エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【178】|MK新聞連載記事

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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【178】|MK新聞連載記事

MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2006年6月16日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

GTDという略語が、ある種のブログなどで使われている。さて、何の略語かご存じだろうか。答えは、『Getting Things Done』という本の書名。どんな本かと言うと、いわゆる仕事術とか生活術と言われる類のもので、ストレスなく物事を処理、前進させたり、仕事の生産性を向上させたりする考え方、またその方法を説いたものだ。
略語があるということは、頻繁に使用される言葉であるからこそ、それが長ければ略して使われるのであり、少なくともその略語がよく知られたものであるということを示している。

チャットで使われる略語にBTW(by the way)、OMG(oh my god)などがあるが、書名までアルファベット三文字で表現してしまうところが英語はおもしろい。ちなみにオックスフォード英語大辞典(Oxford English Dictionary)がOEDと呼ばれているのはご存知の通り。

日本で書名が略された最近の例では「セカチュウ」(『世界の中心で、愛をさけぶ』)や「いまあい」(『いま、会いにゆきます』)があるが、映画化による一時的な流行語という使われ方だった。

ともかくGTDは、日本では2001年に出版された。邦訳を出したのが小さな出版社だったことと、書名が『仕事を成し遂げる技術』という堅くて平凡なものだったため、まったく話題にならなかった。原書が評判を獲得した経緯は知らないが、BBSやブログの普及が影響したとすれば、今のような盛り上がりはアメリカでも比較的近年のことなのかもしれない。それが日本でもこうして五年の時を経て、ついにたった三文字で通用するカリスマ本になったというわけだ。

ところで、邦訳書『できる人は5分間で仕事が終わる』の原題は『Get Everything Done』だが、これはGTDを意識してつけられた書名ではなかろうかと想像する。めでたく、GEDと呼ばれるようになったかどうかは知らないが。

 

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MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

 

本だけ眺めて暮らしたい バックナンバー

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