エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【290】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2012年6月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
iPhoneやiPadのアプリが購入(無料を含む)できるサイトAppStoreでは、カテゴリー別の人気ランキングが掲出されている。
「ブック」(電子書籍関連)の部を見ると、ベスト20位以内に「エッチ成功率100%!」「最強デート戦略」「女の本音&女体の秘密~女流官能作家が教えるLOVE&SEX~」「モテる男のデートの心理学~80のテクニック~」「いただきセックス!――やっぱり知りたい!Hな疑問大全集」「女医が教える飽きないエッチ」などが毎週並んでいる。
つまり、これが2012年上半期、ニッポンの電子書籍の現実だ。
ただ、このランキングは順位のみで実数はわからないし(関係者が購入してランクインさせてヒットさせる例が紙の本であったが)、また、このサイトの電子書籍の品揃えは、ほぼないに等しい。
他の一般的な電子書籍専門のネット書店なら違った結果になるだろうし、携帯電話向けに限れば市場の8割以上がマンガだという。
しかし、いずれにせよ、AppStoreのランキングもまた一面の真理であり、iPhoneだ、iPadだ、電子書籍元年だと騒いでいるが、実はたいした使われ方をしていないということがわかる。
もちろん、今この文章をたまたま読んでいるあなたのように、IT機器をいち早く導入、駆使して仕事を効率化し、自己実現し、知的生産(言葉が古い?)に励んでいる方も中にはおられるだろうが……。
かつて、ビデオ機器が普及する原動力になったのはポルノだと言われるし、最近の動画ネット放送でもHなハプニングがあったとの情報がばらまかれている(意図的に違いない)。
そんなもんだと言えばそれまでだが、私はここで、自分はエロに興味がないとそれとなく装いながら上から目線で評論し、エエカッコしたい、わけではない。
思うに、ほんとうにエロが好きなのなら、冒頭に上げたような安っぽいタイトルのコンテンツが満足できるようなものでないに決まっていると、想像できるのではないだろうか。
ただの暇つぶし?わずか八十五円だから?
そう、これらを購入している人は、もはやスケベですらない。
MK新聞について
「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)