エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【275】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【275】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2011年3月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

ソニーの「Reader」に、自炊した文庫本や青空文庫の電子書籍を転送して通勤電車で使っている。これが意外に「読書が進む」のだ。
本のページをめくるというのは、子どもの頃に本を読むようになって以来、まったく意識をせずにやっているぐらいあたり前の行為であり、何でもないことのようだが、実はこれをやらなくてもいいというのは、思ったよりも大きいことなのかもしれない。
満員電車で片手でつり革を握っているときはもちろん特に便利だが、座席でも、膝の上の仕事鞄にのせたリーダーを持つ手を置くポジションが定まれば、ずーっと手を動かす必要がない。
「Reader」は左下に「送り」「戻り」二つのページめくりボタンがあって、左手で「送り」ボタンに親指をかけて本体左下角を持てば、指の位置を動かさずに押すだけでページが切り替わる。これがいい。
ただ、逆に言えば、右下にも同様のページめくりボタンをつけてもらいたいというのが、改善点としての要望ということになる。
もう一つの改善点としては、タッチパネルのオンとオフが切り替えられるようにしてもらいたい。読書を中断して鞄から物を取り出したり、席に座ったり、乗り換えで立ったりするときにリーダーを持ち変える際、画面に指が触れるとページがめくれてしまうのだ。
さらにもう一つ改善点をあげると、もう少し軽くしてもらいたい。今も結構軽いし、躯体の強度を保つためには難しいかもしれないが、何とかならないか。
当初は、置く場所がなく未読のまま自炊した古い文庫本や、青空文庫(著作権の期限が切れた文学作品などのテキストデータを無料でダウンロードできる)を読むのに(青空文庫のためだけでも「Reader」を買う値打ちあり)使っていたのだが、そのうち、新刊で買ったばかりの文庫本も、内容によっては電子書籍リーダーで読むために自炊して読むようになった(電子書籍としても発売されていれば、こんなバカげたことをしなくてすむのに)。
その時の気分や状況によって保存された中から本を選んで読んだり、何冊かの本を並行して読んだり、満員の通勤電車での味気ない読書で使うには、電子書籍リーダーという味気ないツールもそれなりに便利なのかもしれない。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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