エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【173】|MK新聞連載記事
MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2006年4月1日号の掲載記事です。
本だけ眺めてくらしたい
インターネット書店Sから「緊急のご連絡」と題した、こんな通知が送られて来た。「ウエブサイトが不正に攻撃され、過去のアクセス・ログを徹底調査しましたところ、(略)一部の利用者の個人情報が流出した可能性のある痕跡を発見しました……」。
流出した可能性のあるデータは、会員ID、会員パスワード、氏名、住所、電話番号、電子メール・アドレス、生年月日、性別、配達先住所で、「カード情報等の流出はございませんでした」とのこと。なぜ都合よく、カード情報等だけが「流失はございませんでした」なのか、疑問の残る報告であった。
最近、ウイニーというファイル交換ソフトがインストールされたコンピューターがウイルスに感染して、個人情報をはじめとする内部データがネット上に流出したという事件が相次いでいる。その中には、一般ユーザーだけなく、大手企業や自衛隊の“不祥事”も少なからず含まれていた。
ある科学技術が「高い安全性を確保」していると言われようが、セキュリティー装置に「万全を期した」と言われようが、そういったことに意識の低い人や魔が差して悪事を働いてしまうような人が関係者の中にいたら、それまで。というより、そのような人がいない社会などありえないし、そんな社会が可能だとしたら逆に恐ろしい。
私たちは、人間とはそういうものだという前提で事故のないように運用システムを少しでも進歩させていくしかないのだろうし、利用者や消費者は、事業者がそういう努力をしているかどうかチェックして選ぶしかないのだろう。
ところで、以前から大型書店で気になっていることがある。レジ・カウンターが大きいのに、クレジットカードの読み取り機あるいはレジが一つしかなく、店員に渡したクレジットカードが一時的にせよ客から見えないところに持って行かれてしまうことがあるということだ。そういった、ちょっとした不安を客に与えないという配慮もこれからは大切ではないか。
また、コンビニでキャッシュ・ディスペンサーの隣が雑誌コーナーの店舗がある。現金を引き出す人のすぐ横に立ち読みする人がいる構図だ。この売り場を設計した人は危機管理意識が足りないのではないか。
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MK新聞への大西信夫さんの連載記事
1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。
1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)