エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【286】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2012年2月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
ラジオがマイブームだ。これまでの人生で今が一番、ラジオを聴いているのではないか。
チューナー付きICレコーダーのタイマーでデジタル録音した番組を別の携帯プレーヤーで外出中に聴いたり、自宅にいるときは各部屋のスピーカーにノートPCを接続して聴いているのだが、FM、AM合わせて、おそらく週に二十時間以上は録音(すべてNHK)している。
もちろん、すべてを聴くことはできず、未読の本と同様、音声ファイルは溜まっていくばかりだが(ただし、データは場所を取らないのでよい)、それはともかく、その時にたまたま放送されている番組を聞き流すのではなく、聴きたい番組だけを選んでいる。
FMは「ウイークエンドサンシャイン」や「ワールドミュージックタイム」などの音楽番組。AMは「カルチャーラジオ」や「文化講演会」などの文化番組。
特に「NHKラジオアーカイブス」は、放送局に保存されている故人作家の自作朗読やインタビューなどの録音が非常に興味深い。
これまで、永井荷風や谷崎潤一郎、川端康成、井伏鱒二などが放送された。
中高生のころは、AMの「深夜放送」に興味がないタイプだった。
死語となったが、FMの「エアチェック」派。カセットテープからMD、そしてiPodに象徴されるコンピューターのファイルへと、音声を保存する器が変化するにしたがって、既存の機器ではラジオ放送の録音とその後の取り回しがしにくくなり、次第に遠ざかっていったのだろう。
だから、チューナーと多数の予約設定ができるタイマー付きICレコーダーの登場で、またラジオを聴くようになった。
単純な話だ。人々のラジオ離れが進んでいると言われて久しいが、娯楽やメディアの多様化、住環境やライフスタイル、嗜好などの変化についてややこしいことを論じなくても、便利な機器さえあれば人々はラジオに戻ってくるような気もする。
ようやくインターネット放送が始まったが、かつてのエアチェック少年としては、ネット放送そのものの音質向上と安定化、多機能なPC用タイマー録音ソフト、あるいはICレコーダーなら語学番組ではなく音楽番組の録音が中心のユーザー向けに特化した製品などを望む。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)