エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【297】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【297】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2013年1月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

自宅ではアイパッド、外出時はアイパッド・ミニを使っている。アイパッド・ミニは自炊電子本を読むのにちょうどいい。
アプリもいいのがあるし、サイズ、重さで、今のところベストだろう。
画面の反射、映り込み、指紋がつくという大きな難点はあるが。

アイパッド・ミニに限ったことではないが、自炊電子本を読むようになってから、本を読む量が増えた。
理由を考えてみるのだが、よくわからない。
電子書籍リーダー(機器)は意外に読書に集中できるのかもしれない。でも、なぜ集中できるのかはわからない。

本の物質的要素が規格統一されて(器として透明な存在になる)、その端末に慣れると、純粋に内容にだけ意識が向けられるからかもしれない。
あるいは、画面をタップする(指でタッチする)と一瞬でページがめくれるので、紙の本のページをめくるよりも、意識や視線が途切れる時間がコンマ何秒かでも短いことが、意外に大きいのかもしれない。
手の動きも小さくてすむし。
また、何冊もの本を常時持ち歩いていることになるので、その時々の気分で今読みたい本、状況(まとまった時間かコマ切れ時間か、気力があるか気分転換が望みかなど)に相応しい本をその場で選んで読めるからかもしれない。
いや、その時の気分や状況に応じて選べる以前に、とりあえずリーダーに未読の本を何冊か自炊して入れておけば、読み始めることができる、つまり未読の本に手をつける機会が常にあるということが、電子書籍の読書が進む最大の理由かもしれない。
つまり「買っても積ん読(読まずに積み上げて置いたまま)」の防止になるということだ。

仕事術や自己啓発の本でしばしば指摘されていることだが、「実現していないプロジェクトの大半は着手すらしていない」というのがある。
とにかく手をつけること。そうすれば前進するというわけだ。
読書はスキルやツールも大事だが、実は、読み始めることができるかどうかが最初にして、最大の関所であり、電子書籍リーダーはそれをクリアしやすくしてくれるのかもしれない。
もっとも、リーダーの中にも未読の本が増え過ぎれば、「電子積ん読」になるだけだが……。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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