、またその低年齢化への警鐘」だとか、「ネットで流通している情報なのに、雑誌やテレビは利害関係や圧力、自主規制でドル箱スターのAKB48について報道しないことこそが問題だ」などと、週刊文春の「報道」を正当化する理屈はいくらでも並べることができるが、その狙い、本音は、単に「ポルノまがい」商法への便乗に過ぎないのではないか。
http://examiner.co.jp/urayosi/urayosiyukitop.html
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)