エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【260】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2009年12月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
書店で週刊誌を買った。家に帰って袋を開けると広告チラシが入っていた。「ダイエット」「メタボ」の文字が躍る。
これって、私が「太ったお客さん」という意味?
いや、まさか、客の姿を見て「太ったお客さん」にだけダイエット広告を入れているわけではなかろう……。
そうは考えたものの、ひと昔前ならいざしらず、近年は各企業とも広告媒体の選択は実にシビア。
読者層が比較的明確な雑誌ですら減少傾向にある。
広告はいま、対象をピンポイントで絞れるインターネットに流れつつあるのだ。
なぜなら、ネットは検索や通販の購入などの履歴から、その人に適した広告が自動的に配信できるから。
過去にダイエット法を紹介するサイトを検索した人や、ダイエット食品をネット通販で買った人が見るサイトの画面には、ダイエット食品の広告が表示されたりするようになっている。
そう考えると、書店の客全員にダイエット広告を配るのはあまりに非効率だ。
もしかしたら、例えば客を大きく四、五種類に分け、それぞれ用の広告がレジカウンターの下に横一列で並べられていると考えられなくもない。
頭髪が薄い男性にはカツラの広告、学生風には英会話教材の広告、若くてスリムな女性にはエステの広告……と(笑)。
かつて、書店が袋に入れる広告と言えば結婚相手の紹介業が定番のひとつだった。
年齢や指輪の有無で推測できても、確実ではないので、未婚者かどうかは原則的に外見で区別はつかない。
だから、広告はすべての客の袋に入れられていたと思われる。
でも、太っているかどうかは外見でわかることなので、ダイエット広告を入れられたことを不愉快に思う女性もいるのではないか。
以前、自動車税の滞納者宛の督促状の封筒に「中古車買取」業者の広告が印刷されていたことが問題になった。
「車を売れという意味か」と市民から抗議の声があがったのだ。
その自治体は、厳しい財政の足しに少しでも収入を得ようと、発送する各種郵便物に広告枠を設けたのだった。
とりあえず、広告の内容は気にしないとしても、不要なチラシ=ゴミを勝手に入れられ、持ち帰らされるのはどうかなあ。
割引してくれるなら別だけどね。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)