エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【255】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【255】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2009年9月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

鴨川べりを散歩していると、いわゆるホームレスの人たちの「ホーム」が目に入る。
象徴的にダンボールハウスあるいはブルーテントなどと呼ばれることが多いが、実はそれぞれにとても個性がある。
ネット書店アマゾンで調べると品切れになっているようだが、その名も『ダンボールハウス』(長嶋千聡、ポプラ社)というそのままのタイトルの本がある。
この本は、ホームレスの住居を建築物という視点から調査したレポート。

大学の建築学科の学生だった著者が卒論をきっかけに始めたという研究で、詳細なデータとディテール図、イラストに考現学的なおもしろさがあって、読み物として楽しめる。
生活実態、建築プロセス、ダンボールハウスと周辺環境が人に及ぼす影響などが主な調査目的としているが、その手順として、住人と軽い会釈、あいさつ、日常会話という具合に、段階を踏んでいくルールを著者は自らに科している。
二週間から一か月、定期的に顔を出してようやく協力を依頼。
聞き取り、写真撮影、スケッチ、採寸に進む。三十八の物件を掲載。
小屋型、テント型、小屋+テント型に分類し、その構造と工法をまとめている。
家とは何か、そこには人が暮らすことの根本が剥き出しで表われている。

他には、坂口恭平の『0円ハウス』(リトルモア)、『TOKYO0円ハウス0円生活』(大和書房)などがある。
前者は写真集で、後者はその読み物。
こちらの本の著者も大学の建築科出身で、出版社の著者紹介欄には「在学中から路上生活者の家に興味を持ち、『建築物』としての視点から調査・研究を始める」とある。

どちらの著者も、決して興味本位の覗き見趣味ではないという姿勢、ホームレスとの交流などを担保として活動し、公開しているようだが、調査や研究の対象として一方的にホームレスとその住まいを観察している(読者も含めて)ことに変わりはない。
見て見ぬふりより目を向けるほうがいい。
ただ、建築的な視点以外でも、もっと「ホームレス」に関心を持ち、その「調査と研究」の成果が、著者や読者だけでなく、まさにホームレスの人たちのためになるようフィードバックできればいいのだが。

 

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

 

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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